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【2】始源編 終話 迷コンビ誕生。


ステータス表示変えました。


 あの後目を覚ました俺は…


(いや……そうだったな…)


 目覚めたんじゃない。


 生き返ったのだ…俺は。

 信じられない事だが。






 あとついでに言うと人間もやめていた。

 信じたくはないがそうなっていた。






 ついでに記憶もなくしていたという…

 …いやもう、こうなると笑えてくるぞ?







 更に言えば…







【マスター。あの鉱石…美味しそうです♪】


「ん?おお…アレか…じゃあ【吸収】しとくか?」


【はい♪欲しいです♪】



 このようにしてコブ付きにもなった。



【はあ?あのっ!コブ扱いはやめて下さいね?私はれっきとした『ダンジョン』なのですからっ!】



 えーと。ダンジョン憑き?になっていた。



【『憑き物』扱い?】


「はあ…〈溜息〉」




 これはどうやら、現実らしい。




 だって、実際に頭の中に直接声が響いてくるし…


 いや…俺は狂ったのだろうか?さっき殺されたのだってもしかしたら…狂った俺が見た夢…【いやいや…もしもーし、夢じゃないですよー?マスター?】…でもないらしいな。


 だって、先程発見した茶色に輝く鉱石。俺が何気なく『吸収したいな』とか思いながら見ていれば…ほら。


 ──サアァァ──


 ──てな。光の粒子に分解された…どうやらこれで【吸収】は完了した?らしい。


 つまり今のでさっきの鉱石は俺の中へと吸収されたんだそうだ。まあ全く実感はないのだが。


 いや『俺の中に』というのは正しいようで正しくはないな。厳密に言うと『俺と同化し、俺の内部に構築されたらしいダンジョン』に吸収された…いやダンジョンの糧となった…ってのが正しいのか。


( …うん。わけがわからん。)


 どうやら俺が死にかけたあの記憶は事実であって、実際に俺は死んでいて。


 それを蘇生するために、『何故か俺の中で発生する途中だったダンジョンくん』が奮闘してくれて。


 健気にも自らの命(ダンジョンコア?)を犠牲にして、俺に吸収させてまで俺を蘇生させてくれて。


 その結果『俺達』は同化してしまって…でもそのお陰で、俺は首の皮一枚…命をとりとめる事が出来て。


 だがその代償として俺は記憶を失う事になってしまったらしい。いや、知識は残っている。現代人としてのな。


 だが…俺を『俺』として証だてる記憶…どんな場所に、どんな親の元に生まれ、どんな土地に住んで、どんな風に育ち、どんな出会いがあって、どんな交流を育んで、どんな事に悩み、なんていう名前の学校に進学し、どんな恩師や級友に恵まれ、なんていう名前の企業に就職し、どんな同僚や後輩と力を合わせどんな上司を頼りとしたのか。


 ……そういった俺という『自己』を支えていたはずの…主に人に関する記憶のみ……すっぽり抜け落ちてしまっている。


 どうやらそれらの記憶は、俺と同化したこのダンジョンくんが俺と存在が混ざり合う際に、本人も意図せずダンジョンくんの『自我』形成に役立てられてしまった。


 ……のかもしれない……との事だった…いや、いやいやいやいやいや…もうな。

 怒っていいのやら恨んでいいのやら感謝すればいいのやら嘆いていいのやら喜んでいいのやら…


 つか、なんだこの状況!?

 ダンジョンって何?


 つかこの洞窟もダンジョンらしい…はあ?

 俺を殺したのは魔物…マジかっ!

 じゃああの冒険者っぽい男女もガチの……えええ!

 とにかく全て!『不明』だ!


 『不明』しかないっ!


 ……という訳で。


 俺が今、どこにいて、どんな状況に巻き込まれたのか、少しでもその不明なる部分を理解で埋めようとすべくだな…只今絶賛、


「洞窟内を探検中なのでありまーす」


 独り言ちてみました。

 まあ、そんな感じだ。

 いやどんな感じだワレナガラ。


「いや落ち着け俺よ!あー……とりあえず……気休めの『ステータスオープン』」


=====================


個体名 ナシ。

種族名 ダンジョン人間

迷宮銘 メイ

レベル  1

迷宮ランク ??/??


構造深度  88

《→規模  1階層》

 

魂魄濃度  ー

 体 力  100

《→生命力 100/100》


エネルギー ー

 気 力  20

《→迷宮力 20/20》


攻略深度 ー

 身体力  50

《→物理力 50/50》


支配領力  ー

 存在力  20

《→干渉力 20/20》 


迷宮対価

《→DP  150》


迷宮スキル


【吸収 Lv12】

  →『遠隔』『一斉』

【宝庫 Lv2】

 

【戦録 Lv1】

     

【維持 Lv5】

  →『修復』 

  

=======================


 うーん。なんだろこの感じ。

 なんか落ち着く。


「よしよし…『構造深度』がかなり上がったな」


 いや、つか。


 あの有名な『ステータス』が実在するとかな。


 以前の俺(記憶ないけど)なら網膜に映るこの画面を見て腰を抜かしていたことだろう。


(でも今の俺は違う。そもそも俺はもう人間じゃなくなっているからな…)


