悪夢の訳し方
会議が終了したときちょうど昼食の時間になったため、一同は揃って昼食を取ることにした。
しかし、ウィリアムは悪夢を見たためか、食欲がないといってこの誘いを断り、彼らと一緒に食事を取らなかった。
ヘレナとハンスはそんなウィリアムの様子が気になり、彼に体調が悪いのではないかと尋ねた。これに対してウィリアムは、「大丈夫だ。何も心配はいらない。私は今一人になりたい」と言って二人から離れた。
ウィリアムは二人から離れると、再び悪夢について考え始めた。
夢の中では、父上が叔父に苦しめられていた。これはアンナの言葉から考えると、夢の中の出来事は叔父が父上の命を奪ったということを表しているのだろう。
しかし、アンナが処刑台へ向かう場面はどう解釈したら良いのだろう。
アンナも叔父に殺されたのだろうか。いや、たぶん違う。アンナも叔父に殺されたとしたら、父の死の真相とともにそのことを私に告げるはずだ。それに、アンナが亡くなる二ヶ月前まで叔父はイグノラシアにいたはずだから奴にはアンナを殺せない。
まさかアンナは自殺をしたのだろうか。いや、それもない。アンナは確かに病死だった。アンナの症状は当時巷で流行っていた病のものと同じだった。医者の言葉もあるので間違いない。
・・・・・・だめだ、私には分からない。これ以上あの夢について考えることはやめにしよう。
私には父上の死が叔父の手によるものであるという確かな証拠を探すという問題にさえ手をつけられていない。そんな中新たな悩み事を増やしてしまっては私の精神が参ってしまう。役に立つかも分からないことに頭を使うのは今の私には無駄なことでしかない。
今の私が一番に為すべきことは叔父による父上殺しの証拠を探すというものなのだから。
悪夢を見たせいか、どうにも気持ちが沈んでしまっている。このままの状態が続いたら本当に気が狂ってしまう。どうにかして心の闇を取り除かなくては。
こんな時は散歩をするのが一番だ。散歩は良い気分転換になる。さわやかな風を受ければ私の気持ちも晴れるだろう。
こうしてウィリアムは散歩をするために庭へと向かった。