表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルユーザーは優しい夢を見る  作者: 熊出
先守明日香の暴走編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/99

決戦、再び。対死属一刀

「分家に養子に来ないかって誘われてるんだ」


 明日香の発言は、優助の朝食を止めるには十分な威力を持っていた。


「どう思ってるんだ?」


「行かないよ。私にはもう、本家に恩義も借りもある」


「けど、自然な形に収まると思うけどな」


「優助は、私がいなくなっても寂しくないの?」


「そりゃ、寂しい」


 明日香は、トーストを一口食べて、微笑んだ。


「じゃあ、この話はなしだ」


「そうだな」


 優助も苦笑してトーストを食べ始める。

 秘密の部屋への扉が開いて、真昼と月夜がやってくる。


「朝食作っときましたよ」


「ありがとう。いただくわ。それにしても、死神関連の事件が最近起きていないのが気になるところね」


「平和でいいじゃないですか」


「出てきて貰わなきゃ退治できないじゃない」


「……あれは化け物でしたよ」


 優助は、躊躇いがちに言う。月夜の気持ちはわかる。けれども、あれは並大抵の敵ではなかった。

 真・桜華斬を受けながらも平然としていたのだから。


「私はアレを倒さないと、前に進めないの」


 淡々と言って、月夜は朝食を食べ始める。

 優助はなにも言えずに、黙って食事を摂った。


 昼の時間、珍しく哲三から連絡があった。


「進学の件じゃがな。後悔はしとらんな?」 


「もう少し、この町に留まりたい。」


「進学すれば本州に戻れるし、冬音と秋悟の顔を見れる機会も増えるぞ」


「明日香が分家の皆と仲良くなっている。それに、死神っていう得体の知れない敵も出てきた。俺の力が求められているのはここだと思う」


 そう、優助はもう卒業を迎えてしまったのだ。

 進学もしていないので、今は寮長の助手ということになっている。


「死神、か。タイミングが良すぎるな……」


 哲三は、考え込んでいる様子だった。


「タイミングが良い、と言うと?」


「前に出たのが数年前。それが、お前が来た途端に現れた。胡散臭いとは思わんか」


「と言っても、俺がここに来てから結構時間経ってるしなあ……」


「ふむ。癪だが、桜井のの意見も聞いてみたいところだの」


「変なことが重なってるとは思うよ。ネームレスも追っかけてきてるしね」


「いかにも。ワシらの知らないところでなにかが動いておる。そのなにかがわからんのが悩ましいところだ」


 そう言って、哲三は咳をした。


「大丈夫かい、祖父ちゃん」


「ああ、いや。気にしなくていい。お前は自分の無事を第一に考えろ」


「わかった」


 そう言って、電話は切れた。

 ネームレス、死神、危険は身近に存在している。

 けれども、自分からは動けない。

 常に後手を踏んでいるのが煩わしい。


 そして、今日も夜がやってきた。

 月夜が大剣を杖のようについて廊下に立つ。

 その凛とした仕草にも慣れ始めていた。


「それじゃあ、今日は各々退治していきましょう」


「そうね。貴方のコントロールはもう抜群だわ。一人で十分でしょう」


 そう言って、二手に分かれる。

 黒い人影を見かけるたびに、光の盾を押し付けて消滅させていく。簡単な仕事だ。

 これはいつもより眠くならなくて済みそうだ。


 そう思って、悠々と歩いていた時のことだった。

 闇の中にぽっかりと開いた穴から、それは出てきた。

 大きな鎌を持った、髑髏の仮面を被った死神。


 慌てて、来た道を戻る。


「月夜さん、出た! 出た!」


 無効化の光を放つと共に、トランシーバーに向かって叫ぶ。


「なに? こんなに大きな光を出して!」


「死神だよ、死神!」


 背後を振り返ると、死神は光の圏外に留まって宙を浮いている。

 すぐに、月夜が駆けつけてきた。

 死神の背後には、真昼と明日香。


「優助、明日香達の方に回り込んでくれる?」


「必殺技を、撃つからですか」


 月夜は、無言で頷くと、杖のようについていた大剣を引いて構えた。

 優助は階段を駆け上り、二階を経由して明日香達の側に回る。

 熱戦が繰り広げられていた。


 月夜が鎌を防ぎ、真昼が千鳥を放つ。

 天から降り注ぐ剣の数々に、死神も多少はダメージを受けたようだった。


「漆黒より我はいでし者、漆黒から漆黒へと這いよる者。漆黒へと引きずり込む者……」


