死神の判断
八神月夜はベッドに寝転がってノートパソコンを操作していた。
思うような結果を得られず、表情を曇らせている。
「どうしたんだ? 月夜」
同じベッドに座り込んだ真昼が言う。
「なんか、見られてる気がする」
「自意識過剰だな」
「それでも、視線を感じるのよ」
月夜は拗ねたように言う。
「周囲に生体反応はありませんよ?」
セレナが戸惑うように言う。
「そもそも、ここからして隠し部屋だしな」
と言うのは真昼。
「隠しカメラでもついてないかチェックするべきかしら……」
「隠しカメラがついていたら今頃セレナとスカーレットの件で問題になっている気がします」
優助が申し訳なさげに言う。
「それもそうなのよねえ……なんなんだろう」
そう言って、月夜はノートパソコンを閉じた。
全てを、死神は見ていた。空間の狭間から見ていた。
そして、死神は空間を渡り歩く。
薄暗い部屋の中に、穴が空いて、仮面と闇が落ちた。それは、死神の姿を成す。
「多忙そうですね」
そう声をかけた男のテーブルには、書類が山のように積まれている。
「義父の偉大さに感服するよ。処理すべき仕事が多い上に陣頭にも立たねばならない。一杯一杯だ」
「私の方は、そろそろケリをつけようと思います」
「……早計ではないのかな?」
「あれの成長は閉じた。あれは現状に満足しつつある。その有様は醜い」
死神の手に、鎌が現れる。
「あれはもう腐った果実です。腐臭を放つ前に摘み取るのが良心というものでしょう」
「そうか。君がそうと判断したなら、間違いはないのだろうな。」
男は、優しい口調で非情な決断を後押しした。
「しかし、あの地には優助がいる。水鏡彗もいる」
「邪魔者は排除していただけるとありがたいところです」
「最強の矛と盾の激突か。興味深くはあるね。けれども、僕はこの地位を失う気も、優助という駒を失う気もないんだ」
「協力は得られぬ、と」
「十分に協力はしてきたつもりだけれどね」
沈黙が漂う。
「至宝の子供も残りは彼女達だけだ。天道衆の最後の残滓。丁重に葬ってやってくれ」
「了解しました」
そう言って、空間に穴が空いて、死神はまた移動していった。
次回『至宝の子供達』




