そのために努力してる
実際に魔法を使える者として、<魔法の理>を備える者として、私には、
『再びこの世界に魔法が満ちることはたぶんない』
っていう実感がある。だからこう言ったら申し訳ないけど、
『無駄な努力をしてる』
って思うんだ。
だって、本当に魔法が使えるようになるんなら、私が見付けた<初心者向けの魔導書>を基に魔法を身に付けた人間が何人も現れてなくちゃおかしいのに、そんな人間、現れないし。だからたぶん、無駄なんだよって。
でも、それは私達がしてることも同じかもしれない。こうしていくら本を読み漁ったって、私がちゃんとお姫様のところへ届けられたかどうかなんて分からないかもしれない。
だけど、そうだな。無駄かどうかは、そんなに重要じゃないんだろうな。やれるだけやってみて、無理かどうかを確かめたいんだと思う。<納得>がほしいんだよ。そのために努力してるんだ。
『やっぱり無理だったんだ』
って思えたら、それでいいんじゃないかな。
それに、こうやってみんなで本を読めてるのって、なんだか楽しいし。
そうだ。この時間自体が楽しいんだ。
なのに、『別に見付からなくてもいいや』って思えたところに、
『セレイネス王国の地図が見付かった。それを書き写したものと今の地図を合わせて送る』
って、シェリーナから手紙が。まったく、皮肉な話だな。
見ると、<セレイネス王国>があった場所は、今は<グルーベル辺境自治州>という場所になってた。
「ここって……」
私は、<グルーベル辺境自治州>という場所に覚えがあった。ここは、ジルと出逢い、あの偏屈な酒場の主人の店があった場所だ。やれやれ、因縁ってものなのかな。
だけどそこは、何百年か前まで、今の<北の大国>の基になった国の一部で、内戦が起こって<グルーベル辺境自治州>を領土とする国ができたんだ。だけどその国でもまた内戦が起こって、『独立は認められないけど自治は与える』って形で自治権を得た地域って話だった。
実はその地域の所有権について<北の大国>とで対立してて、国境付近では時々衝突も起こるらしい。
それでも、あの偏屈な店主の酒場があった辺りは国境からも遠く、あんまり実感はなかったけどね。
なんにせよ、手掛かりが見付かった以上は、行かないわけにもいかない。
「よし、<グルーベル辺境自治州>に向かうぞ」
トーマが号令をかけ、私達は<グルーベル辺境自治州>に向かって出発した。
そこでも、次の手掛かりが見付かる保障はまったくない。だけど私達はこうして旅を続ける生き方がすっかり身に付いてしまったから。小さいアーストンもジルも、文句一つ言わなかったのだった。




