確実に生きて帰れる目算があってこそ冒険
冒険は、確実に生きて帰れる目算があってこそ冒険だ。『生きて帰れるかどうか分からない』なんていうのはただの無謀。ましてや、生まれついての冒険者といってみたところで実際にはまだ十歳の子供達まで死なせるようなのは、愚の愚。
ちゃんと生きて帰れる目算はあったけど、それを上回る不運があったことで残念ながら。ということならまだ分かる。
『冒険とはそういうもの』
と言うこともできる。だけど、しっかりと対策を講じないのはただの怠惰だ。そういう意味でも、不死不滅の私がいることはアーストン達には大変なアドバンテージだと思う。
早速、<大トカゲ>の前に私が立って気を引き、その隙に、猿のようにすばしっこく身軽なカインとセリス、そして元・野良子として生き延びるために身に付けた身のこなしを活かしてジルはするすると石壁を上り、優位な位置に付いた。
もちろん、朽ちかけた遺跡の石壁だから崩れたりする可能性もある。それはちゃんと想定して、確実な足場として使えるかどうかを確かめる意味もあった。
アーストンは、私と一緒に囮役だ。
そして私が、石礫と共に雷撃を食らわせる。
「!?」
ただの石礫ならびくともしなさそうな<大トカゲ>が、ビクッと反応した。私の雷撃に一瞬怯んだんだ。
それと同時に、体を翻して、遺跡の奥に隠れてしまった。
大きなダメージがあったようには見えなかったけど、そこはさすがに野生の獣。異変を感じたら無理はしない。きちんと逃げる。
<大トカゲ>の姿は見えなくなったけど、誰一人油断はしない。アーストンも槍を構えたまま、
「どうだ? 手応えは…?」
と尋ねてきた。
「うん、正直、厳しいかな。雷撃がちゃんと通ってる印象がない」
感じたままを伝えた。
私とアーストンがそんなやり取りをしている間も、ジルとカインとセリスは、足場となる石壁や屋根の状態を確かめてた。その上で、
「どう? おびき出せそう?」
ジルが尋ねてくる。それに対してはアーストンは、
「いや、完全に警戒されちまったし、今日はもう無理だと思う。明日以降だな」
<大トカゲ>が潜り込んだ屋敷の奥を睨みつけながらアーストンは答えた。
「私もそう思う」
彼に続けて私も答える。
崩れかけた屋敷の奥にこちらから入り込むのは危険すぎる。何より、中がどうなっているのかの情報がまったくない。そういう危険をおして挑むのは、傍目には勇気があるように見えて楽しかったりするかもしれないけど、そんなのはただの蛮勇だ。私達は自殺志願者じゃない。
元々今日は、あくまで様子見のつもりだったから、また明日、出直すことにしたのだった。




