獣人
朝いつものように起きたら、バトラーさんが不埒モノを捕らえましたと教えてくれました。
で、お家の外にある畑の近くに、ミノムシのような動きをしいる人型が見えます。
小人さんたちが囲っているのでガ〇バーとか思い出しますが、そっと近づいてみましょうか。
≪神域で盗みとは、恥知らずもいいところじゃねえか≫
≪全く、人族というのはこんなのばっかりかい≫
おっと…鍛冶職人小人のジオウさんとジエンさんが、お怒り中ですよ。お二人は普段畑仕事も兼任してくださってるので余程業腹だったんですね。
≪おっと、姫さんも来ちまったのか。おい、バトラー。こんなのを姫さんに見せるたあ、どういうことだ?≫
≪今後注意していただくためにも、森人以外の人族も見ていただく機会にいいと思いましてね≫
保護者の会話ですが…いつもご心配おかけします。
・‥‥ん?今…ほかの人族とかいいました?
≪姫様、今朝がた我等の果樹畑から果物を盗もうとした、キツネの獣人です。一人でしたが、もしかしたらほかにもいるかもしれませんので、ローランたちに見回りを頼んでいます≫
こんなところに盗みに来るとか、すごい思い切りましたね。
キツネの獣人…完全にミノムシになっててさっぱり全容がわかりませんが。耳がこっちに向いてるので会話を聞いてるんでしょうかね。
それにしても…お家からでなくても、森人以外に出会うとは思ってもみませんでしたよ…。
≪姫様、キツネの獣人は大体家族単位か、単独で行動するのですが、割と警戒心が強いといわれています。獣人の中では魔力が多いとされていますが、我々の1/3に匹敵することはありません。それから、このように小賢しい真似をする個体が多いです≫
バトラーさんのお話を聞いてる間にミノムシ状態のキツネさんは、なんとかこちらに顔を向けることに成功したようです。まあ、バトラーさんの足に完全に抑えられているんですけどね。
「な!新種の魔物やと!?」
≪とりあえず、その不埒モノはしばらくつるしておくぞ≫
何か声が聞こえましたが、あっという間にジオウさんに引きずられていきました。
「あちちちち、摩擦してるてええええ」
にぎやかな人ですね。一回口開くと吹っ切れたんでしょうか?
≪ああいう様子ですが、逃げるすきをじっと探っていますし、姫様のことを見て一瞬目が光りましたからね。碌なことを考えてはいないでしょう≫
なるほど、計算高いかんじなんですね。でも、ジオウさんの畑に盗みなんてなんというか運の悪い…。
ジオウさんの向かった先にあるのは立派な古木。樹齢100年以上はありそうな立派な木です。
あの木は最近、大型タイガー種の爪とぎとなってるやつですね。なるほど、猫用のネズミのようにあのキツネさんを吊るすんですね。
「あかんってこれ!頭に血がああああ」
あっという間に高いところまで上がっていきました。あの絶妙な縄の長さがさすがですね。ジオウさん。
「きつねしゃん、じゃんねんです」
≪ええ。残念です≫
思わずバトラーさんとともに手を合わせてみたのですが、声が聞こえたのでしょう
「残念ってなんやねえええええええええええん」
元気がいいですねえ。
あのキツネさん、あのタイガーに遊ばれると思いますが、死なないところで森人の集落に落としてもらうように影さんたちにお願いしておきましょうね。
あのキツネさん、思ってた通りにタイガー種におもちゃにされてました。
何とかよけようとミノムシ状態で体動かしているところを見ると、かなり体の動きはよかったです。ジオウさん曰く、あれも冒険者だったということです。
珍しい果物をみつけたから、集落で売ろうとしていたようです。がめついですね。
そして、一通りタイガー種におもちゃにされてボロボロになったところで、意識を落とされ影さんが流れるように集落のほうへと運んで行っていました。うん、プロですね。
それにしても、獣人がここまで来るなんて初めてのことじゃないですかね?
グウェインさんが最深部のことを話したということでもないようですし、まさかおいしそうな匂いにつられてってことでもないと思うんですが…
≪いえ、本当に匂いにつられたようですよ。ジオウが言っていました。ここらじゃ手に入らない果樹がちょうど熟れていたようで、その匂いがもれていたと。今までは、結界などは神域のこともあって張っていませんでしたが、これからは張っていかないといけませんね≫
なんて食い意地のはったキツネ‥‥。いや、がめついキツネというべきでしょうか?
今回みたいなこともうないと良いんですけど…