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 ありがとう。本当に、嬉しいよ。

 僕の思い違いじゃなかった。彼女は、ちゃんと僕の事を見ていた。


 人生。いや、一度終わった人間が人生なんて表現はおかしいか。

 ひょんな事で憑りついた男の居心地がなかなかにはまって、この男と生活を共にするようになって、男のコンビニのバイトを後ろからずっと眺めていた。


 そんな時に君が現れた。

 君は、初めて会った瞬間、すごく驚いた様子だった。

 ああ、ごめん。怖かったんだろうな。

 最初はそう思ったけど、すぐにそれが違和感に変わった。

 僕の事を見る君の瞳に、怯えはないように思えた。それどころか、とても、熱っぽくさえ見えた。


 まさかな。


 でもそのまさかだったんだ。

 

 毎日のように、君は僕に会いに来た。僕に会いに来ているという事を理解してもらうために。

 あれだけ視線を合わせられれば、僕にとっては十分だった。

 

 自分が無念を残してこの世にいるかどうかも分からない。

 生きていた頃に波打った心は、霊体となってからは凪のように静かだった。

 そんな心が、再び波打った。


 恋だ。

 これは立派な恋だ。


 しかし、あまりにも隔てる壁の大きい恋。


 僕にはどうしようも出来なかった。

 それを知ってか、彼女から歩み寄ってくれた。


 僕に何が出来るだろう。

 分からない。

 でも、彼女を想う気持ちは、とめようがない。


 人間と幽霊。

 知った事か。


 僕の恋路に、そんなものは支障にならない。

 彼女が求めるなら、僕は全力で答えよう。


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