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30の魔法使い  作者: 圧縮
本編
64/83

占領

占領


 〜〜〜〜〜


 石畳の廊下に幾つもの足音が響く。やや早歩きに近い。その一行は行き先を把握しているのか、道を間違えずに進む。

 鎧の金属が擦れ、当たる音が足音に混ざる。その擦れた音以外にも、遠くで金属と金属がぶつかり合う音がかすかに聞こえる。

「おらぁぁあ!」

 その一行が十字路を曲がろうとしたところで、突如切りかかってくる者が居た。

「はっ!」

 だが、その切りかかってきた男は上段に構えた武器を振り下ろすこと無く喉元を剣で貫かれ、絶命する。

 一行は命を落とした男に対し、なんの感情もなくそのまま歩き続ける。目的を完遂するためだ。

 幾つかの通路を通り、幾つもの部屋を通り過ぎ、ようやく目的の場所へとたどり着いた。

 そこには、頑丈な鉄で補強された扉があり、大きな錠前も外側からかけられていた。一行の一人がその錠前に鍵を差し込み回すとカチリと音をたて錠前が外れる。

 一行は中を確認するまでもなく一斉に入り中に居る人物を探した。石造りの狭い部屋。窓もひとつ小さな物があるが、格子が嵌めこんであり、とても快適とは言いがたい部屋だった。その為、すぐ目的の人物を見つけた。

「お迎えに上がりました」

 ゴザのような物の上で裸で寝ていた人物に対し、膝をつき丁寧な口調で話す。

「オテロか。ご苦労。今どんな状況だ?」

「はっ!只今潜入部隊は各所に展開しております。市政庁舎には1個小隊、西城門確保のために2個小隊、物見の塔確保に4個分隊、冒険者ギルドに1個小隊、伯爵の身柄確保には2個小隊、御身の救出部隊として3個小隊、内1個小隊が占拠の為行動しております。兵舎には、斥候以外は向かわせておりません」

「上出来だ。おい、お前らだけか?土産はどうした」

「申し訳ございません!御身を救出することを最優先と考え、完遂するまでは騒ぎを起こすわけにはいきませんでした。これから確保いたします!」

「そうかい。良いのを期待してるぞ」

「了解いたしました!直ちに1個小隊を向かわせます!」

 そう言うと部屋の外にいる幾人かが鎧を鳴らしながら歩いて行く音が聞こえた。

「さて、ここに居るガラクタ共を外に放り出せ。俺達の邪魔するなら殺して構わん。だが、基本的にこの国に恨みを持っている奴らばかりのはずだ。喜んで外に出ていくだろうよ」

「了解いたしました!早速手配いたします!」

「2〜3人で行動させろ、軽く見た所、お前らでも1対1では負けるかもしれんのがいる。まあ、外に出て暴れることが出来ると知ったらこっちに来ることは無いだろうがな」

「はっ!」

「あとひとつ、例の奴らは処理しておけ。この国に来てから集めた奴らだ、下手に生き残られても面倒だ」

「了解いたしました」

 その命令を聞くと、オテロは3人に指示し、指示された男たちは実行するために移動する。

「さて、司令部はどうするかな。ここの所長室なんかどうだ?」

「最適な場所かと思われます」

「そうだよな。堅牢な建物で守りやすい。小高い丘の上だから街を見下ろせるし、逃げ道もある。それと、お前ら、ベッドがあるぞ。ここの所長室には。使ったことあるか?」

「いえ!私は娼館でしか使用したことございません!」

「あれいいよな。おし、それだけでも司令部を決める理由になるな。土産はそこに連れてこい」

「はっ!了解いたしました!」

「それと、俺の獲物はあるか?」

「魔法の武器と、ハーフプレートをお持ちしました!」

「これか」

 そう言うと男は鞘から抜き出し、幾度か剣を振るう。剣を振るっている間に男の顔が少し歪んでいった。武器を差し出した者はその表情をみて凍り付くような顔になり、体を震わせていた。