 そう、俺はもはや『ダンジョン人間』となってしまっているのだ。ほら、ステータスにもそう記載されているし。


 …だからだろうか?ダンジョン的な本能によるものなのか、それとも記憶を失くした事への穴埋めなのか、それとも人間だった頃無料携帯小説を読み漁っていたからなのか…それともその全部であるのか…俺はこのステータスというものになんだか妙な執着を覚えて…


(…うん。結構ハマっている。)


 ちなみに、今の所まだ、戦闘はしていない。ハッキリ言ってあの『殺される』という経験は、しっかりとした『トラウマ』として俺の魂に刻まれてしまった。


 だから見ての通りレベルアップもしていないし、ステータス項目だって『構造深度』以外は初期値のままだ。


 この『構造深度』だけは戦闘したりレベルアップしなくても【吸収】っていうスキルの行使だけで上げられたからな。この項目が何を表しているかと言えば…


(いやその前に……もう一度整理しとくか…)


 ──『ダンジョン』とは、言わば『空間生命体』とも言える存在…新たな種族である──


 …という風に、ダンジョン達は自らを分類しているらしい。


 彼ら命をもった空間は、己が内包する『世界』をさらに構築、拡張するため、他者を吸収し、養分とし、そして学習する…そんな物騒この上ない生き物なんだと生まれもっての自覚があるらしいのだ。

 では何故突然そんなトンデモ生命体が誕生したのか…それはダンジョンにも分かっていないそうなのだが…でもまあ、それは無理もない。人間だってそうだ。人類の起源が何であるのか、生まれてすぐに分かっている者などいない。


 以上の事を踏まえて説明するなら、この『構造深度』というのは俺の体内にある……というか『俺という存在とガッチリ繋がって同化してしまった何処かの世界』が、『どれだけ拡張されたか』を表しているらしい。あと他の項目については…謎だな。


 とにかくつまり、この頭の中で喋っているダンジョンくんは、『その世界の意識』…であるらしいのだ。ナンダそれ。

 しょうがないので俺は、この『内蔵ダンジョン』なる者に名を授ける事にした。



 その名も、『メイ』。



(『世界』を相手にコミュニケーションとか。…ダイナミック過ぎる。どう考えても無理あるだろ)


 だからな。無理矢理にでも親近感をもたせたかった。せめてものダンジョン由来という事で、『迷宮』のメイ、『Maze』のメイ、そして…まあ照れ臭いのだが、『盟友』の、『メイ』だ。『迷コンビ』のメイでもイケるかな…。


【マスター。その安直なネーミングセンスはどうかと思いますが。私は気に入ってますよ?この名前♪】


 おおそうかそうか。

 でもどうせ誉めるなら全力で誉めに来いな。


【あのー気に入ったついでに気になったのですが。】

「ん、なんだ?」

【マスターの名前です。】

「あー。」

【なんとされますか?私は今後も『マスター』と呼ぶでしょうから不便は有りませんが…それでもさすがに、マスターより先に名前を頂いてそのままというのは…恐縮です。】


 へー。殊勝なとこあるんだな。じゃあ…


「『ナナシ』ってのはどうだ?」


 良い感じの皮肉だろ?


【いやそれはどうかと思います】


 なんだ面倒臭いな…じゃぁえーっと…


「ジョン・ドゥってのは?」


 なんとなく響きがカッコいいよなコレ。


【いやそれもどうかと思います…というか絶対ダメでしょ。それって『男性の身元不明遺体』に使われる名前ですよね?】


 えええ。何で知ってんだそんなハリウッド知識。お前も見たのか『セ○ン』を?


【ええ見てますとも。ザッとしたイメージですけど。マスターの記憶に残ったものは全て共有しているのです。ちなみに思考も全部筒抜けです。】


 な、、にいいい?いちいち喋らなくていいのかそれは便利…じゃねーよ?じゃあアレか?……その……アレなのか?


【ああ…女性の裸とかですか?それを変わった性癖で─「ストーーーーーーップ!」─え、あ、すみません私、調子に乗りましたか?】


 乗った!乗ったよ?つか乗り過ぎだ乗りまくりだ!いやもういいわ!逆に慣れなきゃだもんな俺の方がっ!そうなんだろうっ!?くそうっ!……はあ……ツラいなこの仕様……こんなインパクトの後じゃ名前とか……なんかどうでも良くなってきた。


「という訳で『ゴン=ベイ』に決定」


 もうこれで押し切ろう。


【ゴンベエ?…いやそれも『名無しの権兵衛』由来ですよね?】


 いや甘いな。よく聞いとけよメイ。


「『ゴン=ベイ』だ。ゴンが名前で名字がベイ。」


 なんか外国の名前のようだ。どうだ、カッコ良いだろう?


【いや…え、えええ〜……、あのぉ…いやまあ、マスターがそれで良いって言うのなら…】


 だから誉める時は全力で─【いや誉めてませんから。】


  

  …ぐぅ、そ、そうか。


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