(11)
「りょうくん、ごめん」
「え、なにが?」
「俺、先行ってるわ」
「は? 何? 何言ってるの?」
「本命チョコが、俺を待ってる」
「ごっちん、とりあえずキモイぞ」
彼女が残した紙を何度も見る。
“あすなろ公園で待ってます。来るまで待ってます”
くそ。早く終われバイト。こんなにも終わりが待ち遠しいのは初めてだ。
バイトが終わるのが夜の8時。
しかし一体彼女何時まで待つつもりだ。遅くなる事を彼女は分かっているのだろうか。
一分たりとも待たせたくない。
毎日のように訪れる彼女。そしてあの熱を帯びた視線。
あんな可憐な高校生に見つめられちゃ、どんな男だってイチコロだろう。それを証拠に俺は見事にコロコロしてる。一度意識してからは坂を転げ落ちるように恋に飲まれた。
寝ても覚めても彼女だ。あれほど言い慣れたいらっしゃいませが震えてとまらなかった。
恋は俺の業務に支障をきたしていた。
犯罪者確定。
高校生の彼女。やばいでしょ。でもこんな夢を叶えられる大学生がどれだけいる。
いた。ここにいた。
俺という至高の存在が。
恋は確変に入っている。
今日は2月14日。
当たりだ。とめどなく当たりだ。その後もリールが回り続ける永遠の確変への道しるべ。
障壁? 障害?
知るか。年齢の壁などしれている。
俺は、この恋路を進んでやる。