「まあまあの物だな。ちっ、あの冒険者に奪われたのは誤算だったな。ん?オテロ何を震えている」

「私が用意した武器が満足して頂けなかったのかと思いまして……」

「ああ、そうじゃねーよ。このくらいの武器でも見つけるのは大変だ。ただ、取られた武器のほうがしっくり来たなと思っただけだ」

「はっ!ありがとうございます」

「それと、あの冒険者、確かフミトと言ったか、お前は知ってるか?」

「申し訳ございません!少々名の知られた冒険者と言う事以外、私の知識にはございません!」

「ふむ。なら、冒険者ギルドを制圧後、情報を手に入れろ。2〜3人殺せば話すだろう」

「了解いたしました!」

 そう言うと、男は手を顎に当て、考えこむ。

「冒険者ギルドは手出ししてくるかねぇ?」

「手出ししてくるよう計らいますか?」

「そうだな。そうしてくれ」

「情報入手の折にその様にいたします!」

「さて、そろそろ場所を変えるか」

 そう言うと跪いている男たちが立ち上がるのを待たずに鎧も着ないで歩き始めた。


「所長、久しぶりだな」

 男は所長室の扉を蹴り破り、中に居た護衛二人の剣を抜く暇を与えずに斬り殺す。中央で執務を行なっていた男性に向かいそう呟いた。

「なっ!お……お前はユーベル!どうやって牢から出た!?」

 執務中だった牢所の所長は慌てて立ち上がり、そう質問をした。

「ん?所長は気づいてないのか?お前ら手際良くなったな。褒めてやろう。あ、いや、この爺がボンクラなだけか?」

「質問に答えろ!」

「うるせーな。どうやって出たかってどうでもいいだろう。どうせお前は死ぬんだから」

「なっ!」

「どう死にたい?」

「私は死なん!すぐに兵舎から衛兵達がやってきてお前たちを倒してくれるだろう!観念するんだな!」

「それは本当か?」

 ユーベルは所長から目を話さず、だが、ダラリと力を抜いた体制のまま部下に確認した。

「いえ、伝令用の兵は進入時に皆殺しにしております」

「だってさ。所長さん。死んじゃうよ?どうするの?」

 牢所の所長はその言葉に観念したかのようにゆっくりと椅子に座った。

「わかった。要求を聞こうか。私も死にたくはない」

「何を馬鹿なこと言ってるんだ?話聞いてなかったのか?」

「なっ!?」

「殺すって言ったはずだが?」

「くっ!」

 所長はそう言葉を発すると直ぐに机の下に手を伸ばす……が、結局その行動は完遂することが出来なかった。

「だめじゃないか。余計なことしちゃ。つまらない殺し方になっちゃったじゃないか」

 ユーベルは所長が動作をするより早く、剣を鞘から抜き、首を切り落としていた。そして、面倒くさそうに主の失った体をどけ、椅子に座る。

「意外と座り心地悪いんだな。この椅子は。見た目だけは立派なのにな。お前ら、これと、その2つ捨てておいてくれ」

 そう指示するとそちらには完全に興味を失ったようで、所長が最後に手を伸ばした辺りを確認し始める。

「やっぱり脱出場所はあったようだな。ここの兵士が思ったより強かったとしても逃げることは出来るな。資料を探せ、経路と地上脱出ポイントを確認する」

 ユーベルの指示にしたがい、2人が机と、本棚に別れ調べ始める。荒らしながら探すのではなく、一つひとつ分別しながら仕分けし、戻していく。時間がかかると思われたが、短い時間で部下から発見の報が来る。

「ありました。脱出ルートが書かれた簡易地図です」

「見せてみろ」

 ユーベルがひったくるかのように地図を取り、確認する。

「なんだ、これだけなのか。殺しちゃうのはもったいなかったな。この国随一の牢獄だと聞いてたのにたいしたことねーな」

 結局、すぐ後ろの壁が倒れ、そこから逃げることが出来ると言う程度で、ユーベルにとっては壁が倒れて逃げ出した所長を見送ってからでも問題なかったくらいだった。逃げるルートも屋根の上を使い、牢獄舎の端に降りれるくらいで、全然大したことがなかった。

 ユーベルが所長室のギミックについて興味を失った辺りで外から悲鳴が聞こえた。

「きゃぁぁぁあああ!!!」

「お?はじまったな」

 その悲鳴の方向にある窓に軽い足取りで向かい、外を眺め、満足そうに笑う。

「お、見てみろ、あいつ今殺されそうだぞ」

 父親が子供と妻を殺人者、この牢獄に収監され、ユーベル達の手によって出された犯罪者であろう者から体を張って守っている状況だった。父親はそのまま剣で背中を切りつけられるが、命をとして妻と子を守っていた。そんな人々の光景を見ながらゲラゲラ指を差しながら笑い始める。

