次の世代
なんにせよ、<北の大国>に入国を果たした私達は、これまでと同じように冒険者としての仕事をしながら情報を集めた。
とはいえ、<北の大国の基になった国>に武力で併合された国は基本的にそれまでの歴史とか文化を捨てさせられその一環として歴史を記した本なんかも捨てさせられたところがほとんどだったから、どうしても口伝による曖昧な情報しか残っていなかった。
ただ、その中にも、手掛かりとなりそうな情報も散見されて、私達はそれを基に各地を渡り歩いた。
北の大国は、何だかんだと戦争をしてる国だけど、その大きさもあって、実際に戦争を行ってる地域以外は平穏なものだった。私達は、戦争が始まりそうだとなればその地域を離れ、巻き込まれないことを心掛けた。
そんな生活も気付けば十数年。トーマとライアーネも、すっかり、おじさん、おばさん、になっていた。
「いたたたた……」
その日の仕事を終えて宿に戻ると、トーマが椅子に座って顔をしかめながら自分の膝をさする。
「痛み止めの薬草も効かなくなってきてるみたいね……」
ライアーネが心配そうに言った。
トーマは、海賊見習いだった頃、毎日のように暴力を受けたことで、体のあちこちに古傷があった。膝が傷むのも、その古傷が原因かもしれない。若い頃はそれでもあまり気にせずにいられたのが、歳をとって体が衰えてきたことで表に出てきたんだろう。人間にはよくあることだ。
加えて、冒険者は、どうしても体を酷使することの多い仕事だからね。大抵は五十を前に引退する。トーマにもいよいよその時期が迫ってるってことだろうな。
ライアーネの方が歳は上だけど、貴族のお嬢さんとして大事に育てられてきたこともあって、トーマのように体に傷を抱えたりもしていない。冒険者としてのキャリアの中でも、実は要領がいいから大きな怪我とかはしてこなかったし。
逆にトーマは、勇敢なのはいいんだけど無鉄砲なところがあるから、ライアーネがしっかりと手綱を握ってなかったら命を落としていてもおかしくないことは何度もあったって。そういうのも影響してるのかもね。
トーマは、自分の膝をぎゅっと掴んで、唇を噛み締めて、目を瞑って、しばらく考えた後、視線を上げた。
その視線の先には、アーストンとジルの姿。若い頃の自分そっくりの精悍な青年になった息子と、その息子の最高の相棒となった元・野良子のジルを見て、言ったんだ。
「どうやら俺の旅はここまでのようだ。これ以上はお前達の足を引っ張ることになる。だからここから先はお前達に任せる。プリムラを……いや、ププリーヌを頼む……」




