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病院 一.

 関森家の三人が搬送された病院は、この街では数少ない救急病院として機能していた。引っ切りなしに救急車が到着し、急患を運んでくることも珍しくない。


 **神山明衣こうやま めい**は、病院の玄関前に突然現れた。誰も見てはいなかったが、もし見ていたとしたら、西日に照らされた玄関にキラキラと輝いて現れたその姿に、度肝を抜かれたことだろう。美しい容姿を持つ彼女は、まるで女神が降臨したかのようで、衝撃的な光景だったに違いない。


 明衣は、何食わぬ顔で病院の中に入っていく。案内係の職員に、関森家の三人について尋ねた。この病院は地方にあるにしては規模が大きく、診療科目が多岐にわたるため、初めて来た人には非常に分かりにくい。そのため、案内係が常駐しているのだ。


 関森家の三人はまだ救急処置を受けている最中だと知らされ、明衣は救急ナースステーションの場所を教えてもらった。


 救急ナースステーションは玄関からほど近く、既に二人の警察関係者がいることが、明衣には分かった。私服でさりげなさを装っているが、鋭く周囲を観察しているのが見て取れる。明衣にはテレパシーや遠感といった特殊能力はない。ただ、長年この仕事を続けてきたため、警察関係者かどうかは自然に分かるようになっていた。


 救急ナースステーションへ向かう間、明衣は青島孝と向き合った応接室でのことを思い出していた。  彼が他人の服を着ていることを奇異に思い、思わず透視した時に見た、左肩に食い込んだ弾丸。普通の人間なら、痛みに苦悶の表情を浮かべ、そう簡単には血が止まらないはずだ。それなのに彼は、まるで何事もなかったかのように、けろりとした顔をしていた。ただ者ではない。明衣はそう確信し、彼への興味がますます湧いていた。


 そんなことを考えているうちに、救急ナースステーションに着いた。


 そこには二人の看護師が、忙しそうに動き回っている。明衣は、三十代半ばと思われる年長の看護師に声をかけた。


「お忙しいところすみませんが、関森義行さんと清美さん、由紀さんがこちらにいらっしゃると聞いてきたのですが」


「ご家族の方ですか?」


「いいえ」

 明衣はそう答えて、身分証を取り出した。


「警察の方?」

 看護師は不審げに尋ねる。明衣がゆっくりとうなずくと、看護師は迷惑そうに言った。


「先ほども警察の方が来られたばかりです」

 いかにも忙しいのに邪魔だと言わんばかりだ。


 その時、急患到着の知らせが入った。

「急患が到着したので、私はいかないといけません。中に三人並んで横になっているのですぐに分かります。それと、麻酔が効きすぎて、臓器の機能が低下して危険な状態なので、様子を見るだけにしてください。先生が頻繁に処置を行っていますから、邪魔にならないように気をつけてください」

 看護師はそう言い終わらないうちに、慌ただしくその場を立ち去っていった。


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