表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30の魔法使い  作者: 圧縮
本編
60/83

スカウト

スカウト


 黒いグリフォンの首が転がり落ちたところで少し離れた位置で戦闘状況を見ていた両パーティから歓声が上がり走り寄ってくる。

「スゲーッス!さすが師匠!」

「フミトさん!一人で倒すのはすごいです!」

「フミト!怪我は大丈夫?!」

 喜びと賞賛、そして労い、心配の言葉を次々とかけてくれる。今更冷静になってみると、倒せたのは2つの要因があったからだろう。この魔獣が魔力中心だったので相性が良かったのと、幼い感じがあったので、まだ経験が少ないグリフォンだったのだろう。もしくは、魔力にあぐらをかき成長をそこで止めてしまった事も考えられる。実践前からわかっていたわけではないので、たまたまでしかないのだが、正直筋力戦になっていたらかなり危うかったかもしれない。冷静な判断ができていないというのは非常に不味い事だと倒し終わったあとではあるが、再認識させられた。

「みんなすまない。自分を抑えきれなかった」

「師匠はおいらたちの仇を討ってくれたっス!」

「仇って……まだお前たちは死んでないだろうが……」

 イオタの言葉に呆れながら思わずツッコミが入る。まあ、言いたいことはわかった。

「ともかくすまない。冷静な判断ができず、最悪皆に迷惑をかけるところだった」

「大丈夫ですよ。信じてましたから」

「そうですよ!師匠が負けるとは思ってないですよ!」

 ナイアとオリヴェルから世辞が飛ぶ。いや、世辞なのか本心なのかは本心よりかもしれないが。

「そう言うけどオリヴェル、ハパロバが戦ってるのとどっちが信頼できた?」

「えーっと……ハパロバさん?」

「だろ?」

 ボルカ達のパーティーで、軽く笑いが起きる。ティアがちょっとムッとしてたが、後で説明しておくかな。

「まあ、今のは話の流れでハパロバさんって言うしか無かったですよ。真面目に言えばこのグリフォンなら師匠の方が安心して任せられますよ」

「ナイアは今回の単独戦闘どう思った?」

 完全に世辞だとは思わないが、なんとなく不安になったのでナイアに振ってみる。

「今回グリフォンとは初遭遇でしたが、地上に落とすことが出来れば1匹1パーティーで行けそうだという事はわかりました。ですが、あの黒い突然変異種は普通では無理でしょう。突進が反れたのは岩の槍による翼や羽の損耗で切れやすくなっていた、そしてフミトさんの良い戦術の結果だからだと思います。ですが、あの魔力量と攻撃力は信頼していても不安が残りましたよ」

「そうですよ。私突進受けちゃいましたもん」

 ちょっと口をとがらせて文句を言いたげなリーア。まあ、結局心配させてしまったという事か。結果オーライだけでは済ませられないこの世界、やはり冷静に見るよう努力しなければならないとより強く思った。

 そんな話をしてると、ボルカを含む数人が座り込んでしまう。

「どうした?」

「体力の限界ですね」

 グリフォンから大分痛めつけられたようだし、精神的にも厳しかったのだろうか、座り込むのは納得できた。

「そう言えば治療しなきゃな。リーアは火傷治せる?」

「火傷は無理だと思います。私が治せるのは基本切り傷なので」

 申し訳なさそうにリーアは答えてくれた。まあ、切り傷だけでも治せるのはパーティーに一人居るとかなり助かる。今の所怪我らしい怪我は俺くらいしかしてないし、その傷も酷かったのでリーアの魔法はほとんど使われたことが無いのだが。

「わかった。それじゃ、2匹のグリフォンを近くに寄せてもらえないかな?一緒に解体方法を見ながら進めてもらいたい。ボルカ達は治療があるから終わったらリーア達を手伝って」

