受付け
「アーストンももう五歳か…」
シェリーナと一緒に歩く小さいアーストンを見ながら、トーマはそう呟いた。もうすっかりトーマの方が本当はアーストンだったことなんて忘れたみたいにトーマってことになってた。
「早いね。私達も歳を取る訳だ」
そう応えるライアーネも本当はレリエラだったのにな。二人とももう三十歳も半ばになって立派なオジサンとオバサンだ。
もちろん私は変わらないけどさ。だけど時間の流れは感じるな。四人がこうやって歳を取っていく訳だから。
シェリーナも十五歳になって精悍な感じになった。この旅が始まる前はゆるふわな女の子らしい女の子だったのが見る影もない。だけどなぜか女の子だっていうのは一目見ただけでも分かる。短い髪と男の人みたいな格好してるだけじゃ隠し切れないものがあるみたいだな。
つやつやでぽってりとした唇と大きな目と長い睫の所為かな。
だからか、よく男の人に言い寄られたりもする。でもその度に、
「ナンパな男はお呼びじゃない!」
って突っぱねるけどね。
でも私は知ってる。シェリーナは本当はお話をしたためるのが好きな女の子だってことを。旅の中でいろんな人から聞いたお話を基にしてお伽話を作って書くのが好きなんだ。
そういう面もあるんだよ。
ロマンティックな出会いみたいのを夢見てるところもあるんだよ。
そしてそれは、本当にロマンティックに始まったと思う。
ある国の冒険者ギルドに顔を出した時、そこの受付に座ってたのが、ルビンだった。ルビンは一目見て気弱そうだなって分かる男の人だった。それがどうして、ガサツな荒くれものが大半の冒険者ギルドなんかで働いているかって言ったら、そこが彼の家だからだった。
実はルビンの家は印刷屋なんだけど、それだけじゃ食べていけなくて祖父の代から冒険者ギルドの事務所も兼ねるようになって、今じゃ収入の半分がそれらしい。だからルビンも子供の頃から家業を手伝わされてる感じだって。
そんなルビンの家でもあるそこに、私達は仕事を求めて訪れていた。
で、シェリーナが代表して受付に行ったら、何故かルビンとお互いの顔を見詰め合ってしばらく固まっちゃって。
「なにやってんだ、シェリーナ」
トーマはそう言ったけど、ライアーネはピンと来たらしかった。
「そっかそっか、あの子もようやくなんだ」
一人で納得したみたいにうんうんと頷きながらそう言ってた。
一目惚れだった。お互いに。
大人しくてひ弱そうだけど理知的なルビンと、一見すると色気とかなさそうに見えるけど実は物語好きな優しいシェリーナという組み合わせだったんだって。




