お守りの札
その農家の女性の話を聞いていて、あの猟師がゼンキクアに変に詳しかったことも何となくピンときてしまった。彼もたぶん、ゼンキクアに何か関係のあった人物で、そのせいで逆にシュクの中では生き難くて、流れるようにこうして西の国々の影響が強い国境近くのこの辺りに流れ着いたんだろうなって思った。
そうなると、ゼンキクアがあったところにはそれこそ何も残ってない可能性もあるか。
そんなことも思いつつ、獣退治の仕事の期間は過ぎて、トーマ達と合流して私達はさらに東を目指して歩いた。
途中、いくつもの町に滞在し、仕事もこなしながらだったから、ゼンキクアがあった場所に着いたのは、シュクに入って一ヶ月以上が過ぎてからだった。
「これが、ゼンキクアがあったところ…?」
ライアーネが呟く。無理もないかな。だってそこは、荒れ果てた廃墟だけが残ってる町の跡だったから。小高い山の上には、たぶん、お城があったんだろうなっていう崩れた石垣が残されてるだけだった。
だから当然、ジルの様子にも何にも変わりがなかった。懐かしんでるとか何かを思い出したとかそんな様子もなくて、ただいつものようにぼんやりと視線を向けてるだけだった。
「結局、何もなかったな……」
トーマが言う。その通りだと私も思った。だけど無駄に終わるのは分かってたことだった。
ただ、まったく収穫がなかった訳でもなかった。
町の跡を見て回って、何気なく入った店っぽい建物の床に落ちていた紙に書かれていた文字を見て、私は「え?」と思ったんだ。
「これ…お守りのお札だ……しかもスペルも書体もちゃんとしてる。魔力自体は既に枯渇してるっぽいけど、私が知ってる本物のお守りの札だ……」
「なんだと…?」
「どうしてそんなものがここに……?」
トーマとライアーネが訊いてくる。でもそれは私にも分からなかった。西の国々で使われてたお札の類は、どれもこれも昔のお札を真似ただけのいい加減なもので何の効果もない紙切れだった。だけどここには、その店っぽい建物以外にも同じように<本物のお札>が落ちてたりしたんだ。
どれも同じように魔力そのものは枯渇してる感じで効果自体はなくて、だからシュクに滅ぼされたのかなって。思ってしまった。
そして私は、それを確かめる為にお城の跡にも行ってみた。するとやっぱりそこにも、古くなって効果がなくなった<本物のお札>がいくつか落ちてた。
お城そのものは火を放たれて焼け落ちたんだろうけど、焼け残った部分にそれが落ちてたんだ。
これはもう、偶然とかじゃない。ここには本物の魔法が割と最近まで残ってたんだ。だけどそれも廃れてしまって、そこを突かれて滅ぼされたんだろうなと確信したのだった。




