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もう少し自由になれればなと思いながらも、日常というのはこういうものなのだから仕方ないだろう。
住めば都というか、案外居心地は悪くないんだ。
「いらっしゃいませー」
今日も声が通ってる。閑散とした店内。
どうだろう。しかし最近いつも通りでありながら、それが少し変わってきているような気がする。
「いらっしゃいませー」
カゴの中のおかしやら飲み物を袋につめていく。足されていく金額。
視線の先にいるのは、やっぱりあの子だ。
「400円になります」
小銭を出す際中までも視線はこちらに向いている気がする。なんだか不思議な子だ。
「おつり600円になります」
つり銭を財布に入れながら、視線はまたこちらに戻る。
何かを言いたそうに口が開きかける。
「ありがとうございましたー。またお越し下さいませ」
後ろがつかえているのでそうもいかない。後ろの客の存在に慌ててその身をどける。
店を出る瞬間、彼女はもう一度こちらを振り返った。
――ひょっとして、まさかなー……。
少し心が浮ついている。
まさか、ここでこんな感覚に出会えるなんて、思ってもなかった。