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30の魔法使い  作者: 圧縮
本編
57/83

恐怖

恐怖


「いやあああああああ!お願い!やめてええええ!」

 ティアの悲鳴が響き渡る。

「ホントにお願いだからー!!」

 今にも泣きそうな声で懇願している。だが、もう決まったことだ。あきらめてもらおう。

 ほかのメンバーも気の毒そうにティアのことを眺めている。ナイアは申し訳なさそうにしているが、先ほどの表情とは違い、絶望の色は見えない。

 俺はカタナを用意してその身に刃を入れる。

「いやあああああああ!!!!」

 ティアの絶望的な絶叫が木霊した。




 時間は少しさかのぼる。

「ねえ?私かナイアのどっちかが犠牲って何?」

 ティアがまず質問をしてくる。せっかく良い景色で良い気分で、良い場所で野営できそうなのに!と言ったところだろう。その気持ちは非常にわかる。だが、このままこの場に残ると大変なことになるのだ。

「まず、もうそろそろ、魔獣がこの場に集まってくるんだよ」

「そんなの蹴散らしちゃおうよ!」

「そうも行かないんだ」

「なんで?凄く強いの?」

「いや」

「それじゃ、数が多いとか?」

「それも違う」

「じゃあ何なのよ!」

 弱くて数が少ないのであれば、まったく問題ないと思うだろう。ティアの焦れったい気持ちからの怒りはよくわかる。

「弱いし数も少ないんだけど、1匹倒されるとゆっくりと次の1匹が現れるみたいな状態なんだよ」

「そんなの一気に攻め込めば良いじゃ無いの!」

「海の中にか?」

「それは無理ね……」

「後な、その魔獣は腐りやすいんだよ」

「なら海に捨てちゃえば良いじゃ無いの?」

「上手く乾かして熟成するとかなり高く売れるんだよ」

「高く売れる?」

 それまで黙っていたレンティが突然割り込んでくる。ある意味予想通りの行動だ。

「それならたくさんと倒しましょう!」

「それがな、1匹処理するのにたっぷりと1刻以上掛かるんだよ。再度出てくるのは四半刻。しかも、早く捌かないとすぐ腐る」

「みんなで捌けば……」

「みんなには切った身を定期的に裏返してもらわないと駄目なんだ」

「うーん……」

「しかも、切れ味の良い刃で薄く切らないと半分以上最初の時点で捨てることになる」

「……駄目そうですね……」

 駄目押しの言葉が利いたのか、レンティは諦めたようだ。

「わかってもらえたかな?」

 全員がしぶしぶ頷く。とりあえず一安心だ。さっさと移動の準備をと思った瞬間俺の視界に群青と灰色を混ぜたような色が見えた。

「げ!出やがった!」

「なら倒すまで!」

 ティアがそのまま振り向いて走り出そうとしたが、そのまま凍り付いたように動かなくなってしまった。

「ティア?倒しに行くんじゃないのか?」

「無理無理無理無理!!」

「あれは……私もさすがに……」

 大概の物が平気そうなナイアからも苦手と言うような言葉が漏れ出る。

 その現れた魔獣は、身体が肺魚とでも言おうか、シーラカンスとでも言おうか、ヒレの発達した足があり、ノソノソとこちらに向かってゆっくりと進んでいる。頭は良く言えばナポレオンフィッシュ。だが、少し人面魚を混ぜ、目は深海魚の様に大きくギョロっと飛び出ている。口からはヨダレが垂れ続け、アーウーと声が漏れ出ている。初めて見た時は某ゾンビゲームを思い出したものだ。しかも、逃げてもロックオンミサイルのようにホーミング性能は抜群だ。とんでもなく遅いのだが……。見つかってから半日の距離辺りで野営していたら明け方に追いつかれた経験がある。ケイトウの冒険者に、野営時に歩哨が寝てしまい、この魔獣に襲われた経験がある人がいた。だが、腕がなんかヌメヌメし、生臭くて目が覚めたらこの魔獣が腕に噛みついていたそうだ。だが、殆ど痛みは無かったと言っていた。しかし、攻撃の意思がないかと思えば、そうでは無く、人間の血の臭いが好きらしく、傷口があればその口と舌で広げるそうだ。同じパーティーで同時期に襲われたメンバーがその様なことをされたと聞く。だが、見つからずに見つかっても速やかに退治し、すぐ撤退すれば何ら問題ない魔獣だ。