「ほら、さっさと死んじまった男をどけろ。その下にはお前らの求めてるものがいるだろうに」

 夫が殺され、子供だけでも助けなければと子供を弾き飛ばし、そして刃から守ろうと男に向かっていく。だが、簡単に捕まり、服を切り裂かれていく。

「おーおー、ようやくご褒美だ。お前は何年ぶりなんだろうな。楽しめよ」

 夫が殺された隣で犯され始める妻。子供は泣き叫びながら走り続けている。その状況もユーベルにとっては娯楽なのだろう。今までで最高潮の笑い声になっていた。

「そう言えばアピの小屋に残してきた女はもったいなかったな。あの体はすごく具合が良かった。行軍中邪魔だから連れて来なかったが、連れ歩いて一味と思わせておけばここに居たかもしれなかったな」

「確か、アマーリアというお名前でしたね」

「そうそう、あの女は今まで抱いた中で最高だった。畜生、もう死んじまっただろうな」

「どうなさったのですか?」

「小屋の中に鎖で手足をつないでおいたんだ。もう小便や糞垂れ流して死んじまっただろうな。もったいねーなー」

「惜しいことしましたね」

「そう言えば、土産はどうした。まだ届かないのか?届く前にあのゴミどもに荒らされちゃ楽しく無いんだがな」

 外の状況を見て、興奮し始めたのか、楽しいからなのか、笑い顔で小隊メンバーに対してお土産を催促する。

「もうそろそろ収穫できると思われます」

 一つの小隊が実際出発してから1刻ほど経つ。目星をつけていたらそろそろ到着しても良い頃合いだ。

「そうか。あいつらに持っていかれちゃかなわんからな」

「その点は大丈夫です。近隣は最優先で行なっております」

「ほー。やらしいやつだ」

 ユーベルはそう言うと、外の状況が悪化していく様子を見ながら満足そうに笑っていた。


「お土産おまたせしました」

 小隊員が20人連れて戻ってくる。所長室に連れてきた人を横一列に並べる。

「ほう。悪くはないな。お前ら、経験無いやついるか?」

 その質問に並んだ全員が困惑の顔をするが、いきなり剣をつきつけられ、連れてこられたので、恐怖の方が勝ってしまい、答えることが出来なかった。

「おいおい、怯えすぎだろ。大丈夫だ。気に入らなかったら殺すだけ。たいしたことないだろう?」

 この言葉を聞くとより怯えてしまい、膝から崩れ落ちそうになっているものまでいた。

「再度質問だ。処女はいるか?手をあげろ」

 20人中16人が手を上げる。そう、連れてこられた人の性別は女性だった。

「ん?1人お前らの趣味で選んでるだろう」

 妙齢の女性がずらりと並ばされた中に一人だけ細身の美男子が混ざっていた。

「こいつは2小隊のあいつの趣味だな?」

「申し訳ございません!」

「俺の趣味がわかってて、そしておこぼれもらおうとしているお前ら」

「も……申し訳……」

「嫌いじゃねーよ」

 その言葉に緊張し、青くなりかけた兵士の顔が一気に和らぐ。

「おし、手を上げなかった3人、男はいらねーよ。その3人は俺のもんだ。残りは1小から3小までで自由に味わえ。褒美だ」

「ありがとうございます!」

「これだから略奪や強奪、蹂躙はやめられねーよな。見返りが美味しすぎる。見張り4人残して後は楽しめ。他の部隊にはしゃべるなよ。全部俺の物にしておけ。まあ、他の部隊もこれから楽しめるだろうがな」

「了解いたしました!」

 現在居る1小隊、2小隊の合計16人がじゃんけんを始め、誰が残って誰が味わうかを決め始める。その内の一人が勝って早速と女性を一人連れ、何処かへと消えていく。そして次々に女性が居なくなっていく。意外と男性は2人からの取り合いになり、被害者である男性がいつまで経ってもじゃんけんで決着付かないために困惑した顔をしていた。

「さて、3人名前は?それと何人経験している?」

「サーラです……一生懸命頑張るので殺さないでください……」

「人数は?」

「夫一人です……」

 サーラと呼ばれた黒髪の女性は青い顔しながら、震える口で何とか答える。

「ほう。次」

「クレア。8人」

 このクレアという女性は特に表情を変えず、普段通りと言うような口調で答える。

「ほほう。楽しめそうだな」

「オリアです。二人です」

「お前はもっと人数多いと思ったんだがな。一人ひとりが濃いのかもしれんな」

 その言葉を聞くと、オリアと名乗った女性は青かった顔が真っ赤になってしまった。

「まあいい。さて、楽しませろよ」

 そう言うと怯えているサーラをベッドに押し倒し、着ていた服を破り始めた。




「報告いたします!物見の塔4箇所、市政庁舎占拠完了しました!」

「おう。報告ご苦労」

 1刻ほど経った後兵士が占拠完了報告を伝えてくる。まだ、ユーベルは3人の女性に対し、快楽を与え続けている最中であったが、

「他はどうなっている、もうそろそろ全部占拠しないと間に合わないぞ」

 行動するための時間が近いという事で、女性の中に放ち、行為を終える。

「西門はそろそろ確保する予定です。冒険者ギルドは少々抵抗があるようで、手こずっているとの報告がありました。それと、放出した犯罪者が起こした騒ぎで兵舎から兵士が出て鎮圧しております」

