野良子
トーマとライアーネと小さいアーストンとの旅も、最初はシェリーナがいないことの違和感もあったしトーマが寂しそうにしてたのもあったけど、一ヶ月もする頃にはすっかり慣れてた。
ある町で冒険者としての仕事の為に一週間ほど逗留することになった時、早便でシェリーナに手紙を出したら、
『どうしたの? お父さんが寂しいって泣いちゃってるの? 大丈夫。私は幸せだよ。彼も優しくてくれるし、みんなも親切だよ』
って返事が来た。トーマなんかそれを読んで泣いちゃって。
「泣いてんの?」
とライアーネに訊かれて「泣いてない!」とか言ってたけど、バレバレだよね。
だけど、シェリーナが幸せそうにしてるっていうのは本当に良かった。
ところで私は、人形であることを隠す為に、東方の島国に伝わるっていう特殊なメイクを施してた。何でもお芝居の時のメイクで、女性のモンスターを表すんだとか。これのおかげでだいたい気味悪がられて近寄っても来ない。取り敢えず、東方に行った時に悪さをしていた蛮族を懲らしめて従えたっていう話になってる。殆ど言葉も喋れないってことにしてあるから、大体いつも部屋の隅でじっとしてるだけ。それがまた不気味がってもらえて人除けになってる。
普通の人なら相当怪しい恰好だけど、冒険者っていろんな事情を抱えた人達だからね。変な身なりをしたのも多くて、私程度だと実はそんなに目立たない。
それを一週間に一度くらい、ライアーネに直してもらう。
「お…今回もなかなかいい出来かも…!」
メイクが終わった顔を小さいアーストンに向けると、「こえーっ!」って声を上げた。これでフードを目深にかぶっておけばいかにも蛮族出身ですって感じになる。
だけど時々、変わった人がいて、私みたいのに逆に興味を持つ人もいる。
仕事を求めて冒険者ギルドに寄ったある町でも、そういうのがいた。
それは、小さい女の子だった。小さいアーストンと同じくらいなのかな。でもボロボロの服を着てて、頭もぼさぼさで、ギラっとした目で睨み付けてくる子だった。野良子だ。親を亡くしたり捨てられたりして引き取りてもいない子が、物乞い等をしてるのをそう言う。
ある程度の大きさの町とかにはだいたいどこにもいる。ボーデン商会のあった町にもいた。数は少ないけど。
でも変に同情しても大体上手くはいかない。人間を信用しないから懐かなくて、暴れたり盗みを働いたりして結局は追い出すことになるっていうのがだいたいのパターンなんだって。