「わかりました」

 リーア達は早速と自分達が倒したグリフォンに向かう。ボルカ達のパーティーが倒した方を優先的にやらないのは相手に手伝わせようという気持ちでは無く、単純に自分達がグリフォンを倒した事が嬉しくて向かっただけだろう。顔を見れば全員が若干こらえきれない笑みが見えていた。

「さて、治療を始めようか」

 中級治癒魔法程度必要になってるメンバーを優先的に行う。それでも、一番安い羊皮紙で行けそうなので、大は小を兼ねると言うことで、全員中級治癒魔法で治す。失った血や水分は戻せないし、火傷による痛みの痕跡はすぐには取れない。まあ、ちょっと耐えてもらおうか。


 治癒魔法をかけ終えるとティアとナイアがお互いの放した馬を連れてきた上でグリフォンを運ぶ労働力とし、ちょうど1匹運び終えた所だった。

「これならボルカ達は休んでても良いかな?」

「大丈夫です。私達でやりますよ。ついでに馬車も持ってきますね」

 気遣いが身に染みたのか、ボルカ達はすごくうれしそうな顔をしていた。

 3匹がそろい、血抜きを終え、馬車も元通りにしたところで解体の講習を始める。

 最終的には首、胴(左右)、足4、翼2に分解することになる。黒い奴は、結果的に1工程なくなってしまっているが、本来はここと胴体を左右に割るのが一番面倒なところになる。

 4つ足は普段から他の魔獣でやっていることなので省き、翼は骨の継ぎ目とその周りの筋肉をうまく切ることが取り外すコツになる。まあ、切れてしまえば問題ないのだが、本来切るより外す方が簡単な手順になるため、こちらを教えておく。首はある程度まで切り込みを入れてから一気に剣か斧で切り離す。ここまでは魔獣をさばいたことのある冒険者なら問題ない。一番問題なのが胴体だ。まずは邪魔な内蔵をすべて取り出し、灰で洗っておく。今まで血合いは丁寧に取らなくても良かったが、この魔獣に関しては綺麗にしなくてはならない。その理由は背骨あたりから斧で叩き切っていく事になるからだ。見えなくても目測でうまく行くのなら血合いが残っていても問題ないが、食肉解体業者じゃない限り難しいと思う。

「これ、結構疲れますね……ここまでやる必要あるんですか?」

 リーアの質問でボルカ達も頷きながらこちらを見る。

「やらなくてもいいけど、結構重いよ?」

 実際胴体だけで100kg近くあるのだ。よくこんなに重い魔獣が飛んでいられると思ったが、翼が大きく、骨も中が空洞だが、それ以外は密度が高い。筋肉も細いがしっかりとしている。とても絶妙なバランスなので飛ぶことができているのだろう。グリフォンライダーの事もできるか考えたことがあるが、多分人が乗ったら飛べないかもしれないと思ったりしている。

「オイラたちは重くても良いっス。正直これは大変そうなんでやめとくッス」

 まあ、基本胴体が2個になっているかなっていないかでこの魔獣は値段が変わることがない。持ち運びが出来ればいいのだから。リーア達は人数も少ないし力が一番あるのは俺とノンナだ。それでも100kgを二人で持つこともできるが、持ち運びは楽な方がありがたいからこのようにしている。

 翼はグリフォンが生活している時には収納しているものなので、そのまま2つ折にし、馬車に入れる。カッカの肉が邪魔になるが、正直カッカより高い肉になると思うので、もう少し乾燥させたかったが袋に収納して風通しのいいところに置く。


 全部作業を終えた頃には昼過ぎになっていた。ティアとナイアが2つのパーティー分食事を作ってくれ、女性の手作りという事でボルカのパーティーでは大変喜ばれた。

「ところでフミトさん、グリフォンの素材は何に使われるんですか?」

 レンティは新素材とかになるとこのような知識を貪欲に求めてきているな。まあ、いずれ商会を継ぐようなので、色々な知識を得ておきたいところだろう。

「羽の毛は鎧の素材や、防寒衣服になることが多いね。骨は配管に使われることもある。だけど、ほとんど手に入らないから貴族の娯楽扱いかな。くちばしや爪はそのまま武器にしたり、防具の装飾、貴族達は衣服の装飾に使うことが多いね」

