良縁奇縁
「シェリーナさんはどんな冒険者になりたいんですか?」
夕食の時、ルビンはシェリーナにそんなことを訊いてた。私達のことは放っておいて。と言うか察してはいたんだけど明らかにシェリーナにそれを訊くための前振りだったけどね。
「私は、本当は物書きになりたいんだ。ずっと旅をしてきていろんな人から聞いた話をいつか本にしたい。でも、それはこれまで冒険者として旅をしてたから聞けた話だし、両親には感謝してるんだよ」
その話を耳にした途端、ルビンはパアっと顔を輝かせた。
「じゃあ、うちから本を出しませんか!? うちは印刷屋が本業なんです! シェリーナさんが書いたものを本にして出版することができます!」
前のめりになってそう言うルビンに、シェリーナは頬を染めていた。
「…やっぱ話がウマすぎる…信用できねー…」
ひそひそとトーマがライアーネに耳打ちする。でもライアーネはニッコニコだけど。
「そお? 良い話じゃない。それに出会いってこういうものでしょ? シェリーナは物書きになりたい。ルビンは本を作りたい。それに乗って何が問題? それともトーマは、自分の娘が信じられない? 娘の人を見る目を信じられない?
あの子もずっと旅を続けていろんな人間を見てきた。私達を騙そうとするロクでもないのも何人も見た。その上であの子がときめいた相手なのよ? 私はそれを信じる。
大丈夫よ。ルビンって、あなたと同じ目をしてる。私達家族を大切にしてくれたあなたとね」
「…ぐ……」
そう言われるとトーマも言葉もなかった。そしてさらにとどめを刺してくる。
「プリムラはどう思う? ルビンのこと」
そう訊かれて、シェリーナと話し込んでいるルビンを改めて見た。嘘を吐いてたり人を欺こうとする人間の顔つきじゃなかった。本気でシェリーナの本を出したいと言ってるんだと思った。
「…大丈夫だと思う……
人間は成長したら親とは別の生き方をすることも多いんでしょう? だったらこれはチャンスじゃないかな」
本を出したからってそれが必ず売れるとは限らない。だけどルビンの家は印刷業で冒険者ギルドの事務所で宿屋も経営してる。少なくとも生活に困ることはない。
何より、私と一緒にいることで狙われたりするんだ。私と離れてちゃんとした生活ができるんなら、その方がいいと思う。だから私はそんな風に言った。
トーマだってそれは分かってると思う。だから迷ってる。
シェリーナに言い寄る男の人は何人もいて、でもそれをことごとく追い払ってきた。みんなシェリーナをいやらしい目でしか見てなかったからだ。でもルビンは違うからね。