「わかった。兵士はどのくらい出ている?」

「ここから放出した犯罪者は約80人、それに対して兵士は約200名ほど来ていると思われます」

「確か、この街は500名だったよな。そのうち200とは半分近くか。陽動としては悪くないな」

 ユーベルは、服を着、鎧をまとい、剣を挿す。そして、時刻はそろそろ日が陰り始めてもおかしくない時刻になってきていた。

「さて、そろそろ動くか。1から3小隊中庭に招集!女は全部牢に入れておけ!」

「はっ!」

「お前ら4人は残念だったが、これからもっと良い事がある。楽しみにしておけよ」

「はっ!楽しみにしておきます!」

 いやらしい顔しながらユーベルはそう伝える。兵士もそれが楽しみで仕方がないのか笑いながら返事をする。

「報告いたします!冒険者ギルド、占拠に成功!あわせてオルティガーラ伯他多数の貴族の拘束に成功、現在オルティガーラ伯の屋敷に隔離しております」

「ご苦労」

 そう言うと兵士を全員連れ、中庭に向かう。

「招集ご苦労。さあ、お前らの大好きな時間がやってきた。まずはこの地域で鎮圧している部隊を皆殺しだ。相手は200人。それと他に守備隊として300人。どうだ?楽しいだろう?」

「はっ!」

「だが、残念なことに全部殺すことが出来ないだろう。せっかくの楽しい時間なのにな。まあ、命令だから我慢してくれ。それと、ここから出したゴミども、これ以上は邪魔になるから見つけたら殺せ。以上だ。楽しんでこい!」

「はっ!」

「第1小隊出撃します!」

「第2小隊出撃します!」

「第3小隊伝令他御身の護衛につきます!」

「おう、行け!俺も後から行く」

 第1、第2小隊が出発していく。それは遠足に行く子供が早く行きたくてウズウズしているかの様に。2つの部隊の出発を見届けた後兵士から報告がくる。

「報告します!敵兵10名、こちらに向かってきます!」

「お、10人か、ちょっと物足りないが、お前ら手を出すなよ。俺がやる」

「はっ!」

 10名の兵士が2列縦隊で牢所敷地に入ってくると、さすがに異変に気づいたその部隊の隊長がユーベルに対し話す。

「お前らは誰だ!なぜここにいる!?」

「答える必要はない。さて、俺を楽しませてくれよ?」

 そう言うとユーベルは剣を抜きゆっくりと歩き始める。

「敵兵と確認!半径陣!包囲殲滅!」

 隊長は抜いた剣を見た瞬間にすぐ判断し、対処をはじめる。力量差を一瞬にして見抜いたのか、それとも一人しか来ないから確実に倒す事を前提にしたのか。だが、それは確認することが出来なかった。

 ゆっくりと歩いていたユーベルが、大股で5歩ほどの距離に来た時一気に間合いを詰め、先頭中央の2人を左右に連撃を放ち喉を切る。そのまま中央奥に居た隊長めがけて一気に詰め寄り、喉元へ突きを放つ。あっという間に3人、しかも隊長を殺されてしまう。速さに対処できず、しかも頭を潰された隊員には状況がわかって居ないのか、気づいているが脳が処理できていないのか、次々に剣を持ったまま何も出来ずに殺されていく。返り血で真っ赤になった悪魔に対し、最後の二人だけが恐れに打ち勝ったのか、それとも単なる条件反射からか、ユーベルに対して剣を振るうことが出来た。だが、振るう事が出来ただけで、かすり傷さえ負わせること無く絶命した。

