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ラブレター ~追憶のププリーヌ~  作者: せんのあすむ
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人間はそれでよかったのかな?

こうして<グルーベル辺境自治州>へ向け引き返し始めた私達だったけど、その間も冒険者として仕事をして路銀を稼いだり、図書館があればそこでいくらか本を読んだり、シェリーナと手紙のやり取りをするために何週間も同じところに逗留したりして、<グルーベル辺境自治州>に実際に辿り着いたのは一年が経ってからだった。


「やれやれ。やっと着いたな」


トーマが溜め息混じりにそう言うと、


「だらしないぞ、父さん!」


一年の間にさらに成長した小さいアーストンが、胸を張りながら言った。その姿は、体こそまだまだ小さいけど、<小さいアーストン>と呼ぶのはちょっと違う気がしてしまう。だからこれからは、ちゃんと<アーストン>って呼ぶことにしよう。


元々の<アーストン>だったトーマも、<レリエラ>って名前の貴族の娘だったライアーネも、もう、完全に<トーマ>と<ライアーネ>だった。そして私も、<ププリーヌ>じゃなくて<プリムラ>だし。


そしてジルは、すっかりアーストンに懐いてて、私よりも彼と一緒にいることが多くなってた。ちょっと寂しいような気もするけど、彼女は人間だからね。人形である私よりもちゃんと人間と一緒にいるのがいいと思う。


そうだ。ジルも、ただの<野良子(のらこ)>じゃなくなってた。身なりも普通の冒険者っぽくして、食事も、アーストン達と同じようにできるようになったんだ。


何より、


「ジルも平気だよな?」


アーストンにそう声を掛けられると、


「うん…平気……」


って、まだまだ語彙は少ないけど、それなりに喋れるようになってた。文字も少しは読めるし書ける。私達に付き合って散々本を読んでたからかもしれない。しかも、アーストンが絵本の読み聞かせをしてくれてたし。


そうか……こうやって時間を掛けて丁寧に接してやれば、人間に戻れる野良子もいるってことかもね。全員が全員そうなれるとは限らなくても、少なくともジルはそうだったんだ。


こうして<グルーベル辺境自治州>に到着した私達だったけど、


「図書館がねえのか……」


「何度も国が変わったりしたことで、それ以前のこととかを全部捨てさせられたりしたらしいね」


トーマとライアーネが冒険者としての仕事をしながら集めた情報でそういうことが分かってきた。


そう、他の国に支配されたりした時にそれまでのことを否定するために、本とかの、歴史を伝えるものが焼かれたりしたそうだ。


こうやって昔のことが伝わらなくなっていったんだろうなっていうのが分かる話だった。


私にとっては別にどうでもいい話だけど、人間はそれでよかったのかな?


とは、思ってしまったのだった。



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