別行動
その野良子は、私達が町に入った時から後を付けてきてた。町の入口辺りで何かを物色してる感じだったのが、私と目が合った瞬間にビクッとなったのに、それからなぜかついてくるのだ。
「困ったのに目を付けられたな…」
トーマが頭を掻きながら言う。ライアーネも、
「乱暴に追い払う訳にもいかないしね」
って困り顔だった。ここまででも何度かこういうことはあって、食べ物を恵んであげたりもしたんだけど、気を許したと見るやお金や道具を盗んで逃げようとするから、今では構わないようにしてた。
野良子のように親を亡くした子の面倒を見る施設は、それなりの規模の町なら大体あるのに、そういうところにも馴染めなくて逃げ出すようなのが結局は野良子になる訳だから、最初から道理が通じないんだ。獣みたいなものだと思う。
だけど小さいアーストンにはまだそういうのが分からないみたいだった。
「なあおまえ、オレたちになんかようか?」
何気なく立ち止まった時にパーッとその子のところに走っていって、そんな風に声を掛けてた。
だけどそんな風に話しかけられると警戒して物陰に隠れてしまう。なのに小さいアーストンは話し掛けた。
「オレはアーストン。おまえは?」
するとその野良子は、
「…ジル……」
って応えた。
でもそれ以上は会話にならなくて、小さいアーストンは「くうか?」って言ってポケットに入れてた干し肉をジルって子に差し出した。
ジルはそれをひったくるようにしてまた物陰に隠れて、私達のことを窺いながら干し肉をかじってた。
「……」
「……」
トーマもライアーネも、小さいアーストンのしたことを咎めなかった。まだ言っても分からない時期だからだと思う。どんなに優しくしても懐かない野良子が相手だと最後は結局裏切られる。それを経験させた上で諭そうということだって分かった。
だけどジルが興味を覚えたのは小さいアーストンじゃなくて、やっぱりあくまで私だったらしい。私のメイクが気になるのか何なのか、とにかく私のことをじっと見てた。
「しばらく別行動をとった方がいいかな…」
ジルの狙いが私なら、私が引き付けておけばトーマ達は煩わされずに済む。とにかく冒険者ギルドでの手続きとか宿に泊まる時とかに変に絡んでこられたらいろいろ大変だ。
「そうね、お願いできる? でもお互いに姿は確認できるところにいるようにしてね」
ライアーネにそう言われて、私は先に歩き出した。するとやっぱり、ジルは私の後をついてくる。それを見届けた上で、三人は冒険者ギルドへと向かったのだった。




