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秒針おせーよ。早くしてよ。
いや時間のせいではないのだろうけど。
時刻は夜の8時を廻っていた。寒い。とても丁寧に夜の外は寒い。いくら私の恋が激熱のファイアープロミネンスだとしてもこの寒さは防げない。
お願い。早く来て。しかし、残酷な可能性もありえる。来ないかもしれないという可能性。想像したくない未来。
言葉は交わせなかった。視線だけだった。でもそこには、幸せな未来を予感させる何かかを感じた。気がした。
全ては私の勘違いかもしれない。でもあの目は、きっと嘘じゃない。
信じよう。
私が今、この時間に出来る事はそれだけだ。
向こうの方から小さな灯が見えた。ぶううんとという音と共に、光が近付いてくる。
そして光が、公園の入り口でとまった。バイクだ。一台のバイクが止まった。
誰かが降りた。人影。人影は公園内に歩み入る。
だんだんと近付いてくる。
待っていた瞬間。
寒空の下、待ち続けたこの瞬間。
私はベンチから立ち上がった。
「遅くなってごめん」
頭を下げる彼に、私は同じように頭を下げた。
多分、もう一度下げないといけないけど。




