表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30の魔法使い  作者: 圧縮
本編
67/83

開戦前日

開戦前日


〜〜〜〜〜


「敵襲!数およそ50!」

「2個小隊で対応させろ!まだ戦端を開くきっかけ、大規模戦闘へのきっかけを与えてはならん!何としても小競り合いで終わらせろ!」

 同数くらいの戦いになれば、怪我人が増える一方になる。戦闘を簡単に終わらせるためには少数を大多数で囲めば怪我人など出ないで終わらすことも出来る。だが、まだこちらの部隊が整っていない。第一、要になる予定のダグラス達がまだ到着していない。そんな中、なし崩し的に大規模戦闘へと移行してしまうと、対人集団戦に慣れてない我が国の兵士は戦線を維持するのが難しいかもしれない。各部隊長は兵の運用がそこそこ上手い者を引き連れてきてはいる。一人は勇猛果敢で士気を高めるのが上手い、一人は流動的な戦術が上手いが、少し頼りない。もう一人は負けない事には右に出るものが居ない。だが、全体の連携としてどう動けるかが問題だ。大人数での戦闘はそう簡単に戦術を変更することが出来ない。隊列変更でさえ、かなりの時間がかかる。戦闘中にそんな器用なことが出来るはずがない。兵士の消耗や兵站の損耗、士気への影響を考えると、大規模戦闘は1回で終わりにしたい。どっちにしても、この後オルティガーラの城壁を越えて攻め込まなければならないのだ。こんな所で消耗して居られない。

 それに、兵站が長いのがこちらの不利な点だ。まだ1ヶ月は持たせることが出来る計算にはなるが、新鮮な野菜等が無いと、体調を崩す可能性もある。隣の町リスィから逐次輸送部隊により、物資は送られてきているが、国費を投じて行う戦争だ。貴族からの寄付もあることはあるが、余り長く続けば国王様の力を削ぎかねない。その為には、早めにオルティガーラを攻め落とす必要が出てくる。全てが上手く行けばいいのだが……。

 更には国王陛下からより大きな任務も受けている。それを考えると頭が、そして胃も痛くなる。

「現在怪我人はどのくらい居る?戦線復帰できそうにない者と、復帰できるものに分けて報告頼む」

 副官にその様に指示し、調査に行かせる。軍議は基本終わらせてあるが、足りないもの、やり忘れたことが無いか等、不安が押し寄せる。何もない時間で一人で居ると色々と考えすぎてしまい、苦しくなってくる。ひどい言い方になるが、何かに対応している時間であれば、痛みも忘れ没頭できるので、小競り合い等が起きている方が自分にとっては多少楽な時間になる。

 昔は良かった。バカな連中とバカなことばかりやって笑えていた。今はどうか?好きでもない社交界で爺さん婆さん達のご機嫌取り。バカな貴族達との心理戦。自慢合戦。小さい頃から知っている世界であったが、外の気楽な世界が羨ましく思う。シルヴィアさんはこの様な世界でも一人輝いて見えた俺の憧れの人だ。バカなものをバカと言う勇気と実行力があり、嫌がらせも正面から跳ね除ける力があった。だから、地方に飛ばされたと噂する者も多い。だが、実際は面倒くさいので出ていったが近いだろう。エステファンさんも良い人なので、本当に引かれ合ったのかもしれない。だが、俺は長く続いた家を継ぐために戻らなくてはならなかった。このゴミのような世界に。

 運良くか運悪くか、国王様以下の王族の人たちには何故か好かれていた。第3王子とはよく食事をする。第1王子は普段から剣の稽古相手だ。王も王妃も何故か俺を好いてくれている。おかげでこのゴミの世界でも生き残っているようなものだ。いや、もう一人大切な人を忘れていたな。その人達のおかげで、この様な司令官を任じられてしまった。本当に運が良いのか、悪いのか……。