「そうなんですね。さすがにグリフォン素材の衣服や装飾品はまだ見たことがないのであまりイメージわかないですね」

 意外と高価なものまで実家で扱っていたようなので、このグリフォンを見ていないというのは正直驚いた。だが、商売にもタイミングというのがある。あまり出まわらなかったホーンドカペラ等商品としてではないが、手元にあるというのは視野が広いという事なのだろうから、たまたま入手する機会がなかったという事なのだろう。

「絶対量が少ないからね」

「そんなに出会えないのですか?」

「出会えないと言うのは間違いないけど、それだけじゃ無いんだよ」

「それだけじゃない?」

「戦ってわかったと思うけど、魔法と筋力それに知能もが凄かったでしょ?1匹でも地上に降ろせなかったパーティーは一方的にやられる場合があるんだ」

「おいら達も戦ったことは無くても知っていたから何とか生き延びられたっス。知らずに普通の陣形組んでたら一人ずつやられてたかもしれないッスね」

 イオタが会話に混ざってくる。イオタ達は冒険者歴もナイア達並にはある。それに、ケイトウでの一攫千金アタックに失敗してから、いろいろな情報を仕入れていてもおかしくはない。だから今回グリフォンに遭遇したとしても生き残れていたのだろう。

「そうなんですね……」

「もうわかったと思うけど、遭遇しても倒せないことが結構あるって事なんだ」

「初遭遇、初撃破は師匠達以来ッスね」

「ああ……嫌なこと思い出させないで……」

 イオタが何処かで仕入れた情報の中には俺の思い出したくないちょっと恥ずかしい過去が含まれていたようだ。

「嫌な事ってなんです?」

 このままイオタとレンティだけならこの話題は終わらせることができただろう。だが、リーアが会話に混ざってきた。

「……リーアとレンティはケイトウの入り口で挨拶してきたゼリザって衛兵覚えてると思うけど、あの時なんて呼んでいたか覚えてる?」

「英雄って言われてましたね」

「あれは、グランドドラゴンを退治したからだけじゃなくて、ケイトウの3割くらい被害を出した事件を解決したから言われるようになったんだ」

「なんですそれ!?」

 ボルカ達はもうこの話をほとんど知っているのだろう。ノンナやナイアは多分以前のパーティーで聞いていたかもしれないので、特に食い付くことがなく聞いていた。ティアは俺が以前のパーティーの時にメンバーが自慢話していたので覚えているだろう。


「グリフォンやその他の魔獣の大量襲来があってね、家も焼け、人も死に、そして喰われていったんだ」

「数百年前とかならドラゴンとか結構いたみたいだからそんな被害はよくあったって大婆様が言たわ。そのくらいひどい被害だったって」

 ティアの故郷であるこの大陸のかなり南方の大森林にいる族長並に偉い知識者と会った時に聞いたそうだ。

「そうらしいね、昔はこのくらいの被害は多かったと魔法大学の文献に残っていたよ」

「私それ読んでないです……」

 まあ、大抵の学生は自分の興味のある物だけ読んだりするものだ。レンティは自分の興味のある物以外にも色々と調べていたようだが、それぞれの街における過去の被害状況の歴史等は調べる事さえ考えつかなかっただろう。俺もなにか魔法は使えるようにならないかと必死になっていた時に、たまたま見つけた文献で、ナニコレと脱線して読み始めたのがきっかけだ。図書カードの名前欄は俺以外にも1人しか借りいなかったのがレンティが考えつかないと思われる証拠だろう。今では3人目が名を連ねているだろうか。