 その事を二人に伝えるか少し迷ったが、余り怯えさせるのも悪いと思うので黙っておくことにする。

「まあ、弱いからさっさと倒そう。倒してすぐさっき渡ってきた川までこの魔獣を持って戻るから」

「ここで捌かないのですか?」

「経験上真水で洗い流した方が腐りにくいんだ。まあ、確定事項じゃ無いけどね。川にたどり着く前にナイアとティア、ジャンケンしておいて。負けた方にするから」

「負けた方って何?」

「さっき言っただろ?切れ味が良くなきゃ駄目だって」

「ま……まさか……!?」

「そう。二人のカタナを捌くのに使わせてもらうよ」

「ふざけないでよ!!」

「それは勘弁してもらえないでしょうか……」

 ティアとナイアから怒りの声と回避してもらいたい懇願が届く。

「俺のカタナじゃ取り回しが出来なくてね。だから、二人のどちらかが必須になるんだ」

「いつものナイフじゃダメなの??」

「綺麗に切らないとそこが腐敗しやすくなるんだ。リーアの剣も切れ味としては問題ないけど、切り裂くことには向いていない。切り裂く事に特化したカタナが必須なんだよ」

 この説明に二人はこの世の終わりに面したような絶望的な顔になる。そこまでイヤなもんかなぁ……?

「ねえ……ホントに倒さなきゃダメなの?」

「是非倒しましょう!」

 俺に変わってレンティが即答する。まあ、この食材のことどうやらレンティは心当たりあるようだ。

 元の世界の中国では乾貨と呼ばれる食材があった。海の幸は乾燥させ内陸部に持ち運んだのだが、それが貨幣の代わりとして使われたこともあったそうだ。そこまで行かないが、舌の肥えた貴族等にはこの魔獣の濃縮した味は堪らない物だそうで、そうそう手に入らないので、お祝いの席等で重宝されている物なのだ。その手に入らない理由が単純に持ち帰る前に腐ると言うことにある。慎重に切り分け、手間をかけて乾燥させ、熟成させる。最初から大問題となるので粗雑な冒険者達には向かない。何とか手持ちの切れるナイフ等で持ち帰っても途中で痛む事が多く、それだけの労力に見合った金額かというとそこまででも無い。熟成は売った先で行うのが普通なので、そこは気にしなくても良いが、熟成中にも痛むことがある。そのリスクがあるので、高価になりすぎていないのだ。高値で買ったが全部腐らせた話も聞く。これが東区の人気が無い理由の一つだ。景色は綺麗なのだがね。


 こんなに長く話していられる理由は、単純にまだまだその魔獣が来ないのだ。

 だから、説得出来たと思われた状態でもティアから懇願する意見が出てくる。

 倒しに行かない理由は馬車近くまでは生きててもらい、腐敗をできるだけ防ぐためだ。

 幾度かティアやナイアからやめてほしいという意見が来る。いい加減ホーミングしてくる事を言おうかと思ったところで魔獣が近くまでたどり着いた。

「もう来たから倒しちゃうよ」

 そう言うと俺は剣の塚で頭頂部を殴りつける。実はこれだけで死んでしまうとても弱い魔獣なのだ。体を刺すことは身を傷めるので絶対にしない。

「さて、急ぐよ!さっき渡って来た川に戻るよ!」

 レンティが馬車に乗せるのを手伝ってくれ、すぐに出発することが出来た。

 だが、二人には川に近づくと言うことは処刑されるような気分なのかもしれない。こちらの世界でもジャンケンの様な物があり、二人が最後尾でものすごく白熱した戦いをしている。

