私達の恋路に支障はない
「ふっふふーん」
私はご機嫌だ。
人間やっぱり行動力だ。やったもん勝ちだ。やらなければ負けないが、一生勝つ事は出来ない。やるが正義だ。
「はーあ」
横にいる五郎ちゃんがため息をついているが、その後ろにいる彼の優しい視線がそんな事実を幸せでかき消して私を笑顔にし続ける。
「なんだかなー」
「どうしたの?」
「いや、慣れるもんなのかな、と思って」
「慣れるもんかな、じゃなくて。慣れて下さい」
「君達の為に?」
「そう、私達の為に」
「あーあー。こんなの誰が想像できるかよ」
五郎ちゃんが嘆く様がおもしろくて、笑ってしまう。
確かに、五郎ちゃんには少し、いや、本当はかなり申し訳ない状況ではあるのだが。
「一応形だけ見たら、恋は叶ったように見えるけどさ」
幽霊の彼に恋した私。私に恋した五郎ちゃん。そして、私の想いが通じた幽霊さん。
奇妙な三人の関係は、今おかしなバランスで成り立っている。
好きでいっしょに居たい私と幽霊さん。そして私と一緒にいたい五郎ちゃん。
こう見ると五郎ちゃんがのけ者扱いで邪魔者っぽく見えてしまうが、五郎ちゃんと一緒にいれない事は即ち幽霊さんとも一緒にいれないという事になる。
なので、結果私は五郎ちゃんと一緒にいたいという結論に達する。
話し合った結果、私達は一緒になる事にした。
私は相変わらず幽霊さんにお熱だったが、五郎ちゃんも結構素敵な人だという事が一緒にいるうちに分かってきて、私は自分の選択が案外悪くなかったんだと思えた。
五郎ちゃんから私への恋の矢印は実際お互いに向き合ってるわけじゃなくて、その事で五郎ちゃんは嘆いたりするけど、「幽霊なんかに負けてたまるか」と意気込む五郎ちゃんの存在は幽霊さんも油断できない存在かもしれない。
なんだか私、気付いたらすごい悪女になってる気がする。
それでもそれぞれがそれぞれの障壁を乗り越えた恋路の果てだ。
私は少なくとも、突っ走るつもりでいる。
『僕もだよ』
「あれ?」
「ん?」
空耳だろうか。声がした気がした。
私は驚いて、彼を見る。彼が微笑んでいた。
「今のって」
五郎ちゃんには彼が見えていない。声も聞こえない。
「うん」
「マジか」
五郎ちゃんは後ろを振り返る。
「おい、油断すんなよ幽霊。生きているってアドバンテージなめんなよ」
「五郎ちゃん、もうちょっと右向いて。そこ誰もいないから」
彼の声。
私にも五郎ちゃんにもその声が聞こえて、その姿が当たり前に見えだしたら、私達の関係性は、また何か変わっていくんだろうか。
でも、関係ないのかな。
続いていくだけだ。
きっと問題ない。
私達の恋路に、支障はない。




