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スキルユーザーは優しい夢を見る  作者: 熊出
スキルユーザーは優しい夢を見る

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98/99

宴会に始まり宴会に終わる

「恥ずかしながら生きてました……」


 宴会の場で、照れ臭げに姿を現した小豆に、燕と君枝以外の面々が目を丸くする。


「それじゃあ死んだのは、セレナだけなのね」


 スカーレットが、呟くように言う。

 沈黙が漂った。


「いいのよ、あいつは。嫌というほど長生きしたんだし。私達は最後を求めていたわ」


 そう言って、スカーレットは微笑む。


「セレナ嬢に黙祷を」


 零が淡々とした口調で言う。

 優助も、皆と共に、目を閉じて黙祷した。


「じゃ、辛気臭いのは終わりで、いっちょ飲みましょうか」


 そう言って、燕は皮肉っぽく微笑んだ。


「今回は一同お疲れ様。罪があった人間も封印されていた人間も恩赦が出ました。社会復帰も手厚くサポートします。詠月はホワイト結社なんでそこらよろしくね。かんぱーい!」


「乾杯!」


 大合唱が起こった。


「皆これからどうするの?」


 スカーレットが問う。


「俺は東京に良い人がいるのでな」


 藤五郎が言う。


「片思いでしょー、勝手なこと言わない」


 小豆が呆れたように指摘する。


「まあ、そうさな」


 藤五郎は苦笑する。


「俺は医者に戻るよ。燕さんの駒になるのは程々にしておけと知人から言われてな」


 とは零。


「いーえ、あんたは一生私の駒です」


「娘もいるんですよ?」


「けどあんた、世界の危機になったら篭ってられる性分じゃないでしょ」


「そうですけどね……」


 零は苦い顔になる。

 笑い声が上がった。


「僕は実家を継ぐことになると思います。祖父ちゃんが老け込んじゃって……」


 とは、優助。


「そこで、提案なんだが、彗。経営を学んで俺の仕事をサポートしてもらえないだろうか」


 小豆の隣でかしこまっていた彗が、目を輝かせる。


「する! 優助の手伝い、する!」


 優助は微笑む。


「よし、じゃあこれからお前は俺の仕事上の相棒だ」


「じゃあ私は?」


 とは明日香。冷笑が顔には浮かんでいる。

 優助は背筋が寒くなった。


「詠月の仕事での相棒……」


「私は?」


 月夜が言う。


「月夜さんは関係ないでしょ! どさくさに紛れて入ってこないで! ただでさえややこしいの!」


「私は?」


 後ろに秋悟を抱いた冬音がいたので、優助は倒れそうになった。


「貴方には随分相棒が多いのね。羨ましい限りだわ」


「……帰ってたの?」


「燕さんに面白いから来いって言われて」


 そう言って、冬音は空いていた優助の隣の席に座った。


「私が私生活の相棒です。他の皆は仕事上の付き合い。異論はございませんね」


 冬音が微笑んでそう言ったので、かしましい女子達も黙った。


「貫禄がついてやり辛いったら……」


 明日香がぼやく。


「私は断然世界一周!」


 月夜が叫ぶように言う。


「エアーズロックでセカチューごっこしてきてくれな。涙を浮かべて塩を巻くんだよ。きっと意味深に見えるぞ」


 真昼がからかうような口調で言う。


「あんたはどーすんの?」


「俺は寮長。あこで生徒を見送ってくのも悪くないかなって」


「へー。案外つまんないわね、あんたの人生」


「俺はお前と違って意外と堅実なんだよ。けど、帰ってくるんだろ?」


「そうね。他にやりたいこともないから」


「そうはいかないわよ」


 燕が皮肉っぽく微笑んで言う。


「今回の件で第四形態であることが露見した貴方達は八神家の跡継ぎ候補に躍り出ました。近々八神本家の人間と縁組されるんじゃないかしら」


「マジすかー」


「マジかぁ……」


「強い力を持った人間に自由はないのよ」


「真昼。お前犠牲になれ。スケープゴートだ!」


「やだよ。お前姉なんだろ、姉が犠牲になれ!」


 醜い争いが始まる。


「君枝さんは社会復帰しようと思ってます」


「スキルユーザー対策室もなくなっちゃうしなあ」


「君枝さん可愛い恋人がいるんですよ。羨ましいですよね」


「言うなよ」


 君枝は照れ臭げに言う。


「小豆は、召喚術師だっけ」


「ええ。これからの日常の中で、償いの道を探していこうと思います」


「恋人がいないのは優助ガールズと私だけか」


 楓が嘆くように言う。


「俺も嫁に死なれてるがな」


 零が淡々とした口調で言う。


「零さんって何歳でしたっけ」


 楓が面白がるように言う。


「三十六」


「へー、ほー、医者かあ」


「俺は煙草吸う女は嫌だよ」


「やめますよ?」


「本気か?」


「一緒に禁煙しましょーや」


「ほー」


 変なところで話がまとまりそうだった。


「有栖はどーすんの?」


 燕が、話を振った。


「どうしましょうかね。詠月の封印からも逃れられたことだし、兄の残留思念も優助君に消してもらったことだし。詠月に所属するのも悪くないのかなあ」


「俺は詠月に恨みがあるから復帰しないがな」


 とは岳斗。


「私だってあんたに恨みがあるさ」


 燕は肩を竦める。


「まあ、恩もあるがね。妹と、もう一度話せた」


 一同、それぞれ考えがあるようだった。

 その後、燕と楓と零と藤五郎による一気飲み勝負が始まって、場は混乱に混乱を重ねた。秋悟が泣き出して優助は冬音と一緒に帰ったので最後までは付き合えなかったが、明日香に伝え聞いたところによると吐いたり失神したりの非情に混沌とした会になったということだった。

 帰って良かったと思った優助だった。


 そして、優助の戦いは一幕を閉じた。

 しかし、また幕は開くのだろう。

 天道衆の残党。不穏分子。世界には詠月を敵視する組織がいくつも存在する。

 だから、優助の戦いは続いていく。

 今回は、たまたまその中でもとびきりにハードで幕を下ろすのに苦労する一件だけだった話だ。

 日常は、続く。

 優助達は、生きていく。

 自分は立派な当主になれるだろうか。それを思うと、目眩がする。

 しかし、世代交代を前にして、秋奈は胸を張って請け負った。


「私が貴方を一人前の当主にしてあげる」


 ハードな日常が始まりそうだった。

次回、大団円『スキルユーザーは優しい夢を見る(完)』

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