 何を言っているのかハッキリと聞こえないくらいの距離まで開いてしまっているが、その位の距離でも二人の声が区別が付くくらいに聞こえる。

 ティアの大きな声は度々聞くことはあっても、ナイアがここまで感情をあらわにしているのは育成期間も含めて初めてだ。何か琴線に触れる魔獣なのだろうか、過去のトラウマを思い起こすのだろうか、エルフ属特有の美的感覚外の物なのだろうか。魔獣を倒す前には理由を聞いてみようと思っていたが、あの状況を見るとやめておいた方が良さそうだと思った。


「レンティは下ろすの手伝って、リーアとノンナは乗せてきた木のテーブル全部出して拭いておいて。そのテーブルに身を置いて乾燥させるから」

 大きめのまな板ごと川に入れ、その魔獣を洗い始める。ナイフの背で鱗も剥がし、切るための準備をする。ヌメリが酷く、かなり洗うのに苦労するが、この一手間が経験上熟成成功率が上がるのを知っている。料理でも一手間を惜しんで味がイマイチになる事も多い。

 一通り洗い、鱗も剥がし終え、切る準備が出来た。

「どっちに……」

 決まったんだ?と問いかけようと思ったが、ティアが頭が少し傾き、やや口が半開きで完全に感情が抜けた様な顔、更には全身が脱力した状態で近くに立っていた。

「うぉっ!?」

 完全に不意打ちを喰らった形になり思わず声を上げてしまう。心臓が大きく跳ね上がり、思わず身構えてしまった。

「……そ……その表情から察するに、ティアに決まったんだね?」

 何とか体裁を整えたつもりだが、思わず噛みそうになった上に優しく声をかけてしまう。驚き、狼狽したことがバレバレである。だが、聞こえたのかな?と一瞬疑いそうになるタイミングで、中空を眺めていたティアの目だけが俺に向かい動く。この体制でこの仕草、日本のお化けと言うか妖怪と言うか幽霊というか、ともかく凄く怖く感じる。

「あ……あの……カタナをお貸し頂けないでしょうか……」

 恐怖からか自然と敬語になってしまった。威嚇されたわけでもなく、脅されているわけでもない。殺気が放たれているわけでも無く、単純に脱力した棒立ちという状況でしかない。だが、何かとても恐ろしい物に遭遇した時の心境で俺は敬語になってしまったのだと思う。ドラゴンと対峙した時は恐怖を克服する為に時間を夜だけとはいえ費やすことが出来た。だが、今回は完全不意打ちな上、安全を確保してあるはずの場所である。理解できないものへの対応としては致し方ないのかもしれない。ただ、元の世界で綺麗な人が幽霊やお化け役に抜擢されるのはそのギャップが非情に大きいからなのだろうとこんな時だが納得してしまった。

「あの……カタナ……」

 反応が全く無かったのでもう一度尋ねることにした。やはり理解できない状況と言うのがうまく言葉を発する事が出来なかった。だが、ようやく俺の意思が届いたのかゆっくりとした動作でティアはカタナに手をかける。

 ふとティアの手の位置に違和感を感じ、何処に違和感を感じたのか慌てて目から入る情報を処理する。恐怖に押しつぶされそうな中だが、その違和感はすぐに発見することが出来た。その違和感は、ティアの左手親指がカタナの鯉口を切り、右手は普通にカタナを抜き、自分で使用する方で握っていた。

「……あの……ティアさん……?」

 何をするのか解らないし、ティアの今の精神状況が正しい判断ができているとは正直思えなかった。だが、そうは理解していても何故か体が動かない。いわゆる戦隊物で変身している間攻撃を受けない等のオヤクソクなのかと一瞬思ったが、そんなことあるわけがない。単純に俺がティアに飲まれているだけなのだろう。何とか動こうと意識を体に向けた所にティアから大きな声で発声がかかる。

「はぁぁぁああああああ!!!!」

 一気にカタナを抜き、上段に振り上げ、両手で構え、そして振り下ろす。狙いは俺か?!と思ったがカタナの振り下ろされる軌道が俺から若干ずれているのがすぐに理解できた。振り下ろされた直後、レンティから軽い悲鳴が上がったが、すぐには見ることが出来なかった。

