獣人 6
目が覚めたら‥‥いつものお家の天井が見えました。
≪姫様、起きられましたか≫
「ん。おうちついたの‥‥」
≪ええ。お昼寝が割と長くなりそうだったので、ジオウがこちらに戻ることにしたそうです。ちょうどこちらも落ち着いたところだったので良かったです≫
バトラーさんの声にようやく頭がはっきりしてきました。
寝てる間にすべてが終わっていましたよ…さすが小人さんたち‥‥。
これでいいのか、私…。
っとちょっと呆然としてしまいましたが、済んだことは仕方がありません。
事の顛末を確認するほうが先ですね。
場合によっては、お引っ越しも視野に入れないといけませんからね。
≪では、みなもそろっていますので、大広間で今回の顛末を報告いたしますね≫
さらっと抱き上げるところはさすがですね、バトラーさん。
ブレませんね。
≪姫様への愛はだれにも負けませんよ?≫
わ~…私、あいされてるう‥‥
なんてじゃれ合っている間に大広間ですよ。
そこにはもう小人さんたち勢ぞろいという様子でした。
あと、お家の外に誰かいます?気配があります。
って、外に気を取られている間に私用のクッションに卸されました。
バトラーさんは立ったままですが、他の小人さんたちは座っていますね。
≪では、姫様もお目覚めになりましたので、今回の件の報告をしていきましょうか≫
進行はローランさんなんですね。バトラーさんは総括のようなかんじですか。
≪はい。では、まず事の始まりからですね≫
≪まず、俺が影からの報告で森人の集落で、キツネが怪しい動きをしているということを聞いた。そこからさらに詳しく調べさせると、あのキツネ、記憶の書き換えが中途半端だったらしく、世界樹の実と新種の魔物というところは記憶に残っていたらしい≫
≪そこから、バトラーさんが深部のメイズ化にするということになるわけですが、何度も転移されたというのにあのキツネ、全く懲りなかったようです。以前姫様に会ったあの森人の高位冒険者に止めらるのも聞かずに、若くて割と高位ランクの冒険者でパーティ作ったのです。そこからは無謀な深部への探索や狩りに出るようになりました≫
≪とはいえ、深部にいる魔物たちもたびたびやってくる餌にざわつき、今までおとなしくしていた魔物たちまでもが表に出るようになっていました。こうなると、それまで以上に深部への進行が困難になっていたのですが、欲に目がくらんでいたキツネは、けがをしてパーティを外れていくメンバーたちを追うこともなく、ついには真人の集会所でパーティを募るようになりました≫
≪ま、あんまりな募集内容に、馬鹿な輩しか集まらなかったんだがな。世界樹の実という宝に目がくらみすぎた。だが、運がいいのか悪いのか、たまたまそこに高ランクの冒険者パーティが居た≫
≪そこからが迷惑な話で、魔法の技能も割とあったそいつらのパーティはキツネの話に乗った。そして、深淵の森に入ってきた。魔力が感知できる魔物は面倒な相手に姿をかくすし、ほとんどの森人たちはすでにキツネがなにをしても傍観する形になっていた≫
≪だからこそ、キツネはここに行けると思ってしまったのでしょうね。世界樹へと進んで行きました≫
≪だが、そこであの森人の高位冒険者とその仲間に邪魔されることになった。まあ、集落ごとで考えもちがったようだからな。姫さんが会ったっていう森人は傍観はする気はなかったようだ。ローランには以前も会っていたからかすぐにキツネたちを退かせるように動き始めた≫
≪世界樹に対して害をなすのは許さないという理由でな≫
小人さんたちの報告を聞いていましたが、あのキツネさん。本当に強欲だったんですね。
世界樹の実に目がくらみすぎです。
しかも新種の魔物というところで私のことも覚えているのは、厄介ですね。
真人ととの混合パーティを作ってまでというところに執念を感じますが‥‥
あの筋骨さんが出てきたところで、結果が見えました。
いえ、小人さんたちが待ち構えているところですでに詰んでたんですが、残念です。
≪真人たちのパーティが高ランクといえども、森人の高位パーティとはレベルが違いました。なんといってもステージが森の中ですからね。彼らの庭とでもいうような立地にやってくるんです。結果は初めから見えていたものなんですが…≫
≪まあ、結果は違わず馬鹿な冒険者たちはあっさり無力化されてたな。そのまま外界へと強制送還。そしてキツネは、集会所の冒険者登録を抹消された≫
ああ、やはりそういう感じになりますよね。死人が出なかっただけでも感謝するべきでしょうね、その人たちは
≪が、話はそこで終わらなかった。キツネが森人や真人の冒険者に声をかけていたのは何故かわかるか?姫さん≫
…あ~…話が見えてきましたが言いましょう。
獣人は物理的強者が優遇される人族です。そう、簡単に言えば脳筋の集まりです!もちろんそれだけじゃない獣人もいますが、大型の獣人は完全に脳筋です!
≪ああ。だからこそ、声をかけなかったんだろうよ。あいつらは戦いさえできれば良いからな。採取ができるような繊細さを持った奴はほとんどいない。今回の目的は世界樹の実だからな。絶対に手に入らないと思ったんだろうよ≫
まあ、そうでしょうね。討伐目的ならいざ知らず、採取が目的だったら、まずパーティには入れないですよね。
≪もう、なりふり構ってる状況じゃなくなったんだな。高位の魔物を餌にして獣人の冒険者に声をかけた。本当ならば、集会所登録も抹消されているからな、同行するのは問題なんだが、護衛という形で依頼を集会所に通さず直接冒険者にしやがった。集会所とすれば、完全にアウトなことだがな≫
なんというか…キツネさんってアグレッシブに悪いほうへと突き進んでますね。
行先は見えてるでしょうに。
≪で、そういうのに乗るのが獣人の力馬鹿たちだな。大型獣人がまとめてその話に乗った。で、あとは森にいる魔物に遭遇する傍から手を出そうとし始めた。これにはさすがに我等も迷惑でな。素材が少なくなるし、木は傷むしと迷惑極まりなくてなあ≫
≪それまでは人族もいるので積極的に出るのは控えていたんですが、大型獣人も混ざったということ我等も排除する方向に決めました≫
≪そのままいくと、姫様のお散歩コースの景観破壊もいいところでしたからね≫
なんですと!あのきれいな景観が破壊され‥‥?
≪ご安心ください。その前に丸裸にして集会所の前に転がしておきました。ついでにあのキツネはあの森人のいる集落に転がしました≫
小人さん無双があったんですね。戦闘シーンがどうしても獣人さんたちがもてあそばれた姿しか浮かばないのは仕方がないんでしょうね。
獣人さんたち…どんまいです。
相手が悪かったと諦めて…‥
諦めてくださいね?