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「軽蔑した?」

 ナナシが白刃悪鬼デモントゥールを発動すると、すぐさま巨大ミミズに襲いかかった。

 肉を切り裂き血の雨が降る。

 怯んだ巨大ミミズはすぐに横坑ラダーの中に逃げ込み、ナナシが凶声をあげながら追撃するのだった。

 巨大ミミズとナナシが鳴らす地響きが広場ドランから遠のくと、攻略師団は体制と立て直し始める。

 被害は甚大。

 多くの者が死に、物資も散乱してしまう。団員の多くが「今回も失敗だった」と絶望しかけた。

 それでもユリウスの姿は、誰の目からしても悠々と自信に満ちたものであった。


「進軍を再開しようではないか!」


 彼がそう指示を出すと、団員達の目に力が宿る。立ち上がって進軍の準備をし始めるのだった。

 ただ、頭から血を流したままのシノンだけが、怒りの形相で詰め寄る。


「団長さんッ!」

「なんだ?」

「あの人は置いていくんですか?!」

「彼がどこにいるか分からぬ以上回収は不可能だ」

「でも!」

「元より我らは決死の覚悟でここまで来たのだ。彼の尊い犠牲を無駄にしないためにも進まねばならぬ。彼一人のために時間を割くことはできない」

「詭弁ですッ!」

「そうさ、私は正義をいているのではない、瘴気を止める為だけにここまで来た」


 そう突き放し、ユリウスは改めて進軍の指示を出した。

 シノンが涙を流しうつむいていると、団員はジロジロと冷ややかな視線を送る。

 泣き顔を隠すように寄り添った一人の女性がハンカチを差し出しながら、

「軽蔑した?」

「ミリアムさん……」

 シノンが受け取ると、また別の布を彼女の頭に当てがう。


「うぅ」

 消毒液がみたのかシノンはピクッと顔が歪む。


「あの人だって平気なわけではないの。もしあの人が団長の立場に無かったら、きっと追いかけていたでしょう、彼にはその力があるから」

 血を拭っているだけなのだが、まるで頭を撫でてながら慰めているようだ。何も答えずにされるがままシノンは手当をされる。


 包帯を巻き終わると、ミリアムは少し緊張した口調で、

「ここに来るまで死んでいった攻略師団は一万人、彼らを背負っているから」

「……えっと」


 シノンは困惑した表情を返した。突入部隊は千人ほどだったからだ。それも被害は半分ほど。一万には程遠い。


「今回で第七次だから」


 実動部隊は突入部隊の他に、橋頭堡の確保部隊やリョジュン・ベルクの待機部隊などもいて毎回四千人ほど動員する。

 その半分が毎回死ぬ。一万というのはむしろ小さい数字だ。


「攻略が成功すれば、彼らの死は無駄にならない。彼らを犬死にするわけにはいかないのよ。貴方のダーリンはそんなに弱い人なの?」

「……強いです」

「ならちゃんと、戻って来てくれるわ」


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