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ラブレター ~追憶のププリーヌ~  作者: せんのあすむ
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想いの行方

ジルが見付けてくれたそこには、こう記されていた。


『神暦十三年。アーティナス王国のフェリネリア王女からレオニティウス皇太子に、魔法人形の形で個人的な信書が送られた。内容は王女からの熱烈な想いが綴られたものであった。


ププリヌセア=メヒーネスト=アレコヌイスト=ホディ=アシャレナーハム=レホ=クーデルウス=メシュナアハ=トヒナ=ウル=レショネーソン。


意訳すると、『愛するあなたへ。この(ふみ)があなたのもとに届くころには、私はもうこの世にいないでしょう。だけど私の想いは永遠となり、いつかあなたのお傍へまいります』となる。


しかし、約定を破りしアーティナス王国の王女と皇太子との親交など認めるわけにはいかない。よって、魔法人形については我が国で再利用させてもらうものの、書状については皇太子には伝えないものとする』


とね。


紛れもなくそれは、私のことだった。


どうやらなにか行き違いがあって、国同士の関係が壊れてしまったみたいだね。そして私は、結局、王女様の気持ちを王子様に届けることができなかったと……


ありそうな結末だと思った。十分に想定できる話だった。だから私は、別にショックでもなんでもなかった。なのに、


「王女様、かわいそう……」


私が内容を読み上げると、セリスが悲しげに声を上げる。


まだ子供だけど、でも生まれた時から冒険者として生きてきてすでにベテランの域に達していつつ、彼女は優しい心根を持っていた。さらに、


「手紙くらい届けてやってもいいのによ」


カインも、不満そうに口にする。


ああ、いい子達だな……


すると、アーストンが言う。


「でも、これが人生ってもんだ。王女様や王子様でさえ、何でも自分の思い通りになるってわけじゃない」


「……うん」


「そうだね……」


カインとセリスが頷くと、ジルに目を向けて、


「でも同時に、お前達の母親のジルがこうして人間として生きられてるように、『絶対に無理だ』と言われることでも、できたりすることもあるというのもやっぱり事実なんだ。だから、なってみないと分からないというのも人生なのさ」


微笑んでみせる。


ああ、そうだな。アーストンの言うとおりだ。どういう結末になるかなんて、なってみないと分からない。


カインとセリスが改めて頷くのを確かめて、アーストンは私の方に向き直り、


「プリムラ。取り敢えずこれで旅は終わりかもしれない。お前がこれで満足して旅を終えるとしても、俺達はそれはそれでいいと思う。でも、もし、さらに旅を続けたいと思うなら俺はお前に付き合うよ。だってほら、まだ分かってないこともいくつもあるじゃん。お前がセレイネス王国に行くことになった経緯とか、ゼンキクア王国に行くことになった経緯とか」


と告げて、さらに、


「なにより、お前がどうして記憶を失うことになったのか。とか、俺も正直、気になってるしよ」


と言ったんだ。


だから私も、


「確かに。私もそれは少し気になる……」


と応えてた。そんな私に、アーストンは、ニカッと大きな笑顔を浮かべながら、


「なら、決まりだ。取り敢えずは、セレイネス王国に行くことになった経緯からかな。それだったら、ここにも手掛かりがあるかもしれねえ」


言って、ジルもカインもセリスも頷いてくれたのだった。




こうして何十年にも亘った一つの旅が終わり、そこからまた、新たな旅が始まることになった。


次の旅は、それこそ、カインやセリスが大きくなって、誰かと結婚して、子供ができて、その子供達も一緒に旅をすることになるかもしれない。


それ自体が、人間の営みなんだろうな。


ああでも、その前に、スリガンに今回のことを報告しに行かなきゃいけないし、トーマとライアーネにも報告しなきゃいけないし、シェリーナやルビン、ボーデン、ナフィにも報告しなきゃ。


なんだ。することはいっぱいあるじゃないか。呑気になんて構えてはいられない。


不死不滅の魔法人形である私は、 人間ほどは焦らなくていいのかもしれない。だけど、そんな私にも<想い>というものはあって、それに従って動くというのはありなんだろうな。


引き続き王宮図書館で調べると、しばらく王宮の小間使いとして働かされていた私は、<ローウェン王国>という国の王女に気に入られて、無期限で貸し出されることになったのが分かった。でもそこから先は分からなくて、


「じゃあ、まずはスリガンのところに戻ってから、そっから先は改めて考えることにしよう」


アーストンの掛け声と共に、王宮図書館を後にする。


そんな私達の前には、果てしない世界がただただ広がっていたのだった。







~Fin~



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