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スキルユーザーは優しい夢を見る  作者: 熊出
スキルユーザーは優しい夢を見る

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99/99

スキルユーザーは優しい夢を見る(完)

 家の屋上から、男は町を見下ろしていた。


「今日も平和だ」


 思わず呟いて、鼻歌を奏で始める。

 曲目は、中島みゆきの時代。

 旧友が好きだった曲だ。

 尤も、彼女を友人だと認めたのは、彼女が死んでからだったが。


「一人で、なにをやってるんで? 当主殿」


 振り返ると、明日香がいた。

 男、優助は肩を竦める。


「いやな。後進が育ち、会社は彗に任せ、いよいよ俺はすることがない。平和ってことだな」


「そうさねえ。天道衆の後継集団もこの十年で大概に倒したし。向こう十年は平和なんじゃないかねえ」


「十年ぽっちか」


「不服かい?」


「不服だね」


 時代をうろ覚えで歌い始める。

 そのうち、ある一節で黙り込んだ。


「生まれ変わると思うかい?」


「そんなのファンタジーだよ」


「そうか。けどね、俺は今も夢を見るんだ。故郷に帰って、平和に暮らす彼女の姿を……」


「会いに来てくれるかな」


「来てくれるんじゃないかなあ。あの時から十年だから、十歳か。まだ難しいな」


「前世の記憶なんて残るものかね」


「けど、俺は信じてるんだ」


「そっか」


 明日香は、手すりを掴んでしゃがみ込む。


「夢見る分には自由じゃない? 好きだよ、そういうの、優しくて」


「ああ、そうだな。夢見る分には自由だ」


 再び、優助は時代をうろ覚えで歌い始める。

 明日香は苦笑して、一緒に歌い始める。

 二人の歌が、夜の空に溶けて消えていった。


 スキルユーザーは、優しい夢の中にあった。

これにて完結です。読んでくださった方、ありがとうございました。

おかげさまで二回ジャンル別ランキングに乗りました。感謝の一言です。

後々、活動報告のほうで後書きを書こうと思います。

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