(2)
「いらっしゃいませー」
ジーザスクライスト。いやウチ一応仏教なんですけど。
あまりの衝撃に仏よりキリストが出ちゃったっていうか、っていうかこういう場合やっぱオーマイガットとかジーザスとかの方が様になるじゃない。
おー、神様仏様南無阿弥陀仏じゃおかしいじゃないですか。いや、南無阿弥陀仏がそもそもおかしいか。
なんというか、とにかく、驚嘆、衝撃だったのだ。
恐怖よりも先にそれが来て、しっちゃかめっちゃかになって、気付いた時にはすっかりそれは恋になってたのだ。
――こんな素敵な人がこの世にいるなんて……!
「お客さん?」
「あっ、へあ、す、すません!」
脱兎のごとく駆け店を出る。
いけない。目が釘付けになっていた。目どころか心の臓まで釘ざしだった。
いつものコンビニ。でもこの前まであんな人いなかったのに。
デスティニー。
ついに訪れた伝説の一目惚れ。
しかしなんというダサいファーストインプレッション。
きょどってしまって口から漏れ出たファニーとは程遠い「へあ、すません」と万引き犯のようなダッシュ。呼吸が出来ん。
とこのように、私の運命の赤い糸はこんなにも身近にあったのでした。
もちろん自分の指先にそんなものは実際結びついてなどいないが、私にはしっかり見えております。彼が見えているのかどうかは分からないが。
そうして私の恋路は始まりました。