森人 3
目の前の受付娘の暴挙に、思わず尻尾が出てしまった私です。
ムシャクシャしてやった。後悔はしていない!
だって、一回突き飛ばした受付君を起こしていたバトラーさんの横から、更にまた突き飛ばそうとしたんですよ?
迷惑もいいところですよね?こっちは早く冒険者の話や集会所の話を聞きたいと思ってるのに!
受付娘は、ワーキャー言ってますが、知りません。周りの人に慰めてもらってください。
あ、受付君。大丈夫でしたか?え?お礼なんて良いんですよ。
抱っこですか?仕方ないですね少しだけですよ?
≪ああ、そっと抱いてくださいね。≫
ああ、受付君はとっても丁寧で行儀がいいですね。癒されましたか?そうですか、よかったです。ではバトラーさんのところに戻りますかね。
「ちょっと!その従魔かしなさいよ!人に危害加えたんだから、マスターに言って処分してもらうんだから!」
って思ってたら突っかかってきましたよ。面倒な…
「人に危害を加えたのはリーリーが先だろう?人のこと吹っ飛ばしておいてそういうことよく言えるね。」
「は?何かばってもらってるからっていい気になってるの?」
「かばってもらったんじゃないくて、助けてもらったんだよ。受付業務の妨げからね。」
‥‥う~ん。受付君もなかなか負けてませんが、このままだとらちがあきませんね。
しかもまわりの様子にきづいていないようですしねえ…。あ、なんか偉そうなおじさんが出てきましたよ。
「業務中に何をしておる!二人とも仕事をしないのならば下がれ!」
ピシャーン!!
っと効果音が付きそうな怒声が響いたのはそのときでした。
思わずバトラーさんの腕の中で丸くなったのですが
「マスター!あの従魔が私の手に危害を加えたんです!!」
「すみませんマスター。違うんです!リーリーが私に危害を加えて業務を妨害してきたんです!!」
あいかわらずヒートアップ中の二人に、マスターと呼ばれた偉そうな人はいらだったように眉間にしわを寄せていました。そして、何やら背後に指示を出してからバトラーさんと私を含めで別室に連れていかれることに…。
「それで?受付業務を放棄してお前たちは何を騒いでいた?」
応接室のようなところに連れてこられて、受付の二人は立ったまま。バトラーさんはソファへと座り
向かいのソファには偉そうなおじさんが座りました。
そして、低い声でそうきいてきたのですが、受付娘はさっきと同じ様子で私へと指を向けながら主張していました。
「それはもう聞いたが、スレイを突き飛ばしたというのはどういうことだ?」
「そ…それは‥‥」
「そこにきてもらっている森人が集会所に来た時からずっと見つめていたそうだな?そして、別の受付にいったところでそこにいたスレイを突き飛ばして、図太くも自分が対応しようとしていたとか?」
どうやら大体の状況はもうすでにつかんでいるようですね。さんざん喚いていた受付娘がおどおどしてます。受付君は完全にその通りですとうなずいてますし。
「リーリー、お前はさんざん言われている業務について何も学んでいなかったのか?ここは男をあさる場所ではないと何度言ったらわかるんだ?」
「そんなことしてません!ただ、その・・・その人が美形だから話をしたくて見つめてたのに、避けられたから・・・」
常習犯の受付娘でしたか。
しかもまだ言い訳してます。ついでに言えば、バトラーさんのせいにしてますし。不愉快!
私は不愉快です!!
≪失礼。これ以上この空間に居たくはありませんので、退室させていただいても?≫
さすが、バトラーさん。以心伝心ですね。
バトラーさんの言葉に真っ先に反応したのは、あの受付娘。まだ何か言いたいようですが、無視です!無視!!そしてそんな受付娘のうしろからこちらを警戒するように見てくるのがあのマスターというおじさん。
警戒されてもこっちはかかわる気がありませんよ。無駄な労力です。
「あの!!お名前教えていただけませんか?ここで登録されるんですよね?私、この集落のこととかご案内できます!」
って、まだあきらめてないんですか。周りの空気とか視線とかわからない人なんですね‥‥。
マスターっていう人とんでもなく冷たい視線を向けてますが。
「少し待っていただけないか? こちらのリーリーがとても迷惑をかけてしまったしな。冒険者に登録されるのであればここでできるようにとり図るがいかがか?」
受付娘は勘違いして自分が担当できるみたいに喜んでいますが…あ…、別の受付嬢に退場させられましたね。それにしても、マスターというおじさん全く表情をうごかさずに言うのはさすがというところなんでしょうか?
そもそも冒険者に登録するなんてことは、今回考えていなかったのでどうでもいいんですよねえ。どうしても接触しておきたいみたいですが。どういう思惑か…。
≪ご遠慮いたします。そもそもこちらに来たのは、冒険者について知りたいとおっしゃったわが主のためです。これ以上の面倒はお断りします≫
「は・・・・・?どういうことだ?では、初めから登録するつもりはなかったということか?」
≪だから、そういっているではないですか。ですので、これ以上こちらにいる理由はありません。我が主もお待たせしておりますのでこれで失礼させていただきます≫
マスターのおじさんが少し唖然としている間にバトラーさんは私を抱えて退室。
退出した瞬間に視線は来ましたが、そのまま集会所の外へと出ました。
ん~…まだ視線はありますが、さっきよりも同情的ですね。それにしてもやっぱり人のいるところは面倒があります…。せっかくのお出かけだったのに目的の一つだけですでに疲れました…。
≪姫様、今回はもうお戻りになりませんか?影も数名放っております。冒険者の話というのもその者たちから聞くこともできますし≫
今回はそうしましょうかね…。次に行くときにはあんな勘違いな娘がいないことを祈りますが…どこにでも生息してますよね~ああいうの。は~…、なんだか疲れました。
そういえば今日はまだお昼寝してません…。
≪今日はお疲れ様でございました。ゆっくりとお休みください、姫様≫
あい…おやすみなさい。