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30の魔法使い  作者: 圧縮
本編
58/83

襲撃

襲撃


 ~~~~~


「敵襲!緊急!対応急げ!」

「何処からくる!?」

「上空!多分グリフォンだ!弓用意!」

「ちくしょう!なんてこった!」

「そんなに儲かってないのにこんな仕打ちあるのかよ!」

「騒いでる余裕があったら戦闘態勢作れ!」

「こんな所でやられたら師匠に合わせる顔がない!みんな生き残るぞ!」

「ボルカ!3匹だ!1匹黒!突然変異種だ!」

「わかった!だが、隊列はいつも通りでいく!」

「おう!」

「10人という数で押し切ってやる!」

 全員の士気は高くやる気に満ちている。前回武器防具を壊されながら何とか倒した魔獣の時とは違う。俺達もかなり成長しているはずだ。武器が届きさえすれば倒せる!!。

「射程入るぞ!」

「イオタ!バルボ!オリヴェル!シリノ!エイト!何とか弓で撃ち落としてくれ!」

「おう!イオタ、クルノール、ボルカの嫁の為にこいつら倒そうぜ!」

「ちょっと!それ師匠の言ってた死亡フラグってやつじゃねーの?!」

「そんなのかんけーねーよ!大丈夫!おいら達は倒せるよ!」

「いくぞ!」

 その合図と共に弓を構えていた者はグリフォンに向かい矢を放つ。しかし、その矢が届くことは無かった。

「ちくしょう!風の守りでもあるのか!?矢が届かねぇ!」

「クソっ!今思い出したよ!矢は届かないし、高いところから魔法使うって最悪な魔獣だってな!」

「わかった!俺が囮になってその魔法を耐える。焦れて降りてきた所を頼む!」

「ボルカ!?大丈夫なのか?」

「問題ない、と言いたいところだが全くわからん。だが、俺以外に適切なのもいないだろう?」

「わかったよ!死ぬんじゃねえぞ!」

「わかった。あいつを未亡人にするつもりは無いさ。さて、行くとするかな」

 そう言うとボルカはパーティーメンバーから一人前進し、グリフォンに近づいていく。タイミング良く、いや悪く黒いグリフォンの魔法が唱えたれた。

 ひとつの大きな火球が俺を襲う。盾を使いそれを防ごうとする。灼熱とは行かないが、かなり熱い熱気が盾の周りから届く。

「熱いよ!ちくしょう!」

 普段使ったことのない野蛮な言葉が漏れ出る。それだけこの魔法の威力があると言うことなのだろう。もう少し耐えれば消えるはずだと体感上覚えたタイミングを計る。

 顔が焼けるように熱い。練習で受けた魔法と比べるとかなりの熱量差がある。盾が熱くなっていないのが幸いなのか、それとも熱いが気づくことが出来ていないだけなのか。

 あと数秒耐えれば消えるはずだが、その数秒も耐えられるのだろうかと不安になる。

 街に残してきた妻の顔が浮かんで消える。彼女の為にも生きて帰らなければ!と言う気持ちが折れそうな心を何とか支え続ける。

 不意にあと少しでと言うところで熱気が突然無くなる。

 耐えきったか!?と思った瞬間、後ろで待機しているメンバーから悲鳴が上がる。

「あっちぃ!」

「破裂するって何だよ!」

「ちくしょう!あの黒いのファイアボルトじゃなく、その上位のファイアボールを撃ってきやがった!」

 ファイアボールは、対象に当たった後、破裂して周りにも被害を与える魔法だ。

 普通に熱量の火球では無いかもしれないとは思っていたが、この変異種はかなり厄介な魔獣らしい。

「すまない!気づけなかった!次は任せろ!」

「頼むぜ!」

 自信満々に任せろと言ったが、全く自信が無い。同じ魔法がきても破裂する方向などランダムだ。だが、士気を維持する為にはこう言うしかない。

 気合いを入れ直した所で両隣のグリフォンから火球の魔法が放たれる。二つの火球がボルカに襲いかかる。

「不味いな……」

 先程あれだけの火力があり、心理的にはギリギリだった魔法が二つ。死にたくない。それに、仲間も死なせたくない。彼女に会いたい。この気持ちだけで何とか火球に向かう体制を整える。

「はぁぁぁああああ!!」

 火球が当たる瞬間何とか気合いの発声を絞り出す。とにかく生き残る!この一つの気持ちだけで。

 だが、先程あれほどあった熱量が今はそこまで感じることがなかった。盾に当たった瞬間すぐに四散してしまったのかと思い、軽く後ろにいるメンバーを見るがどうやらそのような事はなかった。つまり、2匹の通常種から放たれる火球はそこまで威力が強いわけでは無いということになる。盾を振り魔法をかき消す。

「これなら耐えられる!行けるぞ!」

 そう仲間に叫んだ直後、視界が黒で覆われ、俺の胸元に黄色く鋭いものが迫っているのが見えた。