 死神が、周囲の攻撃を無視して鎌を引く。

 鎌に青い光が宿った。


「花びらよ、集結せよ! 全てを斬り裂き咲き誇れ!」


 月夜が、大剣を引く。色とりどりの光が大剣に吸い込まれていく。


「死属一刀!」


「覇・桜華斬!」


 二つの光が学校の中央でぶつかりあった。

 優助は無効化の光を放ち、真昼達を庇う。

 月夜が大剣を振り上げた。


「次いでいでよ! 月の光を纏いし花よ!」


 大剣に光が集中していく。そして、それは放たれた。


「十字・桜華斬!」


 最初の横の一撃に加えた縦の一撃。それが、死属一刀とぶつかりあった。

 死属一刀は徐々に押されていく。

 そして、死神は白い光の中へと飲み込まれていった。

 全ての衝撃を、優助の無効化スキルは何事もなかったかのように受け止める。


 凄い一撃だった。天井にも壁にも大きな傷跡が残っており、外や屋上が見える。


 これで終わったか、と思った時のことだった。

 黒い穴から鎌と死神の仮面と闇が落ちて、それはすぐに人の形を成した。


「今の一撃。確かに見事だった。単騎での実力は私に匹敵していると言わざるをえないだろう」


 死神が、感情をなくしたような声で言う。


「しかし、お前の才にしては、まだ、足りない……」


「仇と喋る口はない!」


 月夜が大剣を引き、構えた。


「花びらよ、集結せよ! 全てを斬り裂き咲き誇れ!」


 光が大剣へ集まると思いきや、月夜は膝をついた。

 今の一撃で体力を使い切ってしまったのだ。


「花びらよ!」


 月夜は叫ぶが、立ち上がれない。


「いけない!」


 真昼が駆け出した。

 優助も駆け出し、無効化の光を月夜の体まで伸ばす。

 その無効化の光の範囲外へと、死神は跳躍して避けた。


「お前ならもっと強くなれるはずだ。私を消滅させられるその次元まで……その時を待つとしよう」


 そう言って、死神は天を仰いだ。


「夢々、修行を忘れるな。母の死を忘れるな。お前の母は私が殺したのだ」


 そう言って、空中に穴が開いたと思うと、死神はその中に吸い込まれるように入り込んで消えて行った。


「花びらよ……!」


「もういい……」


 真昼が、辛そうに呟く。


「花びらよ、集結せよ!」


「もういい! 奴は、行った!」


 真昼が叫んで、月夜がその場に崩れ落ちた。

 そして、嗚咽を漏らし始める。

 優助は、月夜の傍に駆け寄った。

 月夜は、優助にしがみついて、泣いた。


「殺せなかった……殺せなかったよう……二度も、二度も、チャンスがありながら……」


 優助は、月夜の背を擦ることしかできない。


「不甲斐ないのは、俺だ」


 真昼はそう言って呟くと、その場に背を向けた。


「明日香。しばらく二人の護衛をしてやってくれ」


「わかったよ」


 明日香はなにも言わずに、泣きじゃくる月夜を見ていた。

 真昼は、去って行った。



+++



「学校で必殺技を使ってはいけませんって校則作るべきだと思う」


「賛成」


 二人の子供が、建物の修復作業に取り掛かっている。

 寮から見物に来ている子供達もいるので、そちらの記憶を消す作業に追われている人もいる。


 楓が、コーヒーの缶を月夜に突き出した。


「飲め」


「……ありがとうございます」


 月夜は無言でプルタブを開け、コーヒーを飲み始めた。

 そして、深々と溜息を吐く。


「二度目も倒せなかった……」


「けど、奴は貴女を狙うと宣言したんでしょ?」


「ええ」


「また、会えるわ」


 楓は、慰めるように言う。


「嬉しくないですね」


 そう言って、月夜は苦笑した。


「技で勝った。体も消滅させた。なにがいけなかったんだろう」


「……仮面に秘密があると思うのよね、私」


 楓は、躊躇いがちにそう言った。


「あれだけダメージを恐れなかった死神が、私が仮面を射ただけで退いた。あの仮面に、なにか秘密があるんじゃないかしら」


「仮面、か……」


 月夜は、項垂れた。


「次は狙ってみます」


「ええ、そうしなさい。責任は取れないけどね」


「自分の命で取りますよ」


「……クレバーになりなよ」


 そう言って、楓は煙草の箱から一本を取り出すと、口に咥え、我に返ったように箱に戻した。


「いけないいけない。室外禁煙中だった」


「室内でも禁煙したほうがいいと思いますよ? 臭いつきますし」


「……中々鬱屈が貯まるものなのさ。浮世って奴は」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