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「うおっぷ!?」


 思わず変な声が出た。声帯という正規のルートを通ったとは思えない声。

 でも仕方ない。だってウチのメルメル(柴犬)を夜散歩させてたら彼がいたんだもの。

 うっそ、マジで。まさかまさかのご近所なの?


 これは、きている。

 うん、私の恋きてる気がする。


 そしてそろそろと適切な距離をとりながら彼の背後をおいかける私。

 はい、犯罪者。事案浮上。マジきもい私。恋ってこんなに人を気持ち悪くするの?

 恋煩いだなんてよく言ったものだ。完全に病気だ。

 それでも彼の背中を追う事を止めない私。だって病気だから。もうノーマルじゃないから私。


 そして無事彼が自宅と思われるマンションに姿を消すまでバレることなく尾行は終了。

 気付けばかなりの距離を歩いており、帰るのに30分以上かかった。

っていうか彼は何してんだろう。もくもくと歩いていたからウォーキングだろうか。そんな必要があるとは思えないんだが、まあいい。


 よし。地道な私の工作はもうそろそろ終わりにしよう。

 ダイレクトアタック。もう決めてやる。待っていても彼は来ない。私からいくしかない。


 

 

「いらっ……!……っしゃせー」


 よし、いる。そして店内に客は……いない。タイミング。このタイミングを逃す訳には。

 うげっ。うおぅ。吐きそう。バーストしそう。でもこれは始まり。きっかけ。でも終わりのきっかけになるかも。

 ああーもう何度も覚悟してきたはずなのに。身体が震えやがる。

 くそー、もうやけだ。やけっぱちだ。やけっぱちの勢いを借りよう。いくしかない。

 行くも地獄。逃げるも地獄。ならば私は行く方の地獄だ。せめてそっちの地獄。

 いや地獄に堕ちる気なんてさらさらないですが。


 そして私は彼の前に立った。


「お客様、ど、どうかされましたか?」


 どうかはしている。どうかしかしていない。だからこうしているのだ。少し黙っててくれ。


「待ってますから!」


 ばちーん!

 私はレジに一枚の紙を叩きつけ、颯爽と店を去った。


 どうにでもなれ! そして叶え私の恋!


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