「……あんまり読む必要無いかもね……。で、昔は普通だったことでも、今ではありえないという事はあるでしょ。しかも、それが魔獣の襲撃だったら余計にだよね」

「そうですね、私のいた街では魔獣に城壁を一部壊されただけでも大騒ぎになっていましたから」

 レンティのいた河川の街リスィは元々王都から北へ抜けるためと、東へと向かうための要所して発展した街だ。しかも、レーニアやアピができる遥か前にでき、国境の町オルティガーラがつくられ、魔獣の被害が納まった後にできた街なので、この街に関してはある意味特別だろう。

「だから、冒険者ギルドは各街に派兵をお願いし、対魔獣の部隊を作り上げ討伐に向かったんだ」

「それで魔獣は討伐されたんですね?」

「いや、正直言うと壊滅寸前まで追い込まれたんだ」

「え?」

 リーアとレンティはかなり驚き、口に運ぼうと思っていた一口大のパンを膝の上に置いていたスープの中に落としていた。

「それじゃ、フミトさん達はどうしたんですか?」

 それにはすぐ答えることはしなかった。頭を掻きながら、どう言ったもんかと頭を悩ませたが結局、まあいいかと開き直ることにした。

「緊急募集の依頼が会った時俺達はアイガーに居たんだ。当時のパーティーを結成した街にね。だけど、ある特殊な状況下で公募後即出発の依頼に行く事が出来なかったんだ」

「どうしてなんです?」

 リーアとレンティが真面目な顔して聞いてくる。その純粋な目がとてもこれから言わなければならない過去をより言いづらくする。

「昔のパーティーメンバーに、アルドって男が居たんだ」

「アルドさん!知ってます!この人もドラゴンスレイヤーの英雄ですね!」

「まあ、当時のパーティー6人は最初を除いて解散まで完全固定だったからね。ドラゴンスレイヤーと呼ばれてもおかしくないね」

 むふーっと、リーアが知っていたことが当たり嬉しくなっている。だが、この後その嬉しい気持ちが絶壁に落とされる直前かの様な気持ちになるかもしれないことを想像すると居た堪れなくなる。さらっとここは終わらせたかったんだけどなー……。

「そのアルドがね……、娼館から戻って来なかったんだよ……」

「え……?」

 リーアは表情が固まり、レンティは呆れた顔になっている。ボルカ達は知っているからかブフッって音を立て笑いをこらえているようだ。本当に申し訳ない。もう一度思う。本当に、申し訳無い……。

「つまり、パーティーメンバーが揃わなかったので出発できなかったという事ですね」

 レンティがすんなりと綺麗にまとめてくれる。まあ、俺もこう言えばよかったんだろうけど。誤魔化したくなかった気持ちもあったが。

 リーアがレンティの言葉だけを受け入れるかのようにして、ウンウン頷いたあとようやく固まった表情が戻った。ごめんよ。英雄のイメージを簡単にぶち壊してしまって……。しかも、朝まで頑張りすぎて腰を痛めて動けなかっただけなんて、純粋なリーアには伝えられなかった。

「まあ、そんなとこ。そこでフェスティナ商会に泣きついてケイトウ行きの護衛任務を急遽仕立てあげてもらったんだ」

「それでケイトウへと。でも、壊滅の話とは繋がっていませんよね?」

 リーアは完全に戻ってこれていないのか、レンティが話をすすめる。

「俺達は結局2日遅れて出発することになったんだ」

「壊滅しかけていたと聞いていなければ、すでに討伐は終わってると思ってしまいますね」

 一般的に人数が集まった討伐は戦闘が始まれば1日で普通は終わる。普通に倒されてしまうというのがあるが、第一人間がそこまで長く戦うことが出来ないので短期決戦を好むからだ。

