大いなる神精ルーゼナンドの加護を受けし誉れ高き世界の宝
<大いなる神精ルーゼナンドの加護を受けし誉れ高き世界の宝>の本来の言葉を流暢に話す。
それは、私が少なからずこの国の言葉の基になった言語に触れた経験があるということ。そしてそのことが、私の<予感>をさらに確かなものにしていく。
そんな私の前にそびえる立派な建物。
「これが、王宮図書館か……」
アーストンが少し気圧されたみたいに呟いた。獣とか相手には怯まない彼も、こういうのはさすがにちょっと苦手みたいだね。
もっとも、王宮図書館とは言っても、別に王宮の中にあるわけじゃない。王宮から見える位置にはあるし、噂では地下に秘密の通路があってそのまま王宮とも行き来できるとは言われてるけど、別の建物だ。それでも、
『これが王宮だ』
とか言われたら信じてしまいそうなくらいに豪奢な造りではある。そういう意味でも<王宮図書館>って名前なのかもね。
「よし、じゃあ、行くぞ」
気を取り直したアーストンに続き、私達も足を進めた。
でも、王立図書館は、見た目は圧倒されるくらいに立派でも、大部分は一般にも開放されてて誰でも普通に入れる施設だから、止められることさえなく当たり前にすんなりと入れた。
ただ、中では、完全に一般に開放されてる部分と、それこそ研究者のような者でないと立ち入りが許可されない部分があった。だけど私達は、スリガンの<遣い>として来てるので、先に彼から連絡が届いているし、加えて、渡された書状と私達自身の冒険者としての身分証を係員に見せるだけで、
「どうぞ。こちらです」
と、驚くぐらい丁寧に案内してもらえた。それ自体、なんだかここまでの旅路を労ってくれてるみたいな気がしてしまう。
こうして通されたそこは、一般に開放されてる部分よりもさらに荘厳な雰囲気の場所だった。そして壁一面にびっしりと分厚い本が並べられている。
「お探しの資料は、こちらの棚に並んでいるものです」
さすがに闇雲に探すには大変過ぎるので、スリガンが大まかな当たりをつけてくれていたんだ。そこに目的の記述があるかどうかは分からないけど、いまさら急ぐ必要もない。なければ別にまた探すだけだ。
だけど……
「あった……」
見付けてくれたのは、ジルだった。彼女には、当然、<大いなる神精ルーゼナンドの加護を受けし誉れ高き世界の宝>の本来の言葉は分からない。分からないからこそ、<アーティナス王国>という単語だけを覚えてもらって、ただただ同じ形の文字だけを探してもらったんだ。
終わってみれば、なんと呆気ない。
私が見付けられてから数十年。<ゼンキクアの王都の跡>で『セレイネスの王子様は人でなし』という私自身の落書きを見付けてからでも十年以上に亘って続けてきた旅が、こんな形でなんてね……




