流浪の旅へ
「ダメだ、どこも手が回ってる。この調子じゃ、俺達の家にも手が回ってるだろう」
ボーデン商会の社員の家を兵士が取り囲んでるのを見て、アーストンは悔しそうにそう言った。
「やっぱりもっと遠くの国まで逃げるべきだったのかしら…」
レリエラはそう言ったけど、
「いや、この調子じゃ他の大陸まで行かないと無理かもしれねえ。さすがにそんな得体のしれないところじゃ暮らしていけるかも分からねえし…」
と、アーストンは言った。
そんな二人に私は言わずにはいられなかった。
「ごめんね、私のせいで。シェリーナまで巻き込んでしまって…」
だけど二人は、
「バカヤロウ、そんなこと言うなよ。これは俺達が勝手にやったことだ」
「そうよ。人間の勝手に振り回されるあなたを私達が放っておけなかっただけ。ププリーヌはなにも悪くない!」
だって。
「ボーデンだって俺達と同じだ。お前に恩があって、だから力になりたいと思っただけだ。事情を知らない社員はいい迷惑だっただろうけど、あいつらは本当に何も知らないからな。色々訊かれるくらいで帰れるだろ」
ボーデン商会自体、割と際どい商品を扱ったりすることもあるから、社員達も実はただ単に真面目な人っていうばっかりじゃなくて、元盗賊とか敗残兵上がりとか、脛に傷持つ身って人ばっかりだった。だからこういうことには慣れてたりする。
こうして私達は、また、逃亡の旅をすることになったのだった。
でも、この時のことを補足しておくと、私を捕まえに来たのは確かだけど、ボーデン達を捕まえたのは実はただのポーズで、しっかり捜索したっていうのを北の方の大国の使者に見せる為だけのものだったらしい。だから私が逃げてしまったことでボーデン達には用もなくなり、その日のうちに釈放されたって。
とは言え、そのことを知らない私達は旅行者のふりをして、輸送馬車に便乗して国境近くまで行って、そこからは歩きで隣の国へと入った。密入国だけど、そんなのは別に珍しいことでもないから気にしない。
あちこちを旅してる間にアーストンとレリエラはすっかり冒険者としても一人前になっていて、このくらいのことはぜんぜん平気だった。
ただ、まだ小さいシェリーナには可哀想なことをしたかなとは思ったけど、シェリーナもさすがに二人の子供ということなのか、少し不安そうにしてたのも最初だけで、しばらくするとこの旅を楽しみ始めた様子もあった。
隣の国に入るとまず冒険者ギルドに顔を出して、冒険者として登録をした。
冒険者なんてそれこそ犯罪者とかの仮の姿だったりするから、いちいち素性を詮索されたりすることはなかったのだった。