「司令官!怪我人について報告致します!」

 昔のことについて思いを馳せ、ストレスから逃げることが出来ていた状況から一気に現実に引き戻される。

「報告頼む」

「はっ!現在、怪我人、戦線復帰出来ない者は約40名、復帰できる者は247名。そしては死者10名です。」

「小競り合いは今回で何回目になる?」

「はっ!12回目です」

「そうか、ご苦労」

「はっ!」

 怪我人だけで言えば、1回の戦闘で約半数怪我人を出している計算になる。小規模戦闘での小競り合いの悪い点なのだろうか。それとも相手の兵士に比べてこちらの兵士の質が悪いのだろうか。冒険者に比べて1対1の戦闘はやはり足りないと言わざるを得ないとは思っている。だが、集団戦ならまだ強いはずだ。だが、敵国の兵士はかなり訓練されているようだ。対魔獣戦闘を想定していた我軍と違い、対人戦闘を基本にしていたのだろうか。人を傷つけることを躊躇していない。そこがこの数字に現れているのだろう。

 こんなに頭を、そして胃を痛むような事になるとは、少し王様の事を恨みたくなってきた。褒美も今の俺に欲しいものは特に無い。名誉はもう十分。金や女も特に今は必要としていない。強いて言えば、自由が欲しいが、国のことを考えるとあのバカ貴族どもに任せるわけにもいかない。なんて不自由な身になったものだ……。


「報告致します!ダグラス様以下248名、ただ今本陣に到着いたしました!」

「おお!間に合ったか!到着して直ぐに悪いが、ダグラスと、もう一人、いや、一つのパーティーを連れてきてくれ」

「はっ!例の方たちですね?」

「そうだ、本当はダグラスともう一人で良いんだが、俺の好奇心でな」

「職権乱用ですね」

「固いこと言うな。頼むぞ」

「はっ!直ちにお伝えしてきます!」

 そう伝えると副官は自分で走って行ってしまった。それは伝令で良いだろうと言いたかったのだが、あの副官はダグラスに心酔している。あの戦闘以外からっきしのバカなダグラスに。まあ、グロリアが入れ知恵をするようになってから多少は仮面をかぶることが出来るようになった。今はそこそこ良い噂を聞く。まだ仮面の裏が見えていないだけなのだろう。いや、意外と本人はバレてないと思ってるが、既に近い人たちには周知の事実かもしれない。それだと面白いなと思っていると、天幕から数人入ってきた。

「よう、フミト。元気か?」

 別れて以来数回しか会えてない友人に声をかけた。


 〜〜〜〜〜


「アルド!?どうしてここに?!」

 懐かしい顔を見て、そして声を聞いた瞬間思わずそう口走ってしまった。意外性があったものだったが、冷静になれば可能性は低くはなかったのだが。

「そら、俺様が司令官様だからだ」

「司令官ね、あんなに嫌がってた貴族様をよくやるようになったな」

 名前を隠して冒険者をしていた時期があり、その時にさんざん愚痴を言われた俺としては、少し意外ではあった。だが、別れの時の決意の言葉は今でも思い出せる。

「仕方がないだろう、家を継がなければ困る人が大勢出るんだ」

「そんなに優しかったかねえ?」

「俺は元々優しい性格だろう?」

「セリアのおかげじゃないのか?」

「昔を知ってる奴ってだから嫌いだよ」

「褒めてくれてありがとう」

 そう言うとお互いに腹に一発拳を入れる。だが、アルドは本当に優しい。非常に腹立たしい相手でも、魔獣に襲われていたら簡単に助けてしまう。切り捨てる事を知らないと貴族ではやっていけないという事がわかっていながらその道に戻っていった。それは先にも言った言葉、家を継がなければ困る人が出てくる。これに関しては本心だろう。茶化したのは普段通りの挨拶。

