スキルユーザーは優しい夢を見る(完)
家の屋上から、男は町を見下ろしていた。
「今日も平和だ」
思わず呟いて、鼻歌を奏で始める。
曲目は、中島みゆきの時代。
旧友が好きだった曲だ。
尤も、彼女を友人だと認めたのは、彼女が死んでからだったが。
「一人で、なにをやってるんで? 当主殿」
振り返ると、明日香がいた。
男、優助は肩を竦める。
「いやな。後進が育ち、会社は彗に任せ、いよいよ俺はすることがない。平和ってことだな」
「そうさねえ。天道衆の後継集団もこの十年で大概に倒したし。向こう十年は平和なんじゃないかねえ」
「十年ぽっちか」
「不服かい?」
「不服だね」
時代をうろ覚えで歌い始める。
そのうち、ある一節で黙り込んだ。
「生まれ変わると思うかい?」
「そんなのファンタジーだよ」
「そうか。けどね、俺は今も夢を見るんだ。故郷に帰って、平和に暮らす彼女の姿を……」
「会いに来てくれるかな」
「来てくれるんじゃないかなあ。あの時から十年だから、十歳か。まだ難しいな」
「前世の記憶なんて残るものかね」
「けど、俺は信じてるんだ」
「そっか」
明日香は、手すりを掴んでしゃがみ込む。
「夢見る分には自由じゃない? 好きだよ、そういうの、優しくて」
「ああ、そうだな。夢見る分には自由だ」
再び、優助は時代をうろ覚えで歌い始める。
明日香は苦笑して、一緒に歌い始める。
二人の歌が、夜の空に溶けて消えていった。
スキルユーザーは、優しい夢の中にあった。
これにて完結です。読んでくださった方、ありがとうございました。
おかげさまで二回ジャンル別ランキングに乗りました。感謝の一言です。
後々、活動報告のほうで後書きを書こうと思います。




