飽きるまで
あの酒場で働いてる間、ジルは結局その裏の路地を寝床にしてたけど、酒場のことも酒場の店主のことも眼中にないみたいだった。もしかしたら酒場の店主がジルのことを引き受けてくれるかななんてちらっと考えたりもしたのも無駄だったみたいだね。
ジルはやっぱり私の後をついてくる。トーマ達と合流して町を出ても、やっぱりついてきた。その様子に、私は『なんだか前にも見たな』って思ってしまった。そうだ、ライアーネがまだレリエラって名乗ってた頃に、と言うか、最初に出会った日に見た光景だ。私と、アーストンと名乗ってたトーマの後をレリエラがとぼとぼとついてきてた時の。
「ついてきちゃったね…」
ライアーネが前を向いたままそう言うと、トーマも、
「ついてきちまったな」
って応えた。
でも、ついてきちゃったものは仕方ない。どうせ身寄りもない野良子がいなくなっても誰も心配しないし。
「ま、私も人のこと言えなかったからなあ……」
私の後をついてきていろいろあって最終的には自分の国まで捨てちゃったライアーネにとっては他人事じゃなかったみたい。小さいライアーネはそれこそ気にしてなかった。
「目的は私みたいだし、ライアーネ達にはなるべく迷惑かからないようにするよ……」
私はそう言ってジルの方を振り向いた。
ジルは、話し掛けようとすると警戒するのに、食べ物を差し出すとさっとそれをひったくって口に入れた。こうなりそうな予感があったから、私は、酒場の仕事で稼いだ金の一部で干し肉をたくさん買い込んで、少しずつジルにあげた。
干し肉を買った後の金は全部ライアーネに渡した。私が持ってても仕方ないから。
トーマ達とは少し離れて歩く私の後を、ジルはとにかくついてきた。歩いても歩いても、疲れた様子も見せずに。
夜に野宿をする時も、三人とは少し離れたところで野宿をした。と言うか私には別に必要ないけどね。ジルが三人に迷惑を掛けないようにする為だ。
焚き火をしながら、以前、魔導書を見た時に覚えた、<針がなくても布に糸を通す魔法>を使って、服がほつれてきてるところを直す。焚き火は私の為のじゃない。ジルの為のだ。
近くの木になってた食べられる果実を採って、ジルの前に置いておくと、彼女はそれをむしゃむしゃと食べ始めた。一緒に置いた干し肉もしっかり食べた。
『どうやらしばらく離れそうにないな……』
改めてそう思った。別に構わないけどさ。
彼女がどうしてこんなに私のことを気にするのかは分からない。だけど追っ払うこともできない以上は、飽きるまでそうさせるのが一番だと思ったのだった。