「相変わらず仲がいいな。お前らは」

「よう、ダグラス。あれ?グロリアは?」

 周りを見渡しながらアルドは一人足りないことを見て疑問を口にする。

「も……申し訳け……」

 副官がアルドしか目に入っていなかったのか、もう一人居る可能性を忘れ、ダグラスだけを連れてきてしまったのかと青い顔してお詫びをし始めた。

 少し気の毒に思ったので、ダグラスを茶化しながら彼の謝罪を遮ってアルドに話した。

「あー、アルド。それについては面白い告白があるから聞いてくれよ」

「面白い告白?なんだそれ?」

 興味津々な顔して聞いてくるので素直に答えようとしたが、ダグラスが真っ赤な顔して俺のことを抑制してきた。

「俺から話す。フミトは自分の配偶者5人の自己紹介でも考えてろ!」

「なっ……!」

 意地悪してやろうかと思ってた所、やり返されてしまった。やばい!アルドの目が俺の方にも興味津々な目を向けてきやがった!

「まずはダグラスの方から教えてくれ。フミトは後のお楽しみに」

 なんてこった!お付き合いしている女性と言う事を遥かにふっ飛ばした関係とされてしまう!いや、普通に冒険者仲間といえばいいだけなのだろうが、邪推してくるアルドの事だから信用してくれまい……。

 色々と考えていると、意を決したのか、ダグラスが話し始めた。

「あのな……、グロリアは……アイガーに置いてきた」

「ふむふむ。で、その理由は?」

 当然だろう。それだけで納得するアルドではない。というか、俺でさえ説得出来なかっただろ、それだけじゃ。

 何か知っているのか、それとも察したのか、ニマニマと笑いながらアルドはダグラスからの返答を待っている。さすがに友人だけあって、真綿を絞めるような方法での尋問はしてこない。本来なら、もっと煽るような、嫌がらせのような質問が飛んでくるだろう。まあ、そんな事をやってダグラスがこれからの事をボイコットしても問題だ。悪い方向にしか行かないことがわかっているからこれだけの質問にしているのだろう。

「……その……彼女の腹にな……子供ができたんだ……よ……」

 耳まで真っ赤にしながらダグラスは告白した。羞恥心の限界点からか、体が震え始めている。

「そうか!ようやくか!おめでとう!」

 予想が出来ていたのか、驚きは大きくはなかった。だが、友人の子供が出来るという事は嬉しいことだ。大きく手を広げ、抱擁しながらダグラスのことを褒めていた。

 男に抱きつかれたダグラスだったが、やはり祝の言葉が嬉しかったようではにかんでいた。

「しかし、嬉しいことなのだが、一つ戦略変更しなきゃならないな」

「ん?ひょっとしたら、オルティガーラ戦でか?」

「フミトも考えていたか。彼女に一つくらい詰所か、何処か落としてもらおうと思っていたからな」

「やっぱりね。俺もそれを想定していたよ。まあ、何とか出来るだろう?」

「そうだな。フミト達の仕事が増えるだけだもんな」

「何?!」

「想像してなかったとは言わないぞ?」

 ここまでの行軍中暇な時は、オルティガーラの要所が何処にあるかを思い出していた。それに、ケイトウから出発した後はダグラスにも相談していた。考えていなかったとはいえない。だが、俺が直接やるとは考えたくはなかった。

「まあ、内部の人間と連絡がとれているからな。フミトに来て欲しいって言われてるんだよ」

「なに?!内部と連絡取れているのか!?街の中はどんな状況なんだ?!」

 内部と連絡がとれているという事にかなり驚いていた。占領下、しかも城壁に囲まれた街の中に居る人達と連絡がとれている。どうやって連絡をとっているのかわからなかったが、かなり驚いてしまった。

