南の国でバカンス
南の国を巡るのは、楽しかった。
そこでは住人達も楽天的で細かいことを気にせず、私が人間じゃないってことを怪しむ様子さえなかった。
森に入れば食べられる果実がたくさん実ってて、トーマとライアーネとシェリーナがそれを勝手に取って食べても誰も何も言わなかった。
そうやって食べるものがいくらでも手に入るからか、日がな一日のんびりしてる人も多かった。そういうところなんだろうな。
「いや~、こりゃまさに天国だな…」
「ホント~。こんなところにいたら怠け者になっちゃう~」
それが素直な気持ちだったと思う。
何だかんだと一ヶ月くらいそこで羽を伸ばして、でもさすがにそこまでになると逆に落ち着かなくなってきたみたいで、
「じゃあ、そろそろ行くか」
「そうね。いい加減、お尻に根が生えそうだし」
ってことで私達は少しずつ北上することになった。
のんびりしてる間にそこの人達ともそれなりに仲良くなって別れは惜しかったけど、「また来るね」って約束を交わして出発した。
そこにいる間に聞いた話では、何て言うか、王様とかお姫様とか自体が出てこなかった。ここらは、はっきりとした形の大きな国というものは作らずに、それぞれの集落がゆる~く繋がってるだけみたい。それはずっと昔からで、やっぱり私がこの辺りにいたことはないかなっていうのが分かってしまった。
いや、本当は最初から分かってたんだ。だって、私の名前になった言葉が使われてた国は、私達が元々いた辺りにあったことは確かなんだから。しばらく骨休めする為の言い訳に、取り敢えず南からってことにしただけで。
だいたいこの辺りは、魔法というものがあったという話さえないみたい。別にそんなものに頼らなくても生きていけるから必要なかったんだろうな。
途中、鈍った体を鍛え直す為に、畑を荒らす獣を退治する仕事とかもこなしつつ、旅を続ける。
そんな感じが二年ほど続いて、シェリーナも少し大きくなってしっかり話もできるようになっていた。
しかもナイフを手にして、小さな獣くらいなら一人で倒せるぐらいに逞しくなった。
「パパ! ママ! おそいよ!」
なんて言いながら小さな体でチョロチョローって走って小動物を捕まえてくる。
それをさばいて食事にして、川で水浴びをして体を洗った。そんな三人の様子を見てるだけで私は何だか気分が良かった。
たぶん、昔もそうだったんだろうな。
私は、人間達が楽しく暮らしてるのを見てるだけで満足してた気がする。お姫様が亡くなった後も、いろんな人のところを転々としながらそれを見てたんだ。
なのに、いつの頃からか、私はそうするのが嫌になってしまった。
どうしてだろう…? 私はどうして人間達を見てるのが嫌になってしまったんだろう……?




