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ラブレター ~追憶のププリーヌ~  作者: せんのあすむ
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こういう日も珍しくない

昼前、改めて念入りに準備をして遺跡に出向いたけど、この日は<大トカゲ>はまったく姿を現そうとしなかった。


おびき出すための餌として羊を一頭、用意してもらったけど、それでも駄目で。


まだ、そこまで腹も減ってないということか。


とはいえそれはこちらも織り込み済み。<大トカゲ>はあの巨体を維持するために大量の餌を必要とするから、そう何日も絶食は続けられない。


結局、日が暮れるまで見張ったけど、中にいる気配はあるんだけど、それ以上の動きはなかった。


この仕事は、こういう日も珍しくない。


経験が浅く功を焦ってる新米冒険者なんかだとここで無理をして大失敗ということも少なくなかったりもする。


だけど、生まれた時から冒険者として生きているアーストンやカインやセレスにはそういう焦りもない。ジルも、アーストンを信頼してるからしっかりと彼の指示には従ってくれるし。


ちなみに見張りは、私は疲れることがないから一日中ずっと。アーストンとジルは交代で、見張りと、子供だから大人ほどは長く集中してられないカインとセレスに気分転換の稽古をつけたりして過ごした。


彼らにはそれが当たり前の日常だった。


日が暮れて、今日はもう無理だと判断。羊を連れて宿に戻る。


「いかがでしたか?」


宿の前で待ってたスリガンが尋ねるけど、


「駄目だ。まだ警戒が解けてないらしい。気配はあるんだが出てこない」


アーストンが事実だけを淡々と告げた。こういうところもベテランらしい。


「そうですか……」


スリガンは明らかに残念そうではありつつも、


「まだ二日目ですからね」


自分自身に言い聞かせるようにそう応える。


そんな彼に、アーストンも、


「ああ。俺達も一度受けた依頼は必ずやり遂げる。できない仕事は引き請けない」


きっぱりと言った。


幼かった頃の面差しは残しつつも、さらには私と出会ったばかりの頃のトーマの面差しもありつつも、自分の仕事に責任を持っている大人の貌だった。


血や想いが脈々と受け継がれてるのも感じる。


後にも先にも<自分>だけしかいない魔法人形の私とは違う。これが<人間>なんだ。


それを改めて感じつつ、私は明日以降の段取りについて考えていた。


明日は、取り敢えず今日と同じく餌の羊でおびき出す形で様子を見る。それで駄目なら、煙で燻り出す。もっともこのやり方だと、遺物まで燻されてしまうので、できればやりたくない。


とは言え、相手は生き物だからね。いつだってこちらの思い通りに動いてくれるとは限らない。


人間だって同じだよ。なるべく思い通りに動いて欲しいと思うなら、向こうが『そうしていい』と思うものを提示しなくちゃね。


ただ、人間相手だとある程度は何を望んでるのか予測もつくけど、獣が相手だとなかなか、ね。



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