「ああ、結構ひどい状況だよ。昔狂った貴族が土地の住人を虐殺しまくった時があっただろう?それに近い状態と、追加で女性への乱暴が追加されたところだ」

 人を人と思わない、物や道具、そしておもちゃの様に扱われて殺されていく。死んだ後も弄ばれる。この様な行為が行われている事が容易に想像できた。

「何故だ?碧玉の国には行ったことがないが、そんなひどい人達では無かっただろう?」

 俺の知っている人達、桜の従者達や、それ以前に出会っている冒険者や行き来を許可された商人達を思い出す。とてもそんな行為をするような人達では無かった。俺の見る目が無かったと言われればそれまでかもしれないが。

「牢所の近い北門側は酷いそうだが、南門側にはそこまで酷い被害は無いと報告を受けている。これから察するに行なっているのは一部の兵士だけじゃないかと思っている」

「つまり、一部のぶっ壊れた集団がいるが、他の人達は全く問題ない普通の人達と言う事か?」

 いい人も居るんだ、配慮してくれと言われたような気がして思わず声を荒げてしまう。

「そこまでは言わないが、それに近いのではないかと思っている。南門で被害が少ないと想定したのには、住人が敵軍兵士から助けられている。その時に早く隠れろと言われたと証言がある」

「狂った相手との戦いは大変だが、気は楽だ。だが、良い人相手の戦いとなると、辛いものがあるな」

 実際、敵兵士から助けられている人々が居る。この様な人達は本来戦争等やりたくもなかった人達かもしれない。だが、出会った瞬間殺しあわなければならない。そう考えると殺したくない。だが殺さなくてはならないと言う葛藤が生まれ、精神的にキツイ状況になってしまう。

「だが、国を守るというのはそういうことだ。狂人だろうが、善人だろうが、国の住人に被害を与えるのは敵だ。守らなければならない」

 アルドの意見は至極まともな意見だ。ひょっとしたら狂人は一部ではあるが、相手国にも必要に迫られた正義というものがあるのかもしれない。

「冒険者で良かったとつくづく思うよ。この戦争に関してはもう腹をくくっているが、常にそれを考え続けろって言われても俺には無理だ。アルドはすげーよ」

 本当にそう思う。自分のこと、自分の身の回りのことだけで精一杯だからだ。

「バカなこと言うな。俺だってやりたくはねーよ。だが、久しぶりに社交界に戻ってみると普通のバカだった奴らがよりバカに見えて、普通のやつもバカだったと気付かされたよ。よくあんなので国が運営できているとな。利権争い、どれだけ住人から搾り取るか等、そればかり考えている連中だ。よく国王様はブチ切れないものだと感心してるよ」

 反吐が出ると言う言葉があるが、本当に出しそうな勢いで俺達に話す。

「苦労してるんだな……。って、そういえば、セリアはどうした?一緒じゃないのか?」

 ふと、彼に付いて行ったもう一人の仲間のことを思い出す。

「あいつは今は社交界に出ている」

「社交界?貴族共の遊びになんで出てるんだよ?」

「おいおい、フミト、社交界では政治に関する相談や決め事、他にも商談とかが結構行われてるぞ」

「へー……、てっきりおっさん達が女の子口説く場所だとばかり思ってたよ」

「……まあ、裏のメインはそれなんだがな……」

「やっぱり遊び場じゃねーか」

「まあ、そう言うな。彼女は色々な場所の会場をめぐって情報収集してもらってるんだ」

「何の情報だ?」

 何処の奥様が不倫しているとか茶化そうかと思ったが、アルドの目が真剣になっていたので茶化すことをやめた。

「今回のオルティガーラ占領は、国内の貴族が手引きしたのではないかとな」

「なんだとっ?!」

 この告白に関して、俺以外の全員も声を上げ驚いている。

「なるほどな……。それで彼女を使うのか」

 俺とダグラスは大きくうなずき納得する。だが、他の5人はもっと色々と聞くことがあるだろう!って表情をしているが、そこでふと気づく。彼女のことを説明してないなと。

「ああ、ごめん。セリアは、俺達の元パーティーメンバーで、今はアルドの嫁だ。アルドがまだ家を継いで居ないが、周知の事実で侯爵夫人と呼ばれてるよ」

「え……?アルド様は、侯爵様でいらっしゃるのですか……?」

 ナイアが若干固まりつつ質問をする。こういう固まっている時にしっかりと受け答えが出来るのはナイアだけなのだろうかと思う。ひょっとしたら暗黙の了解で役割が決まっているのかな?