 恐るおそるレンティの方を見ると、レンティは真っ青な顔しながらカタナの振り下ろされた方向を見ていた。

 俺もそのレンティの視線の先へとゆっくりと目を向けると、これから捌こうとしていた魔獣の頭が切り落とされ、しかもそのままカタナが川底とまな板に刺さって彫刻のオブジェクトの様に立っていた。

 ティアはそのカタナを振り下ろすとすぐ振り返りゆっくりと馬車の方に歩いて行ってしまった。

「借りていいって事で良いのかな……?」

 そう思わずつぶやくとレンティは震えながら小さくうなずいてくれた。レンティも不幸な事だ。俺が手伝いを求め、魔獣の尻尾を抑えてもらっていなかったらここまでの恐怖は感じなくて済んだだろう。

 恐怖心から大きな声が出せそうにないので、机を広げ終わったリーアとノンナを手招きで呼ぶ。

「悪いんだけど、ティアのこと見てやってくれない?あと、できたら押さえておいてくれると助かる」

「えー?怖いから嫌っス!」

 いきなりノンナから拒否の言葉が。でも、これをやってもらわないと正直捌けるか自信がない。

「頼む。やってくれ」

「わかったっスよ。何か美味しい物おごってくださいよー?」

「ありがとう、リーアも頼むな」

 リーアは苦笑いしながら引き受けてくれた。ごめんよ。リーアにも何か美味しいのおごるからね。そう言うと二人はティアの後ろに立ちティアが何かしようとした時に押さえるために構える。

 その様子を確認してからティアのカタナ取る。ティアの表情を確認すると先程の恐ろしいほどに感情の抜けた表情では無く、懇願している顔に見えた。どうやら正気に戻ってくれたようだ。どっちにしてもあまり前向きな状況では無いのだが……。

 まるで江戸時代の介錯人かと思うくらい見事に薄皮一枚残して首を切り落とされた魔獣を見る。

 切断面も綺麗。これなら良い部位を多く残すことが出来そうだ。

 ここからが神経を使って丁寧に、そして素早く切り分けていかなければならない。いざ!と気合いを入れ、刃を立てようとした瞬間叫び声が響く。

「いやあああああああ!!!!お願い!やめてええええ!」

 思わずその声の主であるティアを見るが、暴れる様子も無く、後ろの二人も軽く押さえているだけのようだ。覚悟を決めているのだろうが、納得できていないと言った所だろう。。

「そんな気持ちの悪い魚みたいなの、私のカタナでさばかないでぇぇぇ!」

 もう、切り始めなければ傷みやすくなるかもしれない。意を決して刃を立てる。

「いやあああああああ!!!!」

 叫び声が聞こえるが、二人に任せ切り進める。頭を落とした大きさはシイラくらいの長さだろうか?太さはキハダマグロ並みなので、やはりシーラカンスと言った方が良いのだろうか。腹を割き、内臓を取り出す。合わせてヒレを切り落とし、血で汚れた中と血合いを洗い流す。しっかりと洗い流した後、3枚におろしていく。分けた身は皮を剥ぐ。この魔獣の皮は、生前の世界のサバやアジみたいに手で剥ぐことが出来る。思ったよりすんなりと剥けるのでこれに関しては失敗したことが無い。身の腹と背の間に小骨のある場所で切り分け、身を4つに分ける。ここからがよく切れる刃物が良い場所になる。約1センチ厚で丁寧に切り分けていく。それを机の上に並べ干すのだ。

 全て切り終え、並べ終わったのは切り始めから半刻ほど経っていた。切るだけなら自己記録更新したところだ。倒してからの時間では1刻半を超えたところだろうか?もうその頃にはティアは観念して身を並べるのを手伝っていた。

「ティア、ありがとう。後はやるから夕食お願いできるかな?」

「うん、わかった」

 少し疲れたような声でティアは答える。それ程にまで嫌だったのかと。出費が多くなるが刺身包丁みたいな物をアピの爺様達にお願いするしか無いかもしれないな……。

 およそ500切れ程に切り分けられた身を並べた机の上からレンティがブロアーを下向きにかけ、四半刻の半分ほどの時間で全てを裏返す。枚数が枚数なので、殆ど裏返し続ける様になってしまうのだが……。