「そうだね。戦闘は継続されていたよ」

「魔獣数は多かったのですか?」

 レンティは驚きつつ質問をする。言葉は短いが色々な意味を含んでいるのだろう。まあ、俺がその一言で多くを話してしまうから質問も最小限で済んでいるだけかもしれないが。

「全部で300以上はいたんじゃないかな?今でこそケイトウは冒険者の数は多いけど、ケイトウ東区はグリフォン多発地域でもっとギャンブル性の高いハイリスクな街だったんだ。だから、討伐隊も全部で100名もいなかった。でも、地上の魔獣掃討部隊はギリギリ一進一退を繰り広げていたんだ。

「兵士達はどうしたのですか?」

「街の住民を守るためにバリケードを作り籠ってもらっていたよ。そして他には戦線の維持をする為の拠点づくりや食事、休憩場所等兵站の維持をしてくれていたよ」

「戦ってはいなかったのですか?」

「実際は兵士達も戦っていたよ。前線が冒険者で、中衛・後衛が兵士という形を取っていたかな。兵士は自分たちの街を守るために、冒険者は名誉と金銭の為に」

 当時を思い出す。俺は生前戦争に出たこともないし、見たことさえない。湾岸戦争があったが、緑色のナイトビジョンで白い光がパパパパと発光したものが流れていくだけという現実味のない映像のみ。映画でも臨場感のある戦場映画は見たが、第一次世界大戦はこんなんだったんだな。程度しか知識がなかった。だが、後衛の野営地に着いた時愕然とした記憶がある。血まみれで倒れている戦士達、兵士達。それを必死の思いで傷口を治癒魔法でかけている魔法使い。それだけでは間に合わないので、町医者が切り傷の場合は無理にでも縫い合わせていく。そんな近くにも魔獣が攻めてきて、人々の怒号が飛び交い、さらに新たな傷を増やした兵士達が運ばれてくる。そこそこ人々に知られ始めた冒険者になっていた俺達は、人の死に際を少しは経験していたが、これだけ沢山の怪我、死に直面している人々というのは見たことがなかった。

「そうなのですね。それなのに押されていたのですか」

「そう。それがグリフォンの怖いところさ。魔獣が押され始めるとその押され始めた前線に魔法を集中砲火してきたんだ。俺達が来る前にも戦略的に別働隊を組織して戦線を崩しかかったらしいんだけど、集結地点に集まりつつあった冒険者がまだ少数の間に壊滅させるとか魔獣の中にも司令官がいたのかと思うくらいにね」

「それでフミトさんたちはどうしたんですか?」

「正直普段の討伐とかけ離れ、多くの者がが傷つき倒れていく状況を見て心が折れかけていたよ。戦場というのはこんなに違うものなのかと。だけど、俺達はある看護師から叱咤をもらったんだ。「遊んでいるなら出ていって!」ってね」

「厳しい人ですね」

「まあ、おかげで目を覚ますことはできたよ。司令所に向かい、状況を把握した後前線に向かったんだ」

 多分あの人の言葉は本当に邪魔だっただけなのだろう。だが、その飾りの無い本心が現在置かれている状況を思い出させ、更には自分たちが何をしに来て、何をするべきなのかを思い出させてくれた。

「そして、最前線にたどり着いた時、驚愕の光景が目に入ったんだ」

「何があったんですか?」

「グリフォンに魔法による絨毯爆撃をされ、倒れていく冒険者達だよ」

 リーアは息を呑み、レンティも黙ってしまった。

「そしてグリフォンがとどめを刺すために降りてきたんだ」

 結果を知っているイオタやボルカ、ティアまでも黙っている。俺にそんな話術あるようには思えないので、初耳の二人に遠慮して静かにしてくれているんだろう。

「グリフォンの爪が幾人かに喰いこむ。なんとかそこで魔法の攻撃範囲に入った俺達はがむしゃらに攻撃魔法を打ち始めた。当時はお金もなかったから、上級の羊皮紙しかない。強いロックストライクやアイスランス程度しか俺は撃ちこむことが出来なかったが、他のメンバーはアイススピアーズや、ウィンドバースト等、強力な魔法を使い、グリフォンを撃ち落としたんだ。」