「ああ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。私の名はアルベルド=ハッカウゼン。病気療養中の父に変わり、ハッカウゼン家の名代を努めております」

 やたらと丁寧な自己紹介をする。普段のアイツを知っている俺とダグラスは白い目でアルドの事を見ていた。

「ハッカウゼン!?3侯爵家の一つではないですか!?」

 だが、ナイアや他の4人には爵位と家名で驚き、さらに慌てふためいていた。

 この国でも5爵があり、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵となっているのだが、公爵に関しては王族のみに与えられる称号であり、一般では侯爵が最高位となる。土地も多くないので、高い爵位は余り乱立されていないのが現状だ。だが、男爵号はそこそこ多く、村長クラスや商会の会頭クラスでも稀に男爵号を持っていたりする。

 5人が家の名前を聞いて取り乱している要因の一つは、王都は王家の直轄地で、他にも幾つか直轄地を持つが、ハッカウゼン家は王都に継ぐ大きな街、トリグラウを統括管理している家であるためだ。魔獣の森から王都、そして王家を守る盾として、何かあった場合の鉾としての役割を持っているため、3侯爵として位は一緒であるが、一つ頭を抜きん出ている家である。そんな家になんでこんな放蕩息子が生まれたのかが凄い不思議ではあるのだが。

「たまたま役割を背負っているだけで、私自身はそれほど偉いわけではありません。そこまで怯えてしまうとこちらが恐縮してしまいます」

「は……はい!」

 まあ、貴族と言っても普通は男爵くらいしか見ることが出来ない。稀に子爵を見かける。極稀に土地や街の統括者である伯爵の話を又聞きする。そんな一般庶民に、更に上の侯爵が目の前で話をしている。さすがに驚くのだろう。だが、俺とダグラスはいい加減その話し方にイラツキの限界が越え、二人してアルドの頭を殴る。

「いってー!何すんだ!この馬鹿二人!」

「アルドの話し方がキモい!」

「さすがに気持ち悪い!」

「うるせー!初対面に、しかも女性には丁寧に行くのは当たり前だろう!」

「アルド、バカだろう?俺とダグラスとの会話を聞いてれば突然態度を変えて話しても気持ち悪いって印象しか残らんぞ」

「なにっ!?」

「今気づいたって顔をするなよ。俺もフミトの言うとおりだと思うぞ」

 この様なバカなやり取りをしている間にどうやら緊張が溶けてきたようで、5人から軽く笑いが起きる。

「そう言えばフミト、忘れてたんだが、彼女らの紹介をお願いできないか?」

 他のことに気を取られていて何も考えていなかったので、慌てて考える。そして、端から名前、職業、出身等を適度に交え簡単に紹介する。レンティだけは追加で自分から付け加えていた。実家の商会や、何か良い商売先が無いか等、自己紹介と言うより、商売に来ているかのように……。我ながら無難に終えたと思った辺りで今まで二人をいじっていた逆襲が来る。

「で、誰と付き合うの?」

「ちょっ!なにいってんの!?」

「なに?5人全員とか?」

「まて!何の話だ!」

 くそう!既に二人は結婚済みだから余裕を持っていやがる!ニヤニヤしながら質問してくるんじゃねぇ!

