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スキルユーザーは優しい夢を見る  作者: 熊出
先守明日香の暴走編

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里帰りの要請

 哲三から一度帰れという催促が強くなったのは夏も近くなった日だ。

 進学もしなかったことから、一度今後の進路について話し合いたいとのことだった。


「けど祖父ちゃん、俺はネームレスに狙われてる。最近、死神とかいう奴も同僚を狙っていいる。この両者を倒さない限り、戻っても冬音達を危険に晒すだけだと思うんだ」


「……正論だが気に食わん」


 哲三は渋々ながらも優助の意見に理があることを認めてくれている。

 だから、強制送還されずに済んでいるのだろう。


「秋悟の誕生日はどうするんじゃ?」


「プレゼントを送るよ、それに、冬音の誕生日にも。俺がいても、できることはないだろう」


「男親の気楽さよな」


「そう嫌味を言わないでくれよ、祖父ちゃん」


「まあ、今ではワシも曾祖父ちゃんじゃ。ひ孫の顔まで見られるとは思わなんだな」


「先守最強の術者が弱気な」


「第三形態にはなれるようになったのか?」


「いや、まだ。スキルのほうが使い勝手が良いから、ついそっちを使っている」


「お前のスキルは無敵だからのう。実弾兵器と第四形態以外には」


「ああ……そうだね」


 優助がスキルを使っている最中に飛んできて、敵の頭を貫いた光の剣を思い出す。

 あれは第四形態の術者の放ったものだったのだろう。

 やはり、身体能力に優れた第三形態は習得しておくべきなのだ。


「身体能力向上を目当てに、第三形態は目指しておくよ」


「わかった。たまには冬音に電話をしてやれ。あれはあれで疲労しておるぞ」


「わかった」


 祖父からの電話を切ると、冬音に電話をした。


「よう、久しぶり」


「優助、久しぶり! 帰るめどは立った?」


 第一声がそれだった。優助は申し訳なさで胸が一杯になる。


「いや、今変なのに狙われててな。それを処理するまで、帰るのは延期だ」


「そっか……なら仕方ないね」


「けど、誕生日プレゼントを送るよ。真剣に選んで送る」


「木綿のハンカチーフでも歌おうか?」


「ここは都会じゃないぞ」


「けど、恋人が移り住んだ土地よ」


「旦那だ、旦那」


「そうだったね」


 冬音がくすぐったげに笑う。

 それだけで、優助は溶けそうになった。


「秋悟の様子はどうだ?」


「ハイハイして何処でも行っちゃうから大変」


「やんちゃしてるんだ」


「今度動画送るよ」


「ああ、楽しみにしてるよ」


「死ぬような危険はないんだよね……?」


 優助は、心音が高くなるのを感じた。


「俺のスキルを忘れたか?」


 平静を装って問う。


「スキル召喚術の無効化」


「死なないよ、そう簡単には」


「なら、いいんだけどね。赤子抱えて未亡人なんて嫌よ? 私」


「わかってるよ。そっちも、無理はするな」


「わかってるわよ。私のスキルを忘れた?」


「触れば砕けるほどの氷」


「わかればよろしい。優助より実弾に強い分汎用性高いんだから」


「じゃあ、またな」


「うん」


 優助は、電話を切って、しばらく寝転がって空を眺めていた。


「電話長いなと思ったら、寝てたのかい」


 ジャージ姿の月夜がやってきた。

 場所は、学校の屋上だ。


「いや、俺も家庭持ってるんだなって」


「なにを今更」


 月夜は滑稽そうに笑う。


「離れていると実感も沸かないかい」


「恋しくはありますよ。ただ、ネームレスと死神を対処するまで俺は去る気はありません」


「二人を倒した時が、別れの時か」


「……多少、寂しくはありますよ。こっちにも、随分と慣れました」


「そうでなければ友達がいがないというものだ」


 月夜は微笑んで、優助に手を差し出した。

 それを握って、立ち上がる。


「明日香は何処だい? 隠し部屋にもいなかったが」


「ああ、また分家ですよ。家庭教師しに行ってるんだ」


「ふうん。仲が良いのはなによりだ。それにしても暇だな、優助君。修行の付き合いをしてくれないかな」


「なんなりと」


 その日、夜になっても明日香は帰って来なかった。



+++



 明日香は満ち足りた気持ちでいた。

 未来は懐いてくれるし、時子は優しくしてくれる。

 分家に帰ってきたという思いがある。

 ここはもう、明日香にとってもう一つの家なのだ。


 だから、明日香は出された紅茶にも疑問を持たずに口をつけた。

 眠くなったら、寝不足なのだと思い仮眠を取ることにした。

 そして、明日香の意識は闇の中に落ちていった。



+++



「これは本当に正しいことなんでしょうか、ネームレスさん」


 時子が、震える声で問う。


「間違っているわけなんてないわ。本家は貴女達を冷遇してきた。だから、貴女には復讐する権利がある」


「けど、こんななにも知らないような子を使って……」


「第三形態の術者よ。器としては申し分ないわ」


 時子は、黙り込む。


「そもそも、貴女が最初に立てた計画じゃない。忘れ去っていただけよ。それを今、やり直すだけ」


 時子は、ポケットから指輪を取り出した。

 召喚術師ならわかる。そこから発せられるおぞましい気配が。


 それを眺めて、時子は溜息を吐いた。呼吸を整えようとするかのように。


「さあ、壊しつくそうじゃないの。先守の世界を」


 歌うように、ネームレスは言う。



次回『幼き日よさようなら』

本日投稿予定

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