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出発 一.

 第一部の続編です。

 大学を卒業して以来、自分の能力を活かして、難病や奇病に苦しむ人々を治療してきた。しかし、今は新たな使命を背負ったため、旅立たなければならない。気がかりなのは、治療途中の患者さんたちだ。突然いなくなってしまったら、見捨てられたと思うだろう。ビルのオーナーに休業の張り紙を頼んだのだが、きちんと対応してくれただろうか。家賃を滞納しているわけではないので、大丈夫だと信じるしかない。


 右隣をちらりと見ると、青島孝がいた。


 青島孝はレンタカーを借り、助手席に関森由紀、そして後部座席に関森康夫を乗せて運転していた。  青島孝の父親は、彼が母親と一緒に暮らしていけるなら、治療院の家賃くらいはずっと払って構わないと言ってくれた。「周りは誰も信用できない。疑心暗鬼の生活に疲れ果てた」と、父は本音を漏らした。


 関森康夫は、塚田俊也の自宅を訪ねるつもりでいたが、関森由紀と青島孝も、治療後の様子が気になったため、同行することにした。


 訪ねてみると、塚田俊也は行方不明になっていた。応対に出てきた母親の憔悴しきった面持ちが印象的だった。辞去した後、三人とも気が重くなった。


 その後、関森康夫が自宅へ帰るというので、空港まで送っていった。関森康夫は、由紀たちと一緒に行動したいと思っていたが、心臓が弱いことが負い目となり、足手まといになることを恐れて帰ることを決意したのだ。道中、終始無言が続いたが、空港に着いてやっと言葉が出た。


「時々、連絡をくれないか」

 別れ際、関森康夫が由紀に言った。


「わかったわ。伯父さん、心臓に負担をかけるようなことはしないでね」

 由紀は心配そうに言い、手を振って別れた。あっけないさよならだった。


 青島孝の運転するレンタカーを、三台の車が絶妙なチームワークで尾行していた。


 特殊な能力を持つ関森由紀だが、なぜかその尾行には気づかなかった。


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