 ~~~~~


「またー?」

「もうひっくり返すだけは面倒です」

「ああぁぁぁぁ……」

 昨日倒した魚型魔獣がホーミング性能を発揮し、追いついてきてしまった様なので、面倒事が無いように食材に進化させることにした。昨日の作業が面倒だったであろうリーアとノンナから否定的な意見が出てくるが、諦めてもらおう。

「うぅぅぅ……」

「取り敢えず、うまく行けばそこそこ儲かる計算だから、頑張って」

「はーい」

 元気の無い返事だ。まあ、1刻近くも身をひっくり返しているだけなのだ。飽きない方がおかしいかもしれない。

「ぁぁぁぁ……」

「ナイア……一回切る毎に嘆くのやめてくれない?」

 先程からの小さな声はナイアだった。ティアほど豹変することは無いが、耳が垂れ、涙目になっている。いつものナイアしか知らない人がこの光景を見たら同一人物とは到底思えないだろう。現に目の前で見ている自分でもなかなか信じがたい光景だと思っている。

「だって……」

 涙目のままこちらに顔を向ける。駄々っ子の最後の抵抗というようなのがイメージとしては正しいのだろうか、いや、その前に駄々をこねてはいないので、諦めた後の心の隅にある諦めきれない気持ちが残っただけというか。

「それに危ないよ?」

 今は昨日の干した身は馬車の中で通気性のいいところで通気性の良い袋に入れ保管している。なので、昨日干していた机は空いている為、その上で捌いている。それをしゃがみながら頭半分出しつつこちらを伺っている。いくら切るのに邪魔にならない左側に居るとはいえ、流石に集中できない。

「そんなに辛い?」

「うん」

 小さな声で返事をしながらうなずく。

「どうして?」

「フミトさんからせっかく……」

 涙の粒が大きくなり、重力に引かれながら二筋作る。

「そっか。ごめんよ」

 ティアもこんな気持ちだったのか、それとも嫌悪感からなのかわからないが、申し訳ない気持ちがあふれてきた。出費は多くなるけど、刺身包丁を作る事にしよう。

「ごめんな。それと、ありがとう」

「うん……」

 頭をなでてあげようと手を伸ばすが、ふと手が人の頭を撫でることに適していないことに気づく。

 そのまま手を引っ込めるとナイアは少し哀しげな顔をしたが、何かに満足したのかいつもの表情に戻っていった。

「手伝うのが辛いならティアの朝食準備をてつだってくれないか?」

「はい、わかりました」

 ビデオカメラでもあったら是非撮っておきたかったと思うくらいに豹変する。まあ、悪い方向じゃ無いし彼女の隠れた一部分と言うことで納得しておこう。


 昨日と同じ退屈で単純な作業を終え出発することにする。

 まだ完全に重ねてしまうのはまだ早いので、馬車の中でテーブルの上板部分を吊るし、幌の端の紐を解き通気性を良くする。まあ、うまく行けば1匹の半分ほど残りそうだ。1枚いくらと言う計算になるので、結構な額になるだろう。

「フミトさん、そう言えばこの魔獣の名前を聞いていなかったのですが」

 出発してからしばらくみんなと話しながら進む。ほんとに他愛のない話ばかりで今が冒険の最中なのかと忘れてしまうくらいだった。そんな中突然リーアからそのような質問が来る。

