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ラブレター ~追憶のププリーヌ~  作者: せんのあすむ
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祖先の国

ゼンキクアは、東の大国シュクが生まれるずっと前からあった国だったって。シュクが大きくなっても対抗してきたけど、策謀によって内部から崩されて滅ぼされたそうだった。でもその際、五人いたお姫様の中で十歳と五歳の小さなお姫様だけは港町の別荘にいて動乱に巻き込まれずに済んで、そのまま船でラプンに逃げ延びたんだって。


それでも王族の血筋を見逃してはくれなくて追手がラプンまで来て、ただラプンの人達は小さなお姫様をそのまま差し出すことはしなくて、『逃げられた』と言ってまた船で逃がしてくれたんだって話だった。


それから十歳と五歳のお姫様がどんなとこに行ってどう生きたのかは分からない。だけど二人は、もしくはどちらか一人は生き延びてその末裔がジルってことなのかな。


一国のお姫様の子孫がどうしてそんなことになってしまったのかって考えても無駄だと思う。ただ、ジルにその王族が付ける印がついてたっていうだけだ。本当にお姫様の子孫かどうかも分からない。


だから今さらゼンキクアに行ったところでどうこうなるものでもないと思う。野良子のらこにまで落ちぶれるくらいなんだからジル本人にも何の力もない。彼女は捨てられたんだ。


でも……


でも、それは私も同じだな……


千年以上前に滅びた国のお姫様の書いたラブレターである私が、宛先の王子様の下に届いたのか、お姫様の想いを届けることができたのかどうかなんていうのも、本当はもうずっと昔に終わったことなんだ。それなのに私達はそれを求めようとしてこうして旅をしてる。


しかも、いくらなんでも、ライアーネがいた国がある場所にあったという国のお姫様が出した手紙の宛先がこんな東の果てとも思えない。私達はただこうやって気ままな旅をする為の理由として『手掛かりを探す』って言ってるだけなんだ。


けれど、だからこそジルをゼンキクアがあった場所に連れていくのだって意味なんかなくてもいいんだろうなっていう気もする。単に当てのない旅の行先を決める些細な理由としては十分だとも言えるんじゃないかな。


「この子はたぶん、自分の祖先の国があった場所に行ってもその意味も分からないと思う。だけどその小さなお姫様達が五十年ぶりに里帰りするみたいな意味があるかもしれない……」


私がそう言うと、女性も、


「そうだね…意味なんかなくたっていいさ。ただ自分のルーツを意味もなく辿る時期ってのが人生の中にはあってもいいんじゃないかな。


私はもう祖父じいさんの故郷を見る為にそこまでする気にはなれないけど、せっかく機会があるんならね。


この子を送り届けてやっておくれよ……」


って、優しそうな目をしながら言ったんだ。



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