 結局しばらく、俺はいじられ続ける事になり、かなり憔悴してしまった。5人も俺がいじられている様子を笑いながら聞いていたので、完全に緊張が溶け、アルドとダグラス達と色々と言いたい事を言い合っていた。

「そろそろ勘弁してください……」

「やべえ、フミトがマジ泣きしそうだ」

「涙は出ねーけど、心は大泣きしてるよ……」

「ちょっとやりすぎたようだな」

「ごめんなさい……」

 と、全員から謝罪が来る……のだが、何故全員若干笑ってるの?確かに、アルドから聞いた俺の失敗談は面白かったみたいだよね?でも、失礼でしょっ!等いうと話が蒸し返しそうなので、そのまま受け入れることに。本当に涙が出そうだ……。


 一通り雑談していると、副官から声がかかる。

「あの……ハッカウゼン閣下、軍議の内容をお伝えしませんと……」

「おお!忘れてた!」

 おいおい、大切なこと忘れてるじゃないか……。と言っても、俺も完全に失念していたんだけどね。

「全体で約4000名、これを5部隊に分ける。右翼、中央、左翼、本陣と別れ、部隊の運用は各部隊長に一任している。右翼を前進させた斜線陣で対応するつもりだ。右翼が前なのは、左翼側が若干こちらに向かい下り坂になっているためだ。人数配分は右翼1000、中央1000、左翼1000、本陣を500、兵站部隊で250。残りの250は全て騎馬部隊で、200を各隊の伝令部隊に、50を索敵等の部隊にする予定だ。兵種の割合だが、槍兵、剣兵、弓兵が各々2対2対1くらいだな」

「そして、ダグラス、君には冒険者を全て率いて戦ってくれ。こちらで連れてきた冒険者は140名、かなり少ないが、合わせれば約400ほどになる。この部隊が今回の作戦のキーになるだろう。心してくれ」

 普通の貴族様や騎士達が冒険者を統括できるかと言えば出来るだろう。だが、士気を維持しながら運用することが出来るかと言えば、ならず者の心を知っている者の方が良いだろう。そういう点であれば、俺も英雄と崇拝されているダグラスが隊長を務めるのには賛成する。

 そして、全体的な戦術を伝えた後、アルドは少しぼやき始めた。

「部隊運用が上手く行ってないんだよな。大型魔獣対策だと、各武器ごとにまとめるのがセオリーだけど、ここまでの大人数だと、上手く行かないよな」

「だろうな。騎馬隊を伝令部隊としたのはその運用面でか?」

「おう。一つの命令が届くのがかなり遅いからな。伝達速度と敵兵に追い込まれても逃げられるような馬術と胆力を持っている者たちじゃ無いとダメだろうと思って騎馬隊を伝令部隊にしたんだ。まあ、全体で250騎しか居ないので、敵1部隊の約1000人を突破するには少々突破力が足りない。途中で行動限界点が来て潰される可能性があるから分散したというのもあるがな」

「なるほどな」

 どうすれば運用が楽になるかと考え始めた所でレンティから提案が来る。

「剣兵を護ることを優先にして盾兵となり、直ぐ後ろで槍兵が攻撃すると言う形ではどうでしょうか。それを盾・槍・弓を同じ比率で約250人を集団として頭を作り、その統括者を部隊長に」

「ほう。その利点はどんなことかい?」

「リーアとノンナさんの組み合わせを見ていると、リーアが盾で防いでいる間にノンナさんが攻撃を入れる形をよく見ていました。相手は魔獣でしたけど、攻撃が全部リーアに向かって、ノンナさんは標的にされず、自由に攻撃できていたので、被害は受けづらいのではないかと思います」

「なるほどな。だが、そうなると攻撃する手が減るので、不利な状況になりやすいのではないか?」

「あ……そうかもしれません……」

 せっかくの意見を言った所だが、悪い点を指摘され意気消沈してしまったレンティ。だが、俺はとても嬉しかった。その理由は常日頃言っている、生きて帰る。これを基本にして考えられていることだったからだ。後で褒めてあげようかな。