「あ~、そう言えば言ってなかったね。この魔獣はね、カッカって言うんだよ」

「えっ?閣下ですか?」

 まあ、当然の反応だろう。俺だって初めてこの名前を聞いた時そっちを想像した。逆に閣下と想像しなかった人を教えてほしいくらいだ。

「いや、貨幣にならない物。貨幣より下と言う意味で、貨下でカッカって読むんだ」

「また身も蓋もない名前に……」

「最初はラングフィッシュって名前があったんだけど、どっかの商人達がかっこ良すぎるって事でフロッグフィッシュとか言い始めたんだ。だけど、例の大量買して大損した話が出始めてからお金の代わりにならない下らないものと言う皮肉と嫌味を含めてそう呼ぶようになったんだって。だから正式名称はラングフィッシュだけど、多分一般的には知ってる人はあまりいないと思うよ」

「ラングフィッシュと言う名前は聞き覚えがあります」

 隣を歩いていたレンティが、そう言ったあと確かそうだよな?と言うような頭を傾げる仕草をしている。だが、居ないと言っておきながらいきなり隣りにいたと言うのも正直恥ずかしくなる。耳が赤くなっていないか少し気になってたりする。だが、とりあえず動じなかったと自分に言い聞かせ話をすすめる。

「レンティは知っていたんだ。貴族の間ではそっちの名前はまだ残ってるらしいからね」

「それなら納得できます」

「でも、貴族間で人気が出た一つの要因は実はその別名からでもあるんだよ」

「えっ?なぜですか?」

 リーアが声こそ普通だがかなり驚いた顔をしている。本来ならその否定的な内容で売上は下がっていくだろう。だが、そんなことが売上上昇になったというのだ。驚くのは普通の反応だろう。

「今自分で間違えたでしょ。閣下って」

「はい……。あ!」

「そう、単純にその皮肉を本物にしたいとか、その間違えた名前側にあやかりたいとかそんな理由で人気出ちゃったんだって」

「いい加減ですねー……」

「まあ、高く売れるから良いじゃない。まあ、ここまで苦労して、更に熟成させるからそこの手間を考えると安くなると誰も作らなくなっちゃうしね」

「そうなんですけどね……」

 何が原因で人気に火がつくの火さっぱりわからない。元の世界でもある程度操作はしていただろう節はあったが、その仕掛けに仕掛け人やサクラ以外が乗らなければ人気が出ることはない。人気が出るとしても、悪い品だったら情報操作しても人間は考える生き物だ。騙される人と騙されない人に別れるだろう。つまり、その品については長期間人気が持続することもない。騙されなかった人からの情報が騙された人に流れ、返金請求や損害賠償請求などが起きるからだと思う。なので、ある一定期間以上人気になった商品は怒られない最低ラインを超えた商品ということになるだろう。このカッカに関しては傷んだ物以外は旨味がとてもあるので確かに良い物だ。最低ラインは楽々超えていることだろう。元々縁起の席で食されていた物だったし、更には出世欲だろうか。なんでもあやかりたいという気持ちはわからなくもない。元の世界で一番神様に祈った場所は腹が痛い時のトイレの中と言う俺ではあるが、神頼みや言霊みたいになぞらえた事と言うのもゲン担ぎということで利用していた。物質社会ではなく、精神的社会とでも言おうか、魔法のある世界、まだ物質文明の発達していない世界では当たり前の事なのかもしれない。


 そんな話をしつつ帰路を進む。

 だが、この二日ばかりは全く魔獣に遭遇しなかった。

「どうしたんでしょうね?」

「まともに闘ったのがグラスリザードだけって、ちょっとおかしいよね?」

 ティアの中ではカッカは無かったことになってるらしい。まあ、あれが戦闘と言われたら俺も悩むが……。

「私もこの様な例は聞いたことがありません」

「でも、楽でいーじゃない」

 楽天的なノンナはそんなことを言う。

「楽ですが、カッカがいくらで買ってもらえるかで、赤字になるかもしれないのですよ?」

「それは不味いね……」

 ちょっとはノンナも理解したようだ。

 馬車は借り物。約1週間と戻れないことを危惧しての予備日を含んだ食料代。土地を知っているが、万が一に備えてのシザーリオの飼い葉代。机やグラスリザードの肉を干すためのフック等、結構多く借りている。一番高いのは馬車と馬の一式。生き物でここまでしつけるのに時間が掛かるというのもあるが、単純に馬車の値段が僻地で高いって言うのもある。悩みは尽きない。

