二日目
「どう? あの野良子の方は? って、相変わらずか」
朝、トーマ達が泊まってる宿に行くと、三人はちょうど仕事に行くところだった。
私のことが見える位置で物陰に隠れながらこちらを窺ってるジルに気付いてライアーネがそう言う。
すると小さいアーストンがまた、ジルの近くまで行って自分の干し肉を一つ差し出した。
「食うか?」
それをひったくって齧るジルの姿を、小さいアーストンがじっと見てた。同情してるとかそういう感じじゃない。たまたま近くに寄ってきた動物を物珍しそうに見てる感じかもしれない。
私達が思ってる以上に小さいアーストンは分かってるのかもね。ジルとの付き合い方が。
仕事に向かう三人を見送って、私は酒場でもらった給金で干し肉を買った。もちろん私が食べる為じゃない。それを持ったまま路地裏に行き、わざと地面に落とした。
でもジルがそれを拾う前に猫がさっとどこからともなくやってきてかっさらっていった。ジルもそれを追いかけようとしたけど、さすがに猫の動きにはついて行けない。いくら獣っぽくてもその辺りはやっぱり人間なんだなと思ってしまった。
諦めたジルが戻ってきたところでもう一度干し肉を落とす。すると今度はジルが拾って食べた。
それでも私に近付いてくるとかそういうのはなかった。あくまで距離をとって私がまた食べ物を落としたり置き忘れたりしないか窺ってる感じだった。
日が暮れてくる頃、私はトーマ達が夕食をとる為に訪れてる筈の、宿が経営してる食堂へと向かった。うまい具合に三人は夕食を食べてるところだった。
「今夜も酒場で仕事する……」
改めてそれを伝えておく。
「分かった。俺達も後一週、今の仕事が続くから。三人で十分足りてるし、そっちは任せるよ」
トーマがそう応える。時間があるからシェリーナに手紙を出したそうだ。この町を出るまでには返事が届くはず。少しくらい遅れてもそれを待ってから次に向かうことになった。
三人とは別口で私も仕事してるから、その分、稼ぎが増える。私はお金を持ってても使う当てがないからね。
食事の後で三人の部屋に行って、ライアーネにメイクを直してもらう。殆どくずれてなかったから細かいところを直すだけで済んだ。敢えて窓際で外に背を向けて座る。窓からジルに私の姿が見えるようにする為だ。ちらりと視線を向けると、向かいの建物の陰から私を見上げてるジルの姿が見えた。
メイクを直してもらって宿を出て、酒場へと向かう。その途中、また、干し肉をわざと落とす。ジルはまたそれを拾って私の後をついてきたのだった。