「でも、その案貰った」

「え?」

「聞こえたな、今直ぐに部隊長と共に相談し、各部隊に中隊長4人作れ。そして部隊の再編成を急いでやらせろ。そして、各伝令隊には中隊長と顔合わせをさせておけ」

「はっ!了解いたしました!」

 副官はその命令を即実行に移し、天幕から出ていってしまった。

 レンティはダメと思われた意見をあっさりと受け入れられ、呆けてしまっていた。正直、俺もダメと思っていた所なのに、いきなり逆転。さすがに驚いた。

「アルド、良いのか?」

「まあ、俺にも思うところがあるのよ。それに攻めたい時は盾持ちも普通に攻撃すれば良いだけだからな」

 多分、単純にレンティの言ったことを忠実に再現するだけじゃないんだろうとは思う。俺達の居ない所での軍議で悩み、その結論が今回のレンティから出た案にあったのかもしれない。

「それと、フミト。2つお願いができたんだが良いか?」

「内容によっては」

「それじゃ一つ目。ノンナ、彼女を伝令隊に入れても良いか?」

「ノンナ、どうする?」

「いいっすよー」

「と、言う事だ」

「随分軽いな。でも助かる。人数が少ないから馬持ちは非常に有難い。この後伝令隊に連れていくから少し待っていてくれ」

「はーい」

 シザーリオを連れてきたことが良かったのか、ノンナは伝令隊に配属されることになった。冒険者上がりではあるが、俺の知る伝令隊は気さくな人ばかりなので大丈夫だろう。

「2つ目なんだが、レンティ、彼女を本陣に置いても良いか?」

「え?」

 ちょっと予想外な事を言われ、戸惑ってしまう。自己紹介の時に新人冒険者と言ったような記憶があるのだが、全く理由がわからなかった。

「レンティ、どうする?」

「私でお役に立てるのであれば」

「そうか、ありがとう。俺の参謀として居てもらいたい。多分、彼女なら俺の身分を考えずに意見してくれるんじゃないかと思ってね」

 そういう所なら納得できそうだ。結構ズバズバ言ってくるからな、レンティは。

 などと一人で納得していると、ダグラスからも声がかかった。

「フミト、一緒の部隊ではあるが、彼女たち二人を使わせてもらいたい」

「へ?」

「ティアさん、ナイアさんの二人が多分今回の重要な力になると思うんだ」

 何?ティアとナイアが?何を言っているんだ?と頭をかしげていると、理解していない俺を察して言葉を続けた。

「ああ、俺の側にいてもらうというわけではなく、やってほしいことがあるって程度だ」

「それなら大丈夫だと思う。何させるんだ?」

「それは後で説明する。なに、ちょっと守ってもらうだけさ」


 〜〜〜〜〜


「オットー隊長、準備が整いました」

「ご苦労、本国からの第3陣は到着したのか?」

「現在国境付近で展開しているとのことです」

「何をそんな悠長なことをしている。さっさと動かせばいいのに。まあ良い。とりあえずは目の前だ」

「いかが致しますか?」

「明日早朝をもって進撃する。あいつらなんぞさっさと駆逐してしまえ」

「はっ!了解いたしました!」

 副官はその命令を伝令に伝えるために天幕から出ていく。

「しかし、あいつが来なくてよかったわ。この戦いであの敵を突破すればワシの功績は一気に伸びる。明日が楽しみよの……」

 天幕の中から薄気味悪い笑い声がしばらく続いていた。



戦争描写に関して1ヶ月ほど悩んでいます。本当にこれでいいのか、この書き方でわかるか、流れはおかしくないか等、色々と悩んでいます。好き勝手書けばいいじゃないと思われるかもしれませんが、あまりにも適当に書きすぎて前後がおかしくなったり、頭痛が痛いみたいな意味不明な形にしたくないので。大変申し訳無いのですが、納得できなければ最悪来週は更新出来ないかもしれません。出来るだけ頑張ってみますが、万が一の時は活動報告にて連絡させて頂きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