 リーアとレンティはもう食事を進めることを諦めたのか、忘れたのかスープに落ちたパンをすくって食べることもせず、ふやけるそのままにしていた。

「10匹以上のグリフォンが俺達を目標にして突進してくる。幸いなのが墜落した後各々バラバラで突進してきた事だった。武器や防具は大したものを持てていない時だったから、グリフォンを避けすり抜ける時にかなり擦り傷や小さな切り傷を増やしていったんだ。ただ、ここで突進されただけじゃ終わらなかった。ダグラスやアルドは突進してくるグリフォンとの速度差を利用し、剣を投げつけ1匹倒していた。他のメンバーも、同時に魔法を使い、これも速度差で倒したんだ」

 倒したことは知っていたが、倒し方は聞いていなかったのか、イオタやボルカ達も真剣に耳を傾けはじめた。

「アルドの剣はすぐ抜くことができたんだけど、ダグラスの剣は勢いで転がったグリフォンの骸の下敷きになってしまったんだ」

「それで、どうなったんッスか?」

 とうとうイオタまで熱心に話を聴き始めた。

「傷を追って倒れていた冒険者が剣を投げて渡してくれたんだ。ただ、今の俺達がグリフォンを倒すには速度差を利用するしかなく、その武器も投げてはグリフォンに刺さる。その後もすぐ冒険者達から剣が投げて渡される。なんとかこれを繰り返し、上空に逃げたグリフォンも魔法で撃ち落とし、すべて倒すことに成功したんだ」

 皆が山場を越え、収束に向かうことがわかり、息を吐く。

「その後は冒険者達だけで魔獣を退けることが出来、街に平穏が戻ったんだ。だけど、その時の冒険者達が俺達を担ぎ始めてね、そこで兵士達まで伝達して噂がどんどん大きくなり、英雄って言われるようになったんだ」

「でも、私は英雄にふさわしい行動だと思いますよ。皆が倒せなかったグリフォンを倒してしまったのですから」

 ナイアが肯定的に捉えてくれる。

「でも、結局は手柄の横取りの様な形だからね。あまり大きな声で言いたくないんだよ」

 まあ、普通にそんな事言われるのは恥ずかしいというのもあるけど、出遅れた冒険者が英雄扱いとうのもなんとも……。ただ、皆がなんとなく満足そうな顔をしているのが少し嬉しかった。俺が戦った事はとりあえず言わないでおく。だって恥ずかしいし。


 食事も終え、野営の準備をする。3交代にし、そのうち1回の真ん中をまた俺がやることになった。前後はイオタ達のまだ元気なメンバーが行うことに。

 結局朝まで何も起きず、この地域の異常性を再度確認することになった。

「イオタ、街へ戻るのに一緒に行くか?」

「お願いしやッス師匠!」

 朝食後、2パーティーで野営地へ向かうことにする。

「そう言えば、イオタ達は今回魔獣と戦うことはできたか?」

「おいらたちはあんまり遭遇できなかったッスね」

 やはり、東区の魔獣が少ないという事がわかった。

「このグリフォンのせいかもしれないな。魔獣が減った理由は」

「そうッスね」

「なんでですか?」

 リーアが首を傾げながら質問をしてくる。

「グリフォンは本来もう少し北の地域で遭遇することがあるんだ。南下することでグリフォンが魔獣のことを餌にしてしまうんだ。全部食べつくすという事は無いんだが、グリフォンは狩りを楽しむ性質があるから、魔獣が怯えて逃げ出してしまうんだ」

