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ときめきと言いますかきらめきと言いますか、電流が走るっていうんでしょうかね。
そんな感覚味わった事などもちろんなく、というかそんなものあるわけないと出会う今の今まで思っていたんですけど、どうにもこうにもそいつは間違いだったようで。
経験不足、ってやつですかね。
だってまあ、まだ高校生だし。知らない事の方が多いわけですし。
「やっぱシュウト君?」
「いやいや、ミサキ君でしょ」
「ドウジマ君も結構ありじゃない」
マイフレンド達が上げ連ねる多種多様な我が校のイケメン達の事など、私にとってはどうでもよすぎて空気にもなり得ないメンツだ。しかし、至って彼女達は彼らについて真面目で真っ直ぐに、思い思いの恋心とまではいかずともときめきを持って話しながらお互いをけん制している。それを鼻で笑う事はしない。彼女達がライバルにならないとは限らないのだから。
「みっちょんどう思う? やっぱシュウト君が一番っしょ?」
別にバレンタインが近いからとか関係なく、あけみの口からは一にシュウト、二にシュウト、三四もコミコミ五もシュウトというほどにシュウト君だ。
ちなみにあけみはシュウト君の彼女でもなんでもない。遠目で見守る一ファンに過ぎない。まあこの熱気で近寄った所でシュウト君にとっては迷惑以外の何者でないだろうというのはあけみ以外の私達の総意であり、決して本人に告げてはならない真実だ。
「いやー、悪くないと思うけど」
半笑いで言ったのは少しまずいとも思ったが、自然とそうなったのだから仕方がない。
「おやや?」
ミサキ君推しのちみーが目を細めて私を見る。
私にとっては、シュウト君やらミサキ君やらなんかサッカーやってそうな名前の男子なんて比べ物にならない存在が、頭の中の一部分を支配して離さないのだ。
笑ってしまうのも無理ないってもんだ
「みっちょん、隠し事はなしだよ」
出た出たちみー。君はいつもそうだね。誰よりも隠し事を嫌う癖に、誰よりも隠し事をしちゃってる所。そのちぐはぐな所が人間っぽくてかわいいんだよなー。
「隠すつもりはないよ。でも」
「でも?」
私は隠してなんてない。
「分かんないの。どこの誰とか名前とか」
「ナニソレ?」
そんな事言われても私は隠してもないし嘘もついてない。
「ひとめぼれってやつが来ちゃったみたいなんだなー」