「少しでも青、紫の色が見えたらすぐに捨ててくれ。もうそれは食べることが出来ない」

「わかりました。でも、乾燥させるのでしたら、火を使った方が良いのでは無いですか?」

 至極まともな質問がナイアから来る。

「試してみたんだけど、旨味がかなり無くなるんだ。凍らせて水分を抜いても同じ味にはならなかったんだ。しかも、何故かそこまで美味しくない。おかげで手間をしっかりとかける必要があるから高値になるんだけどね」

 生前の世界なら真空で乾燥させるというシステムが作られているという記憶がある。フリーズドライより良い物らしいという程度の知識しかないが、それならうまくいくかもしれない。まあ、持ってくることや、こっちで使用することは不可能なので意味が無いのだが。

「手間を掛けることが旨味になるということなのですね」

「まあ、前向きに考えればそうだね。もっと楽したいけど、楽になったら安くなるだろうし悩みどころだね」

 この後半刻ほどずっと裏返しつつ乾燥させる。この時点で3分の1が傷んでしまい、捨てることになった。

「あれだけ苦労してこれだけなのですか……」

「普通は半分以上この時点で捨てるから、かなりいいほうだと思うよ。ティアのおかげだな」

 少し離れた位置で食事の準備をしていたティアにも聞こえたようで、そちらを見ると少しはにかんでいた。

 全体的に表面が乾き、後は熟成段階へと進む。このまま街へ戻るまで何も問題なければそこそこの金額で取引出来るかもしれない。

 そのまま食事をし、寝る前に一度全部ひっくり返してから床につく。

 食事には数切れ皆で食べる分を残していた。完全に火を通し、味噌をつけて食べる。新鮮なものを焼きたてでという場合はこの魔獣はとても美味しいのだ。だが、熟成した物はもっと旨味が濃縮してくる。1度食べた時は確かに貴族が買い求めるのも解る気がした。ナイアやティアも目をつぶりながら口に入れたが、二人とも2切れ目を食べるくらい美味しかったそうだ。まあ、これで苦手意識が無くなってくれれば一番いいのだが……。

 歩哨時は暗いので確認することが出来ない。まあ、朝確認すればいいだろうと思い寝ることにする。

 翌朝起こされる前に起き始め、太陽が登る前に火の灯りで全てを裏返しながら確認する。やはり少し傷んでいて、最終的には300切れ辺りが残った。ただ、街に戻るまでも少しずつ痛む物が予想される。200切れ程度残れば良い方ではないかと思う。

 順調な滑り出しだとほくほく顔で食事の準備でもと向かおうと思った所に悲鳴が聞こえる。

「キャー!」

 俺は慌てて悲鳴のあった先に駆けつけるとナイアがその場に座り込んでいた。

「どうした!?」

 すごい怖い顔ではなく、すごく渋い顔しながら指をさして方向を俺に知らせる。

 軽くその方向を見てみるが、何もない。だが、ナイアがなにもない所で悲鳴を上げたりすることはないだろう。もう少ししっかりと確認するとモゾモゾと動いているものが見えた。

「次はナイアの番だね!」

 ティアがナイアの肩を叩きながら満面の笑みでそう伝える。

 そう、もう一匹着いて来ていたのだ。





全然話進んでいません。でも、ついつい書くのが楽しくなってこんなになってしまいました。悪ふざけというつもりではないのですが、パーティーの中での出来事がここの所少ないような気がして。まあ、ケイトウ編のプロットを大まかに書いた時には既に組み込まれていたのですが…。今回で呆れること無く来週も読んで頂けたら幸いです。

あと、手書きでこの小説を書いているわけではないのですが、万年筆に手を出してみました。いろんな色のインクがあり、思わず惚れてしまったインクが紫陽花の色。安い万年筆にですが、コンバーターを使い使ってみたら意外と使いやすく、色も綺麗でした。ちょっと粋な感じで楽しいです。

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