用心棒
仕事に入る前にトーマ達に会って、酒場の手伝いをすることを告げておいた。「分かった」と返事をもらって改めて酒場に行く。
酒場の店主は、偏屈そうなお年寄りだった。
「働かざる者食うべからずじゃ! 用心棒だけで金が貰えると思うな」
とか言ってた。なるほどこれは嫌われるな。一見するとまともなことを言ってそうだけど、用心棒として雇った上に雑用までさせようなんて、自分にばっかり益があるよね。要するに身勝手なんだ。
実に人間らしいとも言えるかもだけど。
でもまあ、私にとっては別にどうってことなかった。力は決して強くないけど疲れることはないからなんてこともなかった。
「ふん…! まあまあ使えそうな奴じゃな」
だって。
一通り荷物を運ばせておいてよく言うなあ。
なんて呆れながらも私は別に何も言わなかった。それからも結局、ゴミ出しとか食材出しとか手伝わされて、用心棒らしい仕事はなかった。別にトラブルもなかったし。
私の見た目から接客には使えないと思ったのかそこまではやらされなかったけど、普通の見た目だったらお客に酒を注ぐくらいまでやらされてたかもしれない。困った雇い主だな。
そうして私が酒場の手伝いをやらされている間も、ジルは店の様子が分かるところに陣取ってじっと見てるのが分かった。ゴミ出しとかに裏に出た時も姿が見えた。
夜明け前、酒場の営業が終わった時、
「ほらよ、給金だ。お前はしっかり働いてくれたから少し色を付けておいてやった」
と言って、店主がお金を渡してくれた。確かに最初の予定よりは少し多かった。それと、
「残りもんだが、食うかい?」
と、酒のツマミの残り物を渡された。私は食べないけど、せっかくだからもらっておく。
すると店主は、
「もしまだこの町にいるんなら、今夜も手伝ってくれないか? 給金は弾むしよ」
とか言ってきた。別に断る理由もなかったし、トーマ達の仕事もしばらくかかるから、そういうことにした。
もらったツマミは、全部ジルにあげた。彼女から見えるところに置いて少し離れると、さっとさらって行った。そして物陰に隠れて私の様子を窺いながらむしゃむしゃと頬張ってた。
夜が明けるまではまだ少し時間がある。朝になったらトーマ達に会いに行って、今夜も酒場の手伝いに入ることを告げておこう。
裏路地に放っておかれた壊れた木箱に腰かけて、私は朝を待った。そんな私の様子を窺ってたジルもいつの間にか地面に横になって眠ってた。人間だから当然か。