「だから、今回あまり出会うことがなかったんですね?魔獣に」

「その可能性はあるね」

「普段はもっと遭遇するのですよね?どんな魔獣が多いのですか?」

「ウルフとか、アグリーバックとかも多いはずなんだけどね」

 ちょっと来てなかったから、軽く思い出しながら魔獣の名前を思い出す。

「ひょっとして、ケイトウの周りで多く遭遇したのはこれに関係してくるのではないですか?」

 ナイアが鋭い質問を投げかけてくる。すぐその可能性が納得でき、俺も答えを出す。

「あるかもしれないね」

「師匠達はたくさん遭遇したんですか?」

「ああ、確かアグリーバックが40匹だっけか?」

「うへぇ……それはおいら達の人数がいても嫌になりそうッス」

 イオタは本心から嫌そうな顔をし、その言葉を素直に出す。

「最後には無我の境地に達してたと思うよ……」

 それを聞いていたパーティーメンバーは黙って頷いていた。そこでふと気づく。グリフォンの影響で魔獣の数に偏りが出来、ケイトウ周辺では魔獣の数が増え、東区では少なくなったという事。元々多かったケイトウの周辺だが、このグリフォン達を倒したことで戻るだろう。だが、その気づいたことでうなだれてしまう。

「どうしたんッスか?師匠」

「レーニアに戻る時も数が多いのかと思うとね……」

「あー、それは可能性高いッスね」

 その言葉で余り明るい未来が見えないという事がメンバーにわかり、呆れ・うんざり・もしくは達観したかの表情になっていた。

「話変わるが、イオタ達はこの後どうするんだ?」

「まだしっかりと話し合ったわけじゃないッスけど、しばらくケイトウに居ることになると思うッス。アピで温泉休息が一番有難いッスけど、お金無いッスからね」

 温泉街でゆったり。非常に魅力的なことをやろうと考えているらしい。金銭的にどうなるかは俺もよくわからんが。

「それは俺もやりたいな。まあ、余裕があったらレーニアで美味しい物食べさせてあげるよ」

「また、ハイルオヤジさんのご飯食べたいッス」

「俺も少し変わった物も作っているから、タイミングが合えば美味しい物も食べられるかもな」

「フミトさんのは美味しいです!ぜひ食べに来てください!そして私にも!」

 なんかリーアが熱弁振るっているが、ついでに食べさせてと言っているところがちゃっかりしている。


 集合野営地にたどり着くと、負傷したメンバーがいるパーティーをちらほら見かけた。話を聞くとグリフォンに遭遇してやられたが、命からがら逃げることに成功したとのこと。やはり魔力の高い魔法使系がいないと厳しいのだろう。さて、巻き込まれない間に……。

「そのグリフォンは倒しちゃったよー。私とフミトさん達で」

 ちょっ!ノンナ!なんてことを言うんだい!

 その一言で一気に人だかりができ、多くのパーティーにグリフォンの頭等を見せることになり、更に人だかりができ、開放されるまでしばらく時間がかかってしまった。

「あら、英雄さん。久しぶり」

 その声の主を見ると、五条桜だった。皮肉っぽい笑みを浮かべながら俺のことを英雄と呼ぶ。どうやら、グリフォンの被害を受けたパーティーから英雄の再来だとか言っていたのがいつの間にか広まってしまったようだ。

 五条桜は例の執事みたいなリーダーを連れ二人で着ていた。野営の準備もあり、一緒に来てもらい夕食を食べながら話をすることになった。

 夕食の準備が終わり、全員の配膳が終わって食べ始めると桜はすぐ本題を切り出す。


「ねえ、フミト。私の国に来ない?」



書き終えたのが日曜日の24時過ぎ。1回しか見直せていません。誤字脱字が多かったら申し訳ないです。お知らせ頂ければすぐ修正します。書いている間に少しずつボリュームが膨らみ、無理やり投稿するための制限時間に押さえ、修正した形になっていますので、少しおかしい点があるかもしれませんが、時間があれば、加筆(意味は変わらないと思いますが)していきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