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スキルユーザーは優しい夢を見る  作者: 熊出
スキルユーザーは優しい夢を見る

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93/99

巨大主、荒ぶる

 炎が主達を焼き払っていく。

 尋常な数ではない。

 確かに、一匹でも逃したら後ろから覆いかぶさられる。

 月夜は、現状にぞっとしていた。

 術師部隊が壊滅したらどうなるか。そんなこと、恐ろしくて考えたくもない。


 森の大半を主が覆っているようだった。

 彼らは新たな神の生誕祭に集まった信者達。

 その産声は今にも上がろうとしている。


 そのうち、それは起き上がった。

 天を突くような巨大な闇だった。

 足は細く、手も細いが、人の形をしていた。

 その姿が、炎に照らされて浮かび上がっている。


 鳴き声が帰らずの森に響き渡る。


「両足を切断する! 右は俺と明日香、左は日月!」


 そう言った零の手には、光剣が握られていた。


「了解!」


 三人は異口同音に返事をした。

 明日香の頭に犬の耳が生え、その手の甲に爪が生える。

 月夜の手に大剣が、真昼の手に剣が握られる。

 そして、四人は跳躍した。


 巨大主は身を捩って重たそうに手を振り下ろす。

 狙われたのは真昼だ。

 一瞬、ジェットコースターの落下点に入ったような悪寒が月夜を襲う。

 真昼は剣を消すと、手に天を掲げて唱えた。


「降り注げ、天剣……!」


 主の手が今にも真昼を飲み込もうとする。


「目覚めろ、千鳥!」


 空から大量の剣が落下してきて、巨大主の手首を粉砕した。

 その落下してきた剣の一本を蹴って真昼は落下していく。


「行くぞ!」


 零が言ったので、月夜は我に返った。

 巨大主の足に剣を立てる。

 刃は、通った。

 やった、と気が緩んだ瞬間だった。

 千鳥の一本が目の前を通過した。

 このケースでの行動は決められている。それを蹴って、月夜は落下する。


「なに?」


 地面に降り立って、月夜は眉をひそめて問う。


「いや、ナイス判断だ」


 同じく地面に降りた零が言う。

 巨大主の腹が妊婦のように膨張していた。

 その腹から、黒い闇が放たれた。


 三重の炎の壁がそれを遮るが、それを押しのけて落下してくる。


「月!」


 零に言われるまでもなく、月夜は大剣を振りかぶっていた。色とりどりの光が大剣に吸い込まれていく。


「舞い散れ、花びらよ! その光を持って不浄なるものを浄化せよ! そう、裁くのは我! 我こそが光の主である!」


 月夜は大剣を振り下ろした。


「真・桜花斬!」


 大爆発が起こり、大型主の腹部をも削り取る。

 普段なら真・桜花斬クラスの技を使えば一度に体力切れを起こす月夜だが、今日に至ってはそれはなかった。

 それは、大勢の詠月のメンバーが、月夜に力を貸してくれているから。

 桜井家の秘伝、"チャージ"の能力で、月夜は力のバックアップを得ていた。

 天道衆の首魁が、かつて至宝の子供達を集めてそれをしたように。


「そのまま、足を斬ってしまえ!」


 月夜に向かって再び振り下ろされた腕を、零が断って叫ぶ。


「花びらよ、集結せよ!」


 月夜は大剣を後ろに引く。


「全てを斬り裂き咲き誇れ!」


 そして、横薙ぎに払った。


「覇・桜花斬!」


 大剣から光が放たれ、横薙ぎの刃が飛んで行く。それは炎の膜も突き破り、両足の半分まで突き刺さった。

 零と明日香が跳躍し、さらに追撃を重ねる。


「落ちる……!」


 トランシーバーで、燕がそう呟いた。

 足を失って、巨大主の上半身が落ちてくる。


「がっはっはっは! 僕の出番のようだな!」


 藤五郎が高笑いした。


「まだ早い。桜花斬と鬼神の鉄槌で右手を、俺は左手をやる」


 零の冷静な声がする。

 零は宣言の通り、巨大主の左手を肩から断ってみせた。


「天から降り注ぐ鉄槌よ、悪なる者に裁きを!」


「舞い散れ花びらよ! 桜花斬!」


「鬼神の鉄槌!」


 下からの刃と上からの刃が巨大主の右手を断つ。


「いいぞ、藤五郎のオッサン! 出番だ!」


「おうよ!」


 零の声に、燕の背に乗る藤五郎は勇んで答えた。

 巨大主の体が落下してくる。このままでは潰れる未来が見える。

 藤五郎が手を前に掲げているのが見えた。


「いっけえ! 俺の結界!」


 見えない壁が、巨大主を覆ったのがわかる。

 見えない壁に頭をぶつけて、もたれかかるようにして巨大主は落下した。


 そして、静寂が周囲を包んだ。


「防いだ……?」


 月夜は、安堵のあまり呟く。


「別働隊! 進撃開始!」


 燕の声が、トランシーバーを通じて遠く森の向こうへ伝わっていく。



+++



「待ってました!」


 優助が、有栖が首紐で垂らしているトランシーバーに向かって声をかける。


「優助君。君の光に触れると私の中の兄が蒸発しちゃうから、計画通り」


「わかってます。ドーム状に、ですね」


 光の膜が、優助達を包んだ。

 有栖は頷いて、歩き始めた。


「行こう」


 君枝も優助も頷いて、後に続く。

 想像を絶するような魔窟だった。

 主の山が蠢いている。


「言い忘れてたけど、覚悟して入ったほうがいいよ。かなり酷いから」


 スカーレットの声がトランシーバー越しに聞こえる。


「遅い。圧倒的に遅い」


 優助はぼやきながらも、主達を蒸発させていく。

 このスキルは、天啓のようなものだ、と有栖は思う。

 人類を救えという、天啓。


(ならば、最後まで責任を持ってよ、神様……!)


 祈るように有栖は思う。

 別働隊は前進して行く。


「私と、貴女があの時この場に置き忘れたもの。取りに行くわよ、君枝」


「はい、有栖さん!」


 別働隊は、真っ黒に塗りたくられた絵画のような道の中を進んでいく。



次回『窮地、そして炎帝の覚醒』

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