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ラブレター ~追憶のププリーヌ~  作者: せんのあすむ
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ケンカ

夜。酒場が開く前に店に行って、さっそく、用心棒という名の雑用をすることになった。


私は別にそれで腹が立つこともないからどうでもよかった。酒場の店主はそんな私に、


「このままずっとうちで働かないか?」


とか声を掛けてきたけど、


「それはお断りします」


とはっきり答えさせてもらった。


すると老店主は、「そうか…」と少し寂しそうな顔をした気がした。でも私には関係ない。


店の方はいつも通りの感じだった。多くが常連で、大したトラブルもない。やっぱり用心棒なんてただの建前なんだなと思いつつ、ゴミ出しとかをした。


客の食べ残しでまだ食べられそうなものを除けておいて、欠けて使えなくなった皿に乗せて地面に置いた。私が店に戻る時にさっとジルが近付いてきてそれをさらって口に入れるのが分かった。


その後も空いた酒樽とかを裏に出す時に一緒に食べ物も置いて、ジルにあげた。


それでも、ジルは警戒を緩めなかった。私とはある程度の距離を保って、物陰から隙を窺ってた。


「お前、野良子のらこに食いもんやってんのか?」


さすがに店主に気付かれてそう言われたけど、「はい」って誤魔化さずに応えた。すると店主は、


「あいつらは恩とかそんなもん感じないぞ。隙を見せたら何でも盗っていきやがる。まあ、あいつらにとっちゃそれが当たり前なんだけどよ。それは分かってんだよな?」


と訊いてきた。私も「分かってます」と短く答える。


「なら、いい……」


店主はそれ以上何も言わなかった。


だけど、この店の上で住んでるらしいこの店主にも、家族がいるような気配はなかった。用心棒って嘘吐いて店を手伝わせるようなことをするくらいだから、酒を飲みに来る客はともかくギルドの事務所でも散々な評判だった。正直、私にとってはこの店主も野良子と大して違いがあるようには思えなかった。


でも私にはそういうのも関係ないし興味もない。この店主が誰から嫌われてても、昼間は一人で寂しくしててもどうでもいい。


私はただ自分の仕事をするだけだ。


とその時、


「んだとてめぇ!?」


って怒声が店内に響いた。「やんのか!? ああっ!?」っていう怒声も。酔客同士のケンカだった。ようやく、用心棒としての仕事だと思ったのに、店主がずかずかとその二人に近付いていって、


「ここは酒を楽しむところだ! ケンカなら外でやれ! 他の客に迷惑だ!!」


と一喝すると、


「お…おう……」


「そんなマジになんなよ、冗談だよ冗談」


って感じですぐに収まってしまったのだった。



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