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スキルユーザーは優しい夢を見る  作者: 熊出
暁君枝編

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22/99

炎と、嵐と

 君枝は極度の緊張の中にいた。

 ぶつかりあう炎と嵐。その炎の隙間から、時たま、風の刃が発射される。

 それを炎の歪みを見て回避していくものの、いつ被弾するかは知れたものではない。

 全力の炎をぶつけている。だというのに、相手の竜巻が破れない。


 炎と嵐。嵐が相性の面で勝っているということか。

 ならば、別の手だ。

 君枝は、手段を変えて空中へと飛んだ。

 その瞬間、竜巻が止む。

 風の刃と炎の弾が空中で幾重にもぶつかりあい爆発を起こした。

 そして、上空から羽根の矢を発射する。

 次の瞬間、風の盾が巻き起こり、全てを吹き飛ばした。


 完全な膠着状態。


「無駄なあがきはした? 神様にお祈りは? 両親に感謝は告げたかしら?」


 友美は、嘲笑するように言う。

 そして、巨大な風の刃を放った。


 辛うじて回避する。

 そして、また竜巻は巻き起こる。


 攻防一体のその技を前にして、君枝は竦む。


「なら、そのまま蒸し焼きになっちゃいなさいよ!」


 君枝は高熱の炎の壁を竜巻にぶつけた。

 熱さを避けるように竜巻の範囲が広がっていく。

 その時、目の部分も大きくなるのだ。


 君枝は、炎の弾を幾重もの盾にして、竜巻の目へと突撃した。

 風の刃が妨害に放たれる。しかし、炎の弾の一つが壁になって爆発する。

 その時、友美は目を擦った。遠夜が与えた傷から流れる血が、隙を作った。


 最後の壁、風の刃が格子状に配置された。

 それと、全ての炎の弾がぶつかり、両者は相殺される。

 そして君枝は、友美の前に立っていた。

 竜巻の中心部の中、友美と対峙していた。

 友美の表情は、驚愕に見開かれている。


 思い切り振りかぶって、殴る。

 竜巻が止み、友美が後方へと倒れた。


 そして、右手を差し出して友美を狙う。

 一瞬、頭を狙おうとした。しかし、すぐに足に狙いをさだめる。

 その一瞬が、隙となった。


「甘っちょろいんだよ!」


 膝に深々と風の刃を受けて、君枝はその場に座り込んだ。

 血が溢れ出ていく。まるで命そのものが流れていくかのようだ。

 そして、友美は君枝の右手を取った。


「長かったけど、これでおしまいだ! あんたの力は、私が貰う!」


 痛みで、集中力が練れない。闇が傷口を埋めようとしてくれているが、一手遅い。

 終わりか。

 嫌だ。もう一度遠夜と共に歩くと誓った。これでは、約束が違う。


 その時、銃声が鳴った。

 友美の腹部から、血が溢れ出ていた。


「だから言ったんじゃ、君枝……」


 疲れ切ったような声が、室内に響き渡る。


「どんな勝負にも、光明はあるってな」


 拳児の声だった。


「お前の負けは決まってるんだよ!」


 風の刃が飛ばされる。それは、深々と拳児の頭部を抉った。

 それが、チャンスだった。

 遠夜と拳児、二人のうちどちらが欠けても得られなかった、チャンスだった。

 友美の内部から、光を吸収する。


「え、いや、嘘……」


 友美は抗おうと、身を捩る。

 しかし、君枝は放さない。

 友美の内部から放たれた光が、君枝の体の中へと入ってくる。

 一瞬、友美の記憶が、見えた。


「あいつのとーちゃん、拳銃隠してたのバレて捕まったんだってー」


「ヤクザの娘だからお母さんは近づくなって言ってた」


 それは、心無い声。親が洗脳した子供達の声。


「私達、一緒だね、友美ちゃん……」


 君枝は、瞳から涙が溢れ出してくるのを感じていた。

 友美も、表情を歪める。

 君枝の記憶も、友美は見ているのかもしれない。


「もう、一人じゃないよ……」


 そう言って、君枝は友美の肩を抱いた。

 友美は、しばらく唖然としていたが、そのうち肩を震わせ始めた。


「私は、貴女から色々なものを奪ったわ……」


「立場が逆なら、私がそうなってたかもしれない」


「許すって言うの? 私を」


「誰も救われない結末なんて、私は嫌だ」


 後は、言葉にならなかった。君枝と友美は、その場で二人して泣いた。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



「最後まで生き残ったのは俺達二人か」


 情報屋が、やや投げやりな口調で言う。


「そうだね……」


 君枝は、呆然としていた。長かったようで短い数週間。その間に、色々な出会いと別れがあった。

 今日の二つの別れは、君枝の中に深々とした闇を残した。

 君枝は、情報屋の車に乗っている。

 詠月に場を任せて、その地を去ったのだ。


「友美ちゃんとやらは奴らを従えていた。お前は、平和になったと思っていいんじゃないか?」


「そう……だね」


「けど、最後にやらなくちゃならないこと、あるよな」


 情報屋が言うので、君枝は戸惑う。


「お前が吸収してきた力を使って、世の中の人間全てをスキルユーザーにすることだ」


 情報屋の言葉に、君枝は絶句した。


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