ホントの用心棒
ジルは、私が食べ物を与えてあげてる限りは大人しくしてた。野良子としては割と大人しい部類だと思う。キャラバンに同行してた間も大人しくしてくれてた。
砂漠を越えてキャラバンの目的の町に着いたところで冒険者としての仕事も終わって、またしばらくその町で滞在することになった。
だけどその町にも野良子はいて、冒険者ギルドの近くはどうやらその野良子達の縄張りらしかった。
「ガッ、ギャウッ!!」
そんな獣みたいな声がして振り返ると、野良子三人に地面に押さえ付けられてるジルの姿が目に入った。
「やめろ!」
私はそう声を出しながら走り寄った。すると三人が怯んだ隙にジルが振り払って私の後ろに回った。これまではそこまで近付かなかったのに、私のマントに掴まって隠れるみたいにして。
『そうか…この子らに比べれば私はまだ味方に近いってことか……』
そんな風に思ってジルの様子を見る。野良子達を威嚇するみたいに歯を剥き出してるジルの様子を。
ジルに襲い掛かった野良子達も、さすがに私には向かってこなかった。それどころか私のメイクに恐れをなしたのか、ぴゅーって逃げ出した。
するとジルも私から離れた。だけど、もう、物陰に隠れるほどは離れなかった。たぶん、私の傍にいる方が安全だと思ったんだろうな。
それでいいかなと私も思った。
干し肉を差し出すと、やっぱりひったくるようにして手に取るけど、遠くへは逃げなかった。
『まあ、この方が<私の妹>って説明しやすいか……』
そんな風にも考えるようにして、トーマ達の後を追った。
トーマ達はこの町での仕事と宿を見付けて、まずは宿に向かうことにしたようだった。私は先にトーマ達の宿を確認して、仕事の内容を聞いて、また朝夕にこうして顔を合わすことにして、それから冒険者ギルドに引き返して仕事を紹介してもらうことにした。
今回もまた、酒場での用心棒だった。
「はあ? お前が…?」
用心棒をすることになる酒場に出向いて店主に顔を合わせると、以前の酒場の店主よりはずっと若い、でも中年の髭面の男の人だった。怪しいメイクはしてるけど体格的には完全に若い女の子のっていう私を見て頭を抱えてた。
「いくら冒険者だからってこれはねーだろ…」
とかぶつくさ言ってる。
「まあしかたねえ。取り敢えず今夜だけ様子を見てやる。でも使えそうになかったらすぐ追い出すからな…!」
その口ぶりからしたら、ホントに用心棒が欲しかったんだなと分かった。そしてその言葉通り、私が仕事を始めた途端、酔っぱらい同士が喧嘩を始めて、さっそく出番がきたのだった。