 まあ、今のまま順調なら赤字は無いだろうな。でも、儲かってるとは言えない。

 一発大きいの来てほしいとこだな。でも、数が来られちゃ面倒だよな。そんな願望を持っている所で危険を知らせる声が届く。

「魔獣です!」

「種類と数は?!」

「多分グリフォンです。今他のパーティーが闘っているようです」

「……横取りはできないよなぁ……」

 大きい物が来たけど、さすがにダメか。こっちにも飛んでこないかな?そう思っているところに思わぬ知らせが届く。

「フミト、多分だけど、あれボルカ達かも」

「私もその様に思います」

「なに?!」

 でも、あいつらならグリフォンの1匹くらいは何とかなるだろう。

「そういえば、数を聞いてなかったね」

「数は3。内1が黒い色です」

「嫌な予感がするな。ノンナ!威力偵察頼めるか?」

「はーい」

「レンティ、ノンナとシザーリオに魔法抵抗を高める魔法を」

「わかりました」

「かけ終わったらノンナのタイミングで出てくれ。偵察内容はパーティーメンバーと、怪我した人数と症状。居なければ良いが、居た場合は戦闘に割り込む」

「はーい。行ってきまーす!」

 ノンナが出発することを見届けてからグリフォンの説明に入る。

「グリフォンはまず普通では弓が効かない。上空から魔法を使い攻撃を仕掛けてくる。知性も高く、猪突猛進な魔獣が多い中、周りを見渡す知能もあるので連係攻撃を仕掛けてくる。だが、性格は短気。魔法を耐え、焦れて降りてきた所を倒すのが一般的だ」

「結構厄介な相手ですね」

「精霊使いがいれば少しは楽になるよ。でも、上空から魔法を使い続けることができるから、厄介なのは変わりないかな」

「だから、レンティは戦闘になるようだったら攻撃よりみんなの対魔法防御を上げてくれ」

「はい、わかりました」

「それと、地上に降りてきてからだが、クチバシと爪での攻撃が増える。魔法を使った直後翼による突進で連続攻撃を仕掛けてくることもある。リーアは特に注意だ。魔法に気を取られて爪やクチバシに気づかずに攻撃を受けることがある。多分、今まで戦った魔獣の中で一番筋力があるはずだ。1撃でも喰らえば命にかかわると思ってくれ」

「はい!」

「それと、馬は馬車から離しておいてくれ。戦闘に割り込むことになった馬のことは見ていられなくなる。酷いことを言うが馬にも自分の身は自分で守ってもらわなくてはならない」

「わかりました」


 一通り説明を終えた辺でノンナが慌てながら戻ってくる。

「フミトさーん!まずいっす!」

「どうした!?」

「一人重症!後は全員火傷位だと思うけど、一方的にやられてるみたい!」

「わかった!いくぞ!」

「それと、やっぱりフミトさんの知り合いみたいっす」

「わかった」

 二人が見間違うことはないだろうと思っていた。だが、見間違えてほしいと言う淡い希望を持ちノンナの戻りを待っていた。だが、淡い希望と自分でも思っているということは既に認めていたのだろうか。ノンナの報告を聞いてもあまり大きく動揺はしていなかった。だが、確定した瞬間今まで無かった焦りと言う感情が湧き出てくる。あいつらはバカだが憎めない奴らだ。結婚したとも言っていた。なんとか助けなくてはと思いつつ走り始めた。





ようやく少しは進んだ感じですね。もう少し色々と考えて起承転結等をもっとしっかりと作りたいのですが、プロットの作り方が悪いのと、自分の文章力の無さで、ダラダラ書いてる感じになってしまっています。もっと気を引き締めなければ。

話変わって、万年筆ですが、筆圧をかけないで文字が書けるので、腕が意外と疲れません。文字書いて疲れるという方は、万年筆も良いのではないでしょうか。300円の万年筆でも結構書けますので、コンバーターを使い、中の色だけを自分の好みの色にして。という使い方も良いと思います。


2016/6/8 ティアとボルカ達が知り合いなのを忘れていたので一行修正。大して意味は変わりません。

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