「なんだよ。これなら3個小隊だけで全滅できたんじゃないか?500人」

 本当にそう思えてしまうくらいに呆気無く戦闘が終わってしまった。

「まあ、いい顔が拝めた。見てみろよ。何が起きたのか全くわからない顔で死んでるぞ。いや、まだ血が抜けきってないから生きてるかもな」

 そう言うとゲラゲラ下品に笑い始めた。他の第3小隊メンバーも釣られて笑っている。少しすっきりとしたユーベルに対し、また報告が来る。

「報告します!西門開放、あわせて占領部隊第一陣2000名突入しました!」

「ご苦労。ここで殺せてよかったな。楽しむことが出来なくなるとこだったよ。風呂を炊け、血を洗い流す」

「了解いたしました!」


 血を洗い流し、所長室でゆっくりしていると、次々と報告が入る。実際に、第1小隊、第2小隊共にほとんど敵兵を殺すことが出来ずに戻って来ていた。

「兵舎を制圧。残存兵は投降者を含めすべて皆殺しにしたようです」

「そうか。兵力差か?かなり早かったな。お前ら、町の住人を適当に集めてこい。どうなったか教えてやろう」

 四半刻後に50人ほどが牢所前に集められる。その50人も武器を抜き身で持った兵士に囲まれ、怯えつつ待たされていた。そして、血まみれで倒れている自分たちの街を守ってくれていたはずの兵士達の固まりもより恐怖を掻き立てていた。

「さて、お前ら、今この街がどうなってるか教えてやろう。俺達がこの街を占領した。逆らう奴は皆殺しにしてある。お前らの頼みの綱である兵舎も落ち、剣を向けた兵士は皆殺しにした。喜べ! お前らの主はこの俺様、ユーベルになった! さて、そこで新しい支配者からのお願いだ。毎日1人俺に殺されに来い」

 その言葉に集まった市民全員の顔が青くなる。武器を持った兵士に囲まれているのにざわつき始める。それも仕方がないのだろう。毎日1人だという事はすぐにでも自分の番になってしまうかもしれないのだから。

「おまえら、そんなに嫌か?そうか、嫌なのか。わかった。寛大な俺様から別の良い提案をしてやろう。7日に1度、1人で良い。俺と戦え。もし俺と戦って勝ったらこの街を開放してやる。だが、老人や子供がこの場に代表としてきた場合は、俺を飽きさせた褒美として無差別に10人殺してやろう。あと、冒険者を連れてきてもダメだ。この街の住人じゃ無い。その場合は、そうだな。冒険者を殺した後、罰として20人無差別に殺してやろう」

 またざわつきが大きくなる。その中で一人の男性が手を上げ質問の許可を求めてくる。普段からまとめ役をやっているのだろうか、それとも力や能力に自慢があるのかユーベルの視線から顔を反らすことがなかった。

「いいだろう。言ってみろ」

「2つ質問がある。戦いは武器だけなのか?武器の種類はどうする?魔法を使ってもいいのか?」

「それは好きにしろ。ただ、魔法を使う弱っちいのが俺様に勝てるとでも?」

「承知した。もうひとつはもし誰も来なかった場合はどうする?」

「おー、お前頭いいね。忘れてたよ。褒美だ、来なかった場合は1区画皆殺しにしてやろう。良い褒美だろう?」

 ユーベルのいやらしい笑いはより強くなり、人々に強い嫌悪感を与えた。だが、それ以上に来ない場合の皆殺しと言うのが効いたのか、より青い顔になっていた。

「さあ、楽しい生活の始まりだ。お前ら、俺様を楽しませろよ!」


 住人が怯え戻っていった後で兵士がユーベルの元に走り寄ってくる。

「冒険者ギルドで集めた情報を報告いたします!」

「おう。待ってたぞ。それでフミトとはどういうやつだ」

「はっ!冒険者歴約15年、職業は魔法使い、冒険者ランクは都市級、過去にケイトウが壊滅しかけたグリフォン襲撃や、グランドドラゴン退治等しているようです」

「はぁ!?あれが魔法使いだというのか!?お前、嘘言ってるんじゃないよな?」

「私は幾人からか別々に集めた情報で整合性を取りつつ報告させていただいております!証言がすべて一致しておりますので、これは真実だと思われます!それと、特殊な方法で魔法を使う魔法使いで、普段は魔法を使わず、主に剣で戦っているそうです!」

「そうか。その特殊な方法と言うのはなんだ?」

「羊皮紙を使い、魔法を発動するようです。その為、詠唱や集中が必要なく、即座に発動出来るとの事です」

「なるほどな。フミト。楽しみにしていろよ?俺がお前を殺してやる」


 〜〜〜〜〜



今週もあまり気分の良くない描写で申し訳ないです。

悪の美学、もっと濃くしたかったのですが、自分の想像力の無さと、文章力の無さ、ただ単に気持ち悪い描写にしたくないというのがあり、中途半端な感じに。嫌悪感を与えすぎても嫌われてしまうかもしれないというブレーキが自然と出てしまったのかもしれませんが。

それと、クーデターにあわせてこれを書いたわけじゃありません。完全に偶然です。

次週もお読みいただければ幸いです。

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