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スキルユーザーは優しい夢を見る  作者: 熊出
スキルユーザーは優しい夢を見る

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窮地、そして炎帝の覚醒

 草薙小豆は焦っていた。主の数が多すぎる。

 次から次へと森の影から零達を襲おうと這い出てくる。

 いや、巨大主を救おうと、だろうか?


 炎は絶えることはない。

 小豆とスカーレットの炎は、絶え間なく主を燃やしている。

 明日香も、炎での迎撃に参加してくれているようだ。


「きっついわねえ、小豆!」


 スカーレットが、ぼやくように言う。


「そうですね、スカーレットさん!」


 小豆も、疲れの滲む口調で返す。

 その時、地上部隊に動きがあった。

 色とりどりの光が、大剣に吸収されていく。


「花びらよ、集結せよ! 全てを斬り裂き咲き誇れ!」


 横薙ぎの光が、一直線に放たれた。


「覇、桜華斬!」


 もはや木々はない道を、光の刃が通過していった。


「桜華斬は控えて!」


 トランシーバーを持って、燕は言う。


「私達の切り札よ。いざという時に打てないと困る!」


「……だそうですよ」


 小豆は苦笑して炎を繰り出す。


「しゃーないねえ!」


 スカーレットも、返す。

 撃った後の炎は、彗が紐で操って再利用している。

 その顔にも、やはり疲労の色が滲んでいる。


(君枝さん、私は、償えたのでしょうか……?)


 小豆は、心の中で問う。

 父を、燃やした。罪のない人を、燃やした。その罪は、今回の件でチャラになるだろうか。

 きっと、ならないだろう。

 一生、小豆は償っていかなければならない。


 今やっていることが、小豆の償いだ。

 けれども、スキルが奪われると言うなら、小豆はどうやって償えばいいのだろう。

 迷っていても仕方がない。今は、目の前のことに集中だ。


 その時だった。

 黒い刃が、一瞬で巨龍を真っ二つに断った。

 スカーレットも、セレナも、彗も、岳斗も、唖然とした表情で落下していく。

 岳斗の"キー"である指輪が、真っ二つに割れた。


 落下していく。

 近くを落下する彗を抱きとめる。

 せめて、まだ若いこの子は守れるようにと。


「彗ちゃん」


 小豆は、呟く。


「貴女の初々しいところ、昔の私に良く似てた」


 衝撃とともに、鈍い音がする。小豆の意識は、闇に落ちていった。


(もっと……話しておけば良かったな……未来の炎帝……候補……)



+++



 彗は、自分は死ぬのだと思った。

 しかし、落下しても死ななかった。

 なにか柔らかいものが、彗のクッションになってくれた。

 下を見ると、頭から血を流しているぐったりした小豆がいた。


「小豆さん!」


 彗の、悲鳴のような声が響き渡る。


「近接部隊! 状況を説明して!」


 小豆の持っているトランシーバーと上空から、燕の声が二重にする。


「驚いた……連中、こっちのメンバーのコピー体を作りやがった! 今のは覇・桜華斬だ!」


「急いで仕留めて!」


「真っ先に仕留めた! しかし、見ての通り次が出てきやがる!」


「術師部隊! 生き残りはいるか?」


 彗は、慌ててトランシーバーに手を伸ばした。

 しかしそれは、横から伸びてきた手に引ったくられた。


「こちらスカーレット。生憎不死の体でね。生きてるよ。彗もセレナも生きてる。小豆は駄目だ」


「そう……足止めは能う?」


「任せてー。余裕のよっちゃんよ」


 そう言って、スカーレットは炎を操る。

 なにが炎帝候補だろう。

 操れる炎が存在しなければ糸や縄のような脆弱なスキルしか使えない。


 その時、小豆の右手が自分の右手を握っていることに彗は気がついた。

 スキルユーザーは、スキルユーザーのスキルを吸収できる。

 息を呑んだ。


 小豆は、こうしている間にも死に近づいていく。


「小豆さん、貰います。世界を書き換える力……」


 小豆の右手から、暖かい光が彗の右手に吸い込まれていく。

 そして、彗は小豆の手を放した。


 炎を放つ。

 幾重にも伸びた紐状の炎が味方を器用に避けて広範囲の敵を粉々に斬り裂いていった。

 もう、候補ではない。誰もが認めるだろう。彼女が、炎帝だと。


次回『そしてまた一人』

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