【2】始源編 第2話 始まりの痛み。
残酷な描写があります。ご注意下さいm(_ _)m
ぞぶふっ
「……?……あ…ああっ!か?…っガっ!」
ぞぶぶブブぷ…ゴリ…
「ゴこ…っ!ボほっ!!?」
ゾぶプ!ゴリュ、ぶふ…っ
「ギゃ…っおあ!…やっやめ…」
ぶジゅゥぅ…っ!
「ぎいぃ…っっっ!」
背中に熱。胸から痛み。生えてきたのは血濡れた鋼。ところどころ刃が欠けたこれは粗末な…剣?
(え これ…剣…か?実剣…つか、俺…貫かれてる…のか?胸を…背中から……?は…なんだそれ、なんだこれ、どんなストレス由来でこんな夢を見てんだ…俺…)
「はは…ごぷ…ボ…ゴボ…ゴほ…おぁ?…お、お、お?」いやアホか俺。
コレが。
こんなのが夢な訳、あるか。
こんな、熱さが。
こんな、痛みが。
「 あ、あ、あ、 」ああ、今度は…引き、抜かれていく。
冷たい、ギザギザとした鋼が。血濡れた切っ先が。(引き、抜か…れてくのも…、、、痛え…ぇ、ぇ)痛い…熱い…痛い…寒い…痛い… …そして哀しい。
何故だ。
何故、こんなにも粗末に扱われる?
これは…俺の命なのに…
(ああ…これ…ホン、とうに…地獄だ…)
後ろを向けば…もう一人いた。新たに現れたソイツは、真っ赤に染まった剣を握って……ニイとおぞましい笑いをその不釣り合いにデカイ口に釣り合ったデカイ顔面に這わせ…やはりそれらに不釣り合いな小さな身体を小躍りさせ…あ。
ガツ!
その憎らしい頭が『飛んだ』。
ゴロゴロ…地を転がり……止まった。
その顔は笑みを張り付かせたまま…
…今、俺を『殺した』コイツも…
…殺された?
「…遅かったか」
それをしたであろう人物を見上げれば…なんだろう…コレ…ラノベとかでよくある…冒険者? …の、ような出で立ち(コスプレ?)の白人男性…中年…俺より年上…40過ぎ…ぐらいか…。
ガツ…ビクンビクンッ…
今度は股下から。痙攣するような震えを感じた。感じるままに首の捻りを元に戻せば、あれほど俺を手こずらせたあの狂人も……死んでいた。眉間にナイフを生やして。俺はといえば訳もわからず呆然。そのままゆっくりと見上げる。
…至近距離に精悍な女性の顔。
…俺の顔をマジマジと覗き込んで
…彼女は言った。
「どうする?この人…多分『ウラシマ』だよね…」
どうするっ……て、助けて下さい。
このままじゃ…死にます。だから…
「どうしようも……ないだろう。」
え。あ……
「こんな深手を治す『ポーション』も『薬草』も『魔法』も、俺達は持ち合わせていない。そうだろう?」
白人男性からは、重い声…
…ああ…やっぱり…そうですか…
…っていやいやいや。
ポーション?薬草?魔法?
そのコスの元キャラ知らないけれども。
状況を考えてモノ言ってくれ…
……ませんか。あんた…どんだけ成り切っ…
いえ、いえいえ…すみません…
そこ…をなんとか助けて下さい…っ
…どうか…どうか…
「分かってるわよ…」
分かるなよっ
…いやごめんなさい分からないで
…ここは分からないで…
「…って、いや、そうじゃなくて、街に遺体を連れ帰ってあげるか…って、私はそれを聞いてんの。」
え…早速の死体認定?
…あー…。
「それはやめとけ。無理だ。」
白人男性からは……
…間髪入れずかよ…否定の声。
無理…?でも考え直して…
「見た所コイツは…ウラシマだ。」
いや…俺…ウラシマなんて名前じゃ…ないんですが。
「縁もゆかりもないあの街に連れ帰られてもありがた迷惑ってやつだろ。」
どの…街ですか?
あの…念の為…
……連れ帰って…くれませんか…ね。
「それにこの『死宮エリア』で死体担いで無事帰還出来るとでも?」
そんな……
ここって危険な所なの…?
お願いします…
…やっぱ…独りに…しない…で…
「もし連れ帰れたとしても家畜の餌にされるだけだ。」
いや何…その風習…
どこの秘境の部族…っ
「このまま放置…いや、まあ持ち物だけは漁っとけ。ウラシマなら何か文明的な役立ち品を持ってるだらうから。」
ええ、さすがに引く…
ひどくないか…?
放置の上…強奪とか…
「そうね……じゃあ……ごめんなさいね……っと」
ああ…抵抗も抗議も出来ないまま。
お互い…好意どころか面識もない。
そんな女性に…無遠慮に…雑に…身体中をまさぐられ…物色され…。それはなんとも言えない屈辱………だが、もはや不満もすくない。
こんなの……俺にだって、分かる。
このままもう…そうだ俺にはもう、
死ぬ以外の未来は…ない。
「いいの、あったか?」
「ボールペンとか、使いかけのメモ帳、あと財布…カバンも。」
「そうか…じゃあ、行くぞ」
「うん…」
ああ…
ちゃんと死ぬまで…
居て…くれないんですか…?
……ってのは、どうなんだろう…
…ワガママ…になるのかな…
「あの人も……こんな世界を知らないで死ねて幸せだったのかも。まあそもそもとして目覚めないのが良かったんだろうけどね…」
…?…
…どんな…世界?
……ここは…日本…そうだろ…?
「ああそうだな…埋葬してやれないのは心残りだが…ここで吸収される方がアイツのためだ。綺麗サッパリ吸収して終わりだからな。ここなら。…でもこの洞窟の外で吸収されたら…」
ここって洞窟だったのか…
いや…なんで俺は…そんな所に…
「そうね…何度も何度も殺さなきゃならなくなる」
…?…殺す…?……何度も?
なんて物騒な…
それは一体……どういう…
「…そういう事だ。」
いやだから…
…ど、ういう、事だ、よ、、、あ?
あ… 俺…
逝く…?
え…嫌だ…
行くな…
待ってくれ…
…待ってくださ…っ
……待っ……
「…『死体を綺麗さっぱり吸収してくれる』……そんなものがダンジョンの良いところに見えるんだから…この『エリア』は本当の……地獄だよ。」
ダン……ジョン…?
なんだ…ソレ…エリア…地獄……?
意味不明な言葉の数々……それを聞いたのはいいが、全く理解出来ないまま。
疑念に思いながら……そのまま俺は死んだ。
随分とエキセントリックな展開だったが、
落ち着いて考えればあれは…つまらない最期だったな。
それでも死とは現実。
覆す事もやり直す事も出来ない。
俺は、死んだ。
───そのはずだった。
《──生命活動が停止しました。『迷宮スキル』の一つ【維持】が強制的に覚醒──蘇生、試行します──》
──まただ。
臨終間際の幻聴?ってやつだろうか…。
また、何かが何かを言っている。
《──エラー。蘇生に失敗しました。再試行します──》
…いや成功するかよ、胸…貫かれてんだぞ…。
《──エラー。蘇生に失敗しました。再試行します…エラー…エラー…エラー…──》
ほら。
《──迷宮スキル【維持】のスキルレベルが2に上がりました────…が、エラー。…蘇生に失敗しました。再試行します──》
なんだ…あんた…随分と頑張ってくれるんだな。
《──…エラーエラー…エラー…エラー…エラー…エラー…──》
…やっぱ、大変なんだな…医療の現場って…
《──迷宮スキル【維持】のスキルレベルが5に上がりました。迷宮スキル【維持】に新たな顕能『修復』が開放されます──蘇生、再試行──》
《──……が、蘇生は失敗。『死』の『修復』は不可能と判明。イレギュラー的措置として迷宮スキル【吸収】を強制的に覚醒させます──────蘇生、再試行──》
何がなんだか…だな…よくわからないけど…
《──迷宮スキル【吸収】のスキルレベルが2に上がりました────…が、蘇生は失敗…。素材としてゴブリン2体では不足。さらなる緊急措置として眷属候補の魂を10体残し、あとの90体を吸収します──》
なん…え?…魂…って…
《──迷宮スキル【吸収】のスキルレベルが5に上がりました。迷宮スキル【吸収】に新たな顕能『遠隔』が実装されます────その影響を受け覚醒が進行。迷宮スキル【宝庫】が開放されました。……………が、蘇生には無縁。失敗。》
えー…。失敗したのかよ…どうすんだ…つかさっき魂?とか…え??
《──最終手段に着手します。──コアの吸収を試みます。これにより、生命体として根幹から再構成されます。どのような結果がもたらされるかは不明。ただし、これが失敗すれば活動停止は永遠のものとなります。……………………試行、しますか?──》
はあ…?それ、俺に聞くのか?
ああもう、さっきから…よくわからないけど…それ、俺が決めるのか……じゃぁ……いいよ、もう……なんでもいいから…やっ てくれ…も、う…どうでも…いい…
《──コアを吸収します──》
ビキ…
え…?
ビキッ「…っあ?」
ビキビキ「ぐあ…ぅっ」
ビキビ「あ!」キビキビ「あ!」キ…
ビキビキビ「ああ!ぐ!ああああああう!」キビキビキ!
【あ…呼…亞……阿……こ、ぁ、コア。の吸収……に、背、セ、せ、成功しました。迷宮スキル【吸収】のスキルれベるが12、に、阿賀り摩、した。迷──宮スキル【吸収】ぎ、新たな権能『一斉』が実、、ガ、、ガ、ジッ装されます。……そし…素子…粗…そし、て、亜、ア、あ、あなたは、初ノ、の、生命体、ダンジョン人間えと、へと、進化、いたシマした。】
ぐ…何……だったんだ今…の…。
胸貫かれたアレより痛かったぞ。
……つか、、声。
感じが…急に変わったな…。
【歯、ハ、は、初めマして…。マイ、マスター。】
え?……おお…はじめまして。
つか…もう眠くってさ…しょうがないんだが…
【はい…ゆっくりとはいかないでしょうが…今は休んで下さい。】
そうか……
じゃぁ俺…
もう、寝るから…
【 はい…マスター…おやすみなさい… 】
こうして俺は……『俺達』になった。
気にいってくれた方。
気になった方。
気に入らないという方も、(出来れば優しく具体的に)
感想お待ちしてます。